↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺様ですが、恋はします。  作者: 柊 繭子
26/31

天使と天邪鬼(4)

 原口は最低な野郎だ。

 自分勝手で自意識過剰。そして女にだらしがない。


 そんな奴だが…彼女にとっては付き合っている相手であり、きっと大切な存在だろう。

 自分の彼氏の不貞を、浮気相手から知らされた形なのだ。大丈夫なワケがない。


 彼女は今…何処で何をしているのだろうか。


 田辺も俺と同じ事を思っているのだろう。腕を組んで俯いて、難しい顔で黙り込んでいる。


 こうして考えている間にも、彼女は何処かで泣いているのかもしれない。

 探しに行った方が良いのではないだろうか…。


 そう思って立ち上がりかけた時、杉山がのんびりと声を発した。


 『大丈夫だと思うよ。』


 『はあ?んなワケないだろう!』


 杉山のお気楽な言葉に、今まで何があっても動じなかった田辺が声を荒げた。その様子に、杉山だけでなく、平木までもがビクッと肩を竦めた。


 『あ、悪い。つい…。』


 『あ、あのね、大丈夫って言ったのは、あゆちゃんはぐっちゃんの浮気を知ってて、別れようか迷ってたからなんだ。』


 田辺が直ぐに謝ったことで、杉山は安心して次の言葉を発する事が出来たのだが、その内容は以外なモノで、不覚にも俺は、少し喜んでしまったのだった。


 『どう云うことだ?詳しく話してくれ。』


 田辺に促され、杉山が頷いた。


 『実はね…』


 杉山の話では、彼女が原口の浮気を知ったのは一週間程前だったらしい。その前に原口が他の女と抱き合っているのを目撃していたからか、ホテルから出て来た二人を偶然目撃しても、然程動揺しなかったそうだ。

 杉山は彼女と以前から知り合いだったらしく、彼女から電話で相談されていたらしい。


 『そうだったのか。』


 田辺が唸るように言った。


 『そんな事情だとしても大丈夫ではないだろう。浮気相手から挑発された形なんだぞ。』 


 俺がそう言うと、田辺も同意して頷いた。


 『杉山、後であゆちゃんに電話してくれるか?』


 『うん、解った。』


 田辺から頼まれた杉山は、珍しく神妙な顔で頷いた。


 『てかさ、なんで杉山があゆちゃんと電話してたんだ?まさかお前ら…』


 何故こんな場面でそんなふうに茶化す事が出来るのか?些か謎ではあったが、平木の疑問は俺も同意だった。


 『ち、違うよ!あゆちゃんのお父さんとウチの父さんが高校の同級生でね、中学まで毎年交流があったんだよ。お母さんから番号を聞いて電話したって言ってた。』


 『ふうん…。まぁ、信じてやるよ。』


 平木の言葉に、杉山は困り果てたような顔をした。


 『原口に近い人間に聞いて欲しかったんだろうな。杉山は優しいし、適任だと思うよ。』


 『そうだな。あゆちゃんも悩んだ末にそうしたんだろうし、これからも力になってやってくれ。』


 俺と田辺の助け舟に、杉山は目を潤ませて頷いた。

 一件落着に見えたその時、


 『あー、成る程ね。だから吉元に会いたがったのか。』


 と平木が言った。不意な発言で心臓が跳ねたのは、「会いたがった」の言葉があったからだ。


 『どういうことだ?』


 『昨日、本屋で偶然会ったんだよ。その時に吉元の話をしたんだ。ほら、原口を捩じ伏せた、あの時の話だよ。』


 『彼氏を痛め付けた相手に会いたがるって…あゆちゃんは何を考えてんだ?まさか、吉元に頼んで更に痛い目に遭わそうとか…』


 田辺の物騒な発言に、思わずギョッとして顔を向けてしまった。田辺はあくまでも真剣な顔で俺を見て、


 『もしそうなら、協力するか?』


 と、俺に確認する始末だった。


 『違うよ、あゆちゃんがそんなこと頼むワケないだろう?そうじゃなくて、原口に意見してくれる相手は有り難いって、それで会ってみたいって言ってたんだよ!』


 『ってことは、あゆちゃんも原口の暴走に困ってた、ってことか。』


 平木の説明に、田辺は腕を組んで再び難しい顔をした。

 いつまでも続きそうな勢いの議論に、マスターまで割って入って来た。


 『その、あゆちゃんって子は、随分愛されキャラなんだな。そんな子がお前に会いたがってたんだ。対面を果たしてどうだったんだ?』


 痛い質問だった。

 しかも、多分この人は、俺の気持ちを解っていてぶつけて来たのだ。

 その証拠に、俺に対して試すような笑顔を向けている。

 それに加えて、田辺もマジマジと俺を見ていた。平木と杉山が入って来るまでしていた話の続きだからだろう。

 だとすれば、ここで嘘をつく訳にはいかない。

 しかし…正直に話すには、平木と杉山の存在が気になる。田辺とマスターなら黙っていてくれそうだが…この二人がどこまで黙って居られるだろうか?


 考えた挙げ句、正直な感想の、当たり障りのない部分を話すことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。