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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と刻まれた軌跡~

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第13話

「……かなり歩きますね。」

「イリス、もうちょっと?」

「……もうちょっと。」

「……イリス。夜が明ける前までには辿り着くんだろうな。」

「……うん。もう、見えた。」


 蒼月華の海が眩し過ぎて、というのもあるとは思うが……確かに、イリスの視線が見据える先に建物のような物が見える。何かしらの施設と言う訳ではなく、どちらかと言えば既に放棄された家屋……と言うのが相応しいだろうか。

 この暗い星すらも霞んでしまう程に薄っすらと存在感の薄いその建物は1棟ではないようで、大体……30棟だろうか。特段特殊でも何でもない、普通の家屋が村ぐらいの規模でそこに存在している。……蒼月華の蔦のような物に絡みつかれ、完全に廃墟と化した建物が。


 ここに……誰か住んでた?


「かなり古い建物……です、かね? 既に放棄されてるみたいですけど……いつぐらいからあるんでしょう?」

「建物の劣化具合から見るに……少なくとも、数百年単位以上だとは思うけど。」

「でも確か、その時期って少なくともまだこの大陸その物が発見されてないよね?」

「されてないね。この大陸が発見されたのは今から大体50-60年程前だよ。」

「この蒼月華、あんな蔦なんてあったか……? 少なくとも海岸沿いはなかった気がするけど。」

「……おん、なかったな。あれは……ほんまに蒼月華か?」

「あ、イリス! 待って、倒壊するかもしれないよ!!?」


 何かを見つけたのか、それとも何かを思い出したのか。珍しく全くノア達の声を聞き入れないイリスは殆ど全速力で走っていき、それで蒼月華が散るのもあまり気にしていない様子に見える。

 それをエリクスが同じように走って追い駆けていき、ノア達も一度は目を合わせた後に同じように駆け寄っていく。近寄れば近付く程、その家屋達はかなりの年季のようで……その反面、かなり強い魔力が漂っている。


 これは……高魔力帯? 一種の結界みたいな広がり方で……え?


「建物……崩れてないですよ。外装がボロボロになってるだけです。」

「え、どれだけ頑丈な造りなの……!?」

「……建物も、似てるようで見た事ない建築様式やな。いつの時代の、誰が建てたもんや?」

「ちょ、イリス!」


 ずんずんと家屋帯の中へ突っ込んでいくイリス。その後をエリクスが追い、ようやっと1つの家屋の前で止まる。その家屋の扉に限らず、全ての家屋の玄関扉らしき所に何かが刻み込まれているが……読める文字ではない。

 何より、例のラグナレイズ帝国地下で見たような曲線ばかりだが、明らかに木造で出来たこの家屋達は一体誰が。どうやって作り出したのだろうか。


「……。」

「イリス、走っちゃ僕達が困っちゃうでしょ! も~……。……何か見つけたの?」

「……エスメラルダ。」

「え……?」

「……エスメラルダの、家。こ、この文字、名前、エスメラルダって書いてる。ねぇ、ねぇエスメラルダ! 居る? エスメラルダ!」

「お、おい……。」

「……イリス先輩。大賢人エスメラルダは……もう。」

「……イリス。扉、鍵掛かってねぇみたいだぞ。」

「エスメラルダ……!!」

「ちょ、ヴィクトル……!」

「……ヴィクトル。どういうつもりだ?」

「ここまで来たんだ、最後まで見とくべきだろ。……………………それに、多分イリスの呼んでるエスメラルダは……お前らの思ってるエスメラルダじゃねぇよ。ほら、行くぞ。」

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