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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と違法種族転化~

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第18話

「アルヴェルト、屋内での戦闘経験は。」

「むしろ、屋内でしか戦った事がないです。俺にとっての戦場は……常にこういう場所ですし。」

「暗務局内での階級は?」

「蒼札です。」


 え。


「……………………。」

「な、何ですか。」

「……お前、何で暗務局なんだ?」

「……俺、咎められてます? それとも褒められてます?」


 暗務局は、暗殺に特化した機関だ。それに関連する追跡や解析、この任務内で何度かノアが披露してくれている暗殺者にしては多過ぎる知識もその特徴の1つだ。

 そんな暗務局では実力に応じて札という物が割り当てられる。暗務局内での階級を示す物であり、許可されている行動範囲を示す物であり、人的稀少価値を示す物でもある。

 生憎と暗務局に所属した経験のないイリスではあるが、特務局内には元暗務局の特務官や暗務局の副主任を務めるセヴェリウスが訪れる事もある。その為、イリスが求める求めないに関わらず情報は向こうから歩いてくる。


 蒼札といえば……確か、上から数えて4つ目じゃなかったか。


 暗務局の階級は上から黒札、()札、(あか)札、蒼札、黄札、(りょく)札、灰札、札なしの計8種。基本的にはピラミッド型の人数割合となっており、黒札に関しては暗務局主任と副主任のセヴェリウスだけだ。

 そこから導き出される答えとして、恐らく紫札は特務局と同じように10人以下。紅札に関しては大体20人以下。そして……蒼札は50人以下だろう。


「……昇格試験の方は?」

「実は、断ってます。」

「は、え? こ、断る? あの試験を?」

「はい!」

「い、いやいや、そこは断る所じゃないし元気良く明るく返事する所でもない。何を考えてる。」

「だって……受けてたらこの任務、参加出来てないんで! 1任務だけでもあのイリスさんと共に仕事出来るんですよ!? あんな昇給と多少の権限が与えられるだけの試験なんて5年後にまたあるんですから後回しですよ!」


 ……。


「…………お前が筋金入りの馬鹿である事は分かった。」

「酷いっ……!」


 今回の件ではっきりした。ノアの実力は、決して蒼札止まりではない。むしろ、その試験でも多少加減をして敢えて低くあろうとしているか、または試験で自分の実力が評価される物ではないと過剰な過小評価を行っている結果だ。そうでなければ、まだ蒼札であるはずがない。

 ……しかし。


「……アルヴェルト。戦闘装備は。」

「今回は色々持ってきましたよ。主教様から珍しく助言があって、“目に頼るな”と。」


 あの野郎。


「なら」

【――警告。当地点に接近する複数体の生命体を感知。速度60-80㎞/hで接近中。識別コード、検知出来ず。形状、四足歩行。】

「……便利ですね、その球体。」

「自慢の1品。……じゃあ、戦闘(そっち)実力()も見せろ。」

「――全ては貴方の為に(プロ・テ・ウィータ)。」


 やはり、其方の顔もあるらしいノアが懐から抜き出したのは区切り包丁のようなでかさを誇るスラッシャー。暗務局でよく支給されている外側よりも内側に刃を持つタイプではなく、外側に鋸のようなギザギザの刃を持つ殺意に溢れた武器。

 つい先程まで話していたノアからはあまりにも不釣り合いで、常に不気味さと違和感が並んで歩く教会派の暗務局員らしい。不意に、あったはずのノアの気配も完全に環境へ溶け消えて、当たり前のように生じていたその足音すらも一切聴き取れなくなる。

 こちらへかなりの速度で接近しているはずの敵対生命体やらは未だ肉眼で確認出来ない中、――ノアが動いた。

 さっきまでの無害な表情は何処へやら、特務局主任のアルドリックのように凶悪で。猟奇的な笑顔を称え、スキップでもするような軽やかさで前に数歩移動し、胸を開くように拡げていた腕が……いつの間にか、交差している。

 その頃には先程までは存在しなかった、人間大の大きく獣のようなリザードらしき頭が2つ、回転しながらこれまで歩いてきた道の方へと後戻りし。それと繋がっていたであろう体は、速度を落としきれずに両脇にレールでもあるかのように、滑るように飛んでこれから進む道へと数m先行して止まる。

 そこまで来て、ようやっと切り落とされた頭と体。その両方の断面図からスプリンクラーのように激しい血飛沫が上がるも、既にイリスとノアに降りかかるような位置を離れている。


 なんだ、なかなか狂暴じゃないか。


断罪執行(フォルシュトレクト)……完了(エアレーディクト)。こんな感じですけど……ご希望に添えましたかね?」

「惚れ惚れする。」

「え。…………ま、参ったなぁ。俺……あ、あんまり手放しで褒められるの慣れてなくて。」

「それにしては隠密性に長けた敵の処刑が手馴れてた気がするが?」

「これが俺の仕事なので……。同じ暗務局でも、教会派は断頭以外の処刑を禁じられてますから。」

「その戒律を守り続けられるのが異常だって言ってる。……ちゃんと優秀。」

「ちょ、調子狂いますってばぁ……。」

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