↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺様ですが、恋はします。  作者: 柊 繭子
11/31

山伏と陰陽師(5)

 マスターからの餞(はなむけ)は、ツナピラフとエッグサンドだった。

 料理がテーブルに並ぶと同時に、平木と杉山が戻って来た。途端に賑やか…を通り越して、喧しくなった。


 『やっぱり美味いな!』


 ツナピラフを口にかき込みながら、平木はしきりに『美味い』を口にした。

 全く…食べるか喋るかどちらかにして欲しいものだ。

 まあ、気持ちは解らなくはない。確かに美味い。

 具は、玉葱とピーマンのみじん切りに、輪切りにしたウィンナーソーセージ。それに、主役のツナのフレークだ。ピーマンとウィンナーの相性が抜群で、鼻から抜ける香りからマヨネーズで味付けされているのが解る。

 ツナとマヨネーズ、ピーマンとウィンナーと云う、相性抜群な組み合わせを、玉葱が上手くまとめている印象だ。


 『美味しいね。こんなエッグサンド、他所にはないからね。』


 杉山はエッグサンドがお気に入りのようだ。幸せそうな顔で頬張る姿は、野郎には見られない上品ささえ感じられた。

 上品と云うか、女子の食べ方だ。

 口に運ぶ度に、具が落ちないように手を添えているし、一口が小さい。美味しいと言いながら頬に手を充てるなど、野郎にはとても出来ない芸当である。

 その、女子のような食べ方には共感出来ないが、このエッグサンドの表現は解る。確かに、初めてお目にかかるタイプのエッグサンドだ。

 名前の通り、主役は玉子なのだが、その玉子が特徴的だった。一般的な、茹で玉子をマヨネーズで、的なモノではなく、挟んであるのは玉子焼きだった。

 玉子焼きとキャベツの千切り。それが、マヨネーズと少量のケチャップと一緒に挟んである。少し甘めの味付けの玉子焼きが、優しい口当たりにしている。


 『確かに美味いな。』


 俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。


 あっと云う間に皿が空になった。

 俺と平木が煙草に火をつけると、杉山がそれを咎めた。

 未成年なのにとか肺癌になるとか、終いには


 『肌に悪いよ。』


 とまで。

 それを聞いて、平木と二人で


 『お前は女子か?』


 と台詞が揃うと、カウンターと厨房から大笑いが聞こえた。


 思ったよりも悪くない。


 煩わしいだけだと思っていたが、この二人と友人になることは、悪くないのかもしれない。


 日が傾いて、黄昏時が迫る頃にダイスを後にした。

 ダイスの前で二人と別れ、駅まで歩きながら、そんなことを考えていた。


 こうして、予備校通いの初日が終わった。

 望まない展開から、目眩と頭痛に度々襲われたが…終わってみれば、悪いことばかりではなかった。

 これ以上増えたら面倒だが、友人の居る予備校生活も、悪くはないのかもしれない。


 床に入って、今日の出来事を振り返り返る。眠りに捕らわれる間際、少し笑っている自分に驚いた。

 驚きながらも、心地よい微睡みに落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。