山伏と陰陽師(5)
マスターからの餞は、ツナピラフとエッグサンドだった。
料理がテーブルに並ぶと同時に、平木と杉山が戻って来た。途端に賑やか…を通り越して、喧しくなった。
『やっぱり美味いな!』
ツナピラフを口にかき込みながら、平木はしきりに『美味い』を口にした。
全く…食べるか喋るかどちらかにして欲しいものだ。
まあ、気持ちは解らなくはない。確かに美味い。
具は、玉葱とピーマンのみじん切りに、輪切りにしたウィンナーソーセージ。それに、主役のツナのフレークだ。ピーマンとウィンナーの相性が抜群で、鼻から抜ける香りからマヨネーズで味付けされているのが解る。
ツナとマヨネーズ、ピーマンとウィンナーと云う、相性抜群な組み合わせを、玉葱が上手くまとめている印象だ。
『美味しいね。こんなエッグサンド、他所にはないからね。』
杉山はエッグサンドがお気に入りのようだ。幸せそうな顔で頬張る姿は、野郎には見られない上品ささえ感じられた。
上品と云うか、女子の食べ方だ。
口に運ぶ度に、具が落ちないように手を添えているし、一口が小さい。美味しいと言いながら頬に手を充てるなど、野郎にはとても出来ない芸当である。
その、女子のような食べ方には共感出来ないが、このエッグサンドの表現は解る。確かに、初めてお目にかかるタイプのエッグサンドだ。
名前の通り、主役は玉子なのだが、その玉子が特徴的だった。一般的な、茹で玉子をマヨネーズで、的なモノではなく、挟んであるのは玉子焼きだった。
玉子焼きとキャベツの千切り。それが、マヨネーズと少量のケチャップと一緒に挟んである。少し甘めの味付けの玉子焼きが、優しい口当たりにしている。
『確かに美味いな。』
俺がそう言うと、二人は顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。
あっと云う間に皿が空になった。
俺と平木が煙草に火をつけると、杉山がそれを咎めた。
未成年なのにとか肺癌になるとか、終いには
『肌に悪いよ。』
とまで。
それを聞いて、平木と二人で
『お前は女子か?』
と台詞が揃うと、カウンターと厨房から大笑いが聞こえた。
思ったよりも悪くない。
煩わしいだけだと思っていたが、この二人と友人になることは、悪くないのかもしれない。
日が傾いて、黄昏時が迫る頃にダイスを後にした。
ダイスの前で二人と別れ、駅まで歩きながら、そんなことを考えていた。
こうして、予備校通いの初日が終わった。
望まない展開から、目眩と頭痛に度々襲われたが…終わってみれば、悪いことばかりではなかった。
これ以上増えたら面倒だが、友人の居る予備校生活も、悪くはないのかもしれない。
床に入って、今日の出来事を振り返り返る。眠りに捕らわれる間際、少し笑っている自分に驚いた。
驚きながらも、心地よい微睡みに落ちていった。




