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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と刻まれた軌跡~

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第15話

 謎のカプセルを旧エスメラルダ邸で探し始めてそろそろ2時間は経過しただろうか。未だ、そのカプセルとやらは見つかっていない。それでも必死になって探し回る中、未だ何の成果も挙げられていない。

 時間が経過すれば経過する程にイリスの動揺はかなり大きくなり、少しずつパニックを起こしつつある。次第に物の扱いも雑になっており、酷く動揺し。今にも泣き崩れてしまいそうな所がある。


 早く、早く見つけて安心させてあげないと……!


「あ、あった! あったよ、あったあった! 皆、これじゃない!?」


 どうやら古典的にも、床下収納の中に隠されていたらしい。イリスに発言通り、白銀の蔦のような物が絡みついた、中に金色の流動する液体の入った平均的な500mlの水筒大のカプセルがエリクスの手に収まっている。

 それを視界に捉えたイリスが少し身構え、――行動を起こす前にイリスの前へ、いつの間にか移動していたエリクスがいつも通りの屈託ない無垢な笑顔でそれを差し出す。


「はい、イリス!」

「……う、ん。……ありがと。」

「もう……イリス~? 言ってるでしょ、私達はイリスの為に動いて、イリスの為にやってるのよ? ここで奪い去って逃げる訳ないでしょ?」

「……え?」

「ノア坊、イリス嬢が目標を見据えたまま身構えるんは一気に間合い詰めてくる合図や、憶えとき。」

「そうなんですか……?」

「……イルメリナの言ってた通り、盗られると思ったんだよ。イリスは。……ったく。昔を思い出すぜ。」

「昔……ですか?」

「まだこいつが特務局(うち)に来た当初の……な。おい、イリス。」

「……。」

「……はぁ。別に取り上げねぇよ。ほら、両手上げたぞ。何もしねぇ、何もしねぇから幾つか質問させろ。」


 それぐらい、それが常態になるぐらいこれまでイリスは味方が居なかったんだろう。油断すれば喰われて、盗られて、害される。そんな環境で生きてきたから頃、信頼すると言う言葉を正しく理解していないのだろう。

 今も、エリクスから例のカプセルを受け取るや否や数歩後退し、懐に抱えて座り込んで身を小さくしている。ヴィクトルがその場から一切動かずに両手を上げても、エリクスが玄関にまでまた、瞬時に移動したとしても。


 イリス先輩……。


「……な、な、に……?」

「イリス。俺らはそれがお前にとって悪影響じゃねぇか気にしてるだけだ。」

「あくえいきょう……?」

「……それがどういうもんか知らねぇが、お前にしか聴こえない声が聴こえるような代物ならその声は本当にお前を害さないのかとか。それを使って何かを作るなら、その結果に出来る物やそれを作る過程でお前が怪我をしたり、お前に何かしらの良くない結果を齎さないかとか。……それを服用、投与するもんならお前の健康や精神に異常をきたす物じゃないのかとか、な。」

「…………ちが、う。……これは、そんなのじゃ……な、ない。」

「……イリス。私達は怒ってないし、イリスからそれを取り上げようとも……。……イリスにそれを捨ててとも言わない。ただ、イリスが心配なの。」

「イリス、最低限で良い。最低限で良いから……それが何なのか、説明が欲しいだけなんだ。ヴィクトルが言ったように、君を少しでも護りたいから。……駄目、かな?」


 保有している能力の問題から、それを悪用してしまうんじゃないかと言う疑いを消す為に瞳を固く閉じたままその場に腰を下ろし、優しく微笑みかけるイルメリナ。その隣に正座で座り、大きく首を傾け、困ったようで酷く慈愛に溢れた優しい微笑みを掛けるヴィルヘルム。

 それでも、イリスの警戒心を解ききる事は出来ない。未だ恐怖が、不安が、警戒が滲みつつ……ふと、小さく口が開かれる。


「…………竜王(ドラゴノイド)の、鮮血。……………………エスメラルダが、ラグナレイズ帝国に捕まえる前に……他の大賢人達と、隷属される前に隠した物。」

「ど、ドラゴノイド……!?」

「……ま、待って。めちゃくちゃ斜め上の回答が返ってきたんだが。」

「おいお前ら、そのまま後ろに倒れんな。イリスが警戒してんだろうが……。」

「あ、あの、ドラゴノイド……というのは?」

「……竜に関連する、要は竜人とかそういうのの《起源(ウーアシュプルング)》。まぁ、もっと平たく言えば始祖だよ、始祖。」

「……普通に《始祖(グルンダー)》って呼ぶ方が一般的やけどな。」

「え、始祖!? い、いやいやいや、既に死んでますよね!?」

「……だから俺らもびっくりしてんだよ。」

「……んで? それを、お前はどうすんだ?」

「…………とう、よする。エスメラルダが……創造主が、その為に用意した、から。」

「創造主……?」

「……私、は……。……私は、大賢人エスメラルダと大賢人グリモワール改め、竜王(ドラゴノイド)のエスメラルダと、魔王(ゲーテ)のグリモワールが……2人の間に生まれるはずだった、流産した子の……ほむん、くるす……だから。……………………ラグナレイズ帝国に創造主達が捕縛される前に、創造主達がやりたかった事を……代わりに、完遂しないと。」

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