第9話
「あ、白いひらひら!」
「ふふん、自信作よ!」
「白衣か……。普段、まるで着やんのもあって、まるで落ち着かん。」
「文句言わない! イリスの為なんだから!」
「……イルメリナ、黒いのも一応作ってくれないかい?」
「えー? まぁ黑もかっこいいけど……他でもないイリスが白が良いって。」
「ぐっ……。そ、それは……。」
イルメリナの裁縫技術はかなり高いようで、たった1時間と少しで全員分の白衣を縫い終えたらしい。その頃には眠っていたヴィルヘルムやヨハンも起きており、日頃から黒い服を着ているメンバーは何かとあまり着心地が良くないようではあるが……イリスの為、はっきりとは物を言わない。
一方、これを求めたイリスだが……満足そうに尾が揺れる反面、表情は少し首を傾げているように見える。何か、求めていた物とずれていたのだろうか。
「イリス先輩、やってほしい事があったら言って良いんですよ。」
「そーそー! 僕達、言ってくれないと分かんないよ?」
「……じゃ、じゃあ……ヴィルとヴィク、黒いひらひら着て。」
「え、良いのかい?」
「まぁ……服なんて活動の邪魔にさえならなきゃ何でも良いけどよ。イルメリナ、頼む。」
「はーい、ちょっと待っててね~。」
「イリス嬢、それで……何か思い出せたんか?」
「ん? んー……うん、ちょっと。お母さん達がね、それでお仕事してたの!」
「白衣や黒衣で仕事……。」
「母親……って事は、大賢人エスメラルダ達か。あの人達も白衣なんて着てたんだな。」
「いや、むしろ着てない方が不思議だけどな?」
イルメリナが黒衣を2着縫う、しばらくの合い間。ノア達と話をするのかと思いきや、イリスはリュウセイ種の腹部辺りで前身を完全に密着させるような形で沈黙している。顔だけは横を向いており、あの体勢だと……耳を添えているのだろうか。
……もしかして。
「イリス先輩。」
「んー?」
「もしかして……心音聞いてます?」
「うん。……落ち着く。」
これだけ大きな獣の心音だ、イリスに限らずノア達からしてもかなりでかい音にはなるだろうが、それでも……イリスにとってはかなり安らげるらしい。
音を聞く中で段々と力が抜け、よりその毛並みに身を埋め。時間経過と共にうとうとし始めているのが確認出来る。
「……イリス先輩ってもしかして、大きな動物に囲まれて育ったんですかね?」
「んな訳ねぇだろ。」
「まぁ……言わんとしとる気持ちは分かるけど、あの国に大きな生き物ってのはあまり……想像出来んな。」
「それも……そう、ですね。」
「まぁしかし……少しずつ、色々と思い出してるみたいだね。」
「……です、ね。」
「ノア。不安になる気持ちはよくわかる。……けど、イリスの前では。」
「はい、分かってます。……俺達が不安になっちゃ、イリス先輩がのびのび出来ませんから。」




