俺以外の男とするなよ
バルドー以下、部下数名が見学に来た決闘の翌日未明。
朝練や身支度、軽い朝食を済ませたレオンハルトは、王立騎士団本部の騎士団長執務室に飾られた鎧や武器の埃を拭いていた。これは精神統一にもなる、レオンハルトの趣味の一つである。
「だぁんちょ」
雑なノック音とともに入室してきたのはバルドーだ。昨日と違い、赤茶色の髪はざっくりとセットされている。
「おはようございます、ちょっといいですかね」
「ちょっといいかと尋ねる人間は先にソファに座らないと思うぞ、バルドー」
「じゃあいいですね」
代々騎士団長が受け継いできた年季の入った紺色のソファにこうもふてぶてしく座れるのはバルドーくらいのものだろう。そう思いながら、レオンハルトは今や装飾品となってしまった短剣を丁寧にクロスで拭く。
「ちょっとご相談っていうか、言っとこうかなと思いまして」
「何を?」
「セレスちゃんとの決闘なんですけど」
うわっ、という小さな悲鳴とともにレオンハルトが落としかけた短剣をどうにかキャッチした。
「落とすなや。団長のお宝なんでしょ」
「お前っ……お前が急に変なことを言うからだ、が、たしかに僕の注意力が欠如していた。気をつける」
レオンハルトはデスクで拭くことにした。これまた年季の入った椅子にそっと腰掛ける。
「それで、決闘が何だ? バルドー」
「そうそう。昨日思ったんですけど、もしセレスちゃんがうちの騎士に一対一の決闘を申し込まれたら、断ってもらうように頼めないかな〜って」
「理由は?」
「あそこ二人きりになりやすいじゃないですか」
ゴトッとデスクが鳴る。
「机の上で落としかけます?」
「誰にだって落としかける可能性はある」
「団長が落としかけたらヤバいんでやめてくださいね」
「気をつける」
さっきも聞きましたよ、とバルドーが言ったが、レオンハルトは短剣についてはそれ以上触れなかった。
「二人きりになり……たがる、騎士がいたのか? 昨日」
バルドーの言わんとすることを理解したレオンハルトは、厳しい目でバルドーに確認する。
「たぶん。可能性はゼロじゃないかも」
とバルドーが適当に頷いた。レオンハルトはクロスで拭く手はそのままに、ふむ、と少しの間考える。
「……第三者が立ち会う規則を設けるのは?」
「法律上は違反じゃないのにですか?」
設けるにしても色々手続きめんどいですよ、とバルドーが言う。それにはレオンハルトも同感である。王立騎士団のみで施行する規則であっても、まずは王宮の承認を得なければならないからだ。
「だから団長。団長からセレスちゃんに頼んで!」
おねが〜い、と請うバルドーは笑顔だ。
「なぜ僕が」
「団長が嫌がるなら、そりゃ俺から言いますけど」
そしてバルドーは前のめりになり、わざとらしいしぐさで髪を掻き上げ、やたら真剣な眼差しでレオンハルトを見る。
「『他の男からの決闘申し込みは……断ってほしい』。って」
もしも今握っているのが個人用のナイフであればソファやバルドーの頬を掠めない程度に投げつけていたかもしれない。レオンハルトはよく理性と良心と冷静を保てたものだと自分で自分を褒めた。
「団長。目ェ怖いですよ」
「すまない。お前にイラついたからだ」
「へー、イラついたんだぁ〜」
バルドーは両腕をソファの背もたれに置いた。
「……拭きすぎじゃないです? それ。逆に傷つきますよそれ」
そうバルドーに指摘され、レオンハルトはようやく短剣を必要以上に拭きすぎてしまっていたこと、そして長く沈黙していたことに気付いた。
「要は、人気のないところで二人きりになる状況を避けるように頼めばいいんだろう?」
「はい。団長以外の男とね」
「おとっ……男、と表現する必要性は感じない」
「かといって『騎士』だとさ。人数は少ないけど、女の騎士もいるじゃないですか、うち」
「それはそうだが……」
「男と女で宿舎を分けてんのもそういう理由でしょうが」
「それもそうだが……」
目を泳がせるばかりのレオンハルトに、煮え切らねぇなぁ、とバルドーがボヤく。
「んじゃ俺から頼んでみますわ」
レオンハルトが視点を定めた。
「『俺以外の男と、するなよ。決闘』」
これほど気障ったらしいバルドーなど見るものではなかった、とレオンハルトは後悔した。
「僕から頼んでみる」
「頼んでみる、じゃ困るんですよ。リスク管理として」
「頼む」
「団長からね」
次にレオンハルトが後悔したのは、大満足と言わんばかりのバルドーのニヤけ顔を見たことだった。
バルドーが舞踏会であらゆる女性に声をかけているのはレオンハルトも知っている。不定期だが、特定の親しげな女性とだけ一緒にいることも知っている。
騎士にとって貴重な休日に、どこへ行くのかと聞けば「デートですけど?」と答えて堂々と出かけていく、格好つけた姿も何度だって見てきた。しかし王立騎士団の女性騎士から告白とかいう恋人になるための交渉を受けると「職場恋愛はしない主義だ」とキッパリ断るのは、おそらくバルドーなりの公私の線引きだろう。
――あいつ、いつもあんなセリフで女性を口説いているのだろうか。
王宮に提出して戻ってきた盗難事件犯人の再犯防止案の書類や、近頃の害獣にまつわる報告書、地方の騎士団駐屯地からの定期報告書、それから騎士団の武具の修繕願い届け等々、午前の事務を終え、定刻通りに昼休憩を迎えたレオンハルトは、今朝のバルドーの文句を振り返っていた。「他の男からの決闘申し込みは……断ってほしい」、「俺以外の男と、するなよ。決闘」どちらも背中の筋肉がぞわぞわするセリフだ。レオンハルトは肩を前後に動かした。
やはり練習するしかないのだろうか。しかし一人称が違う。そもそも敬語がいい。口調が違う。しかも二つ目に至ってはお願いというより命令だ。
「ぼ、僕……」
――いや、やっぱり再現できそうにない。レオンハルトは書類を片付けたばかりのデスクに突っ伏した。
今日は先に昼食を取るか。いや、もしかしたら今日、セレスティーヌさんが来るかもしれない。であれば、おそらくバルドーがそばについているだろうが、自分が中々姿を見せなかったら、バルドーが先に彼女に頼むかもしれない。あのイライラする、すごく邪な感情をできる限り肌触りのいい高級な花柄ブランケットで包んだような言い方で。
言うのか。バルドーが。あの腹立つ顔とセリフで。
そう思った頃にはレオンハルトの足は稽古場へと向かっていた。
「――そーなんよ、セレッちゃん」
セレッちゃん。稽古場から聞こえてきたバルドーの声に、レオンハルトの歩みが止まる。「まあ」と小さく驚くセレスティーヌの声も聞こえてきた。
二人は今、稽古の休憩中のようだ。二人から少し離れたところには見物人の騎士たちも数名いる。
「そんでさぁ、団長はレディ相手でもすぐ武器とか防具とか技法書とか言い出すワケなのよ」
バルドーは今朝まで「セレスちゃん」と呼んでいたはずだ。今のは聞き間違いだっただろうか。
「だから団長のツラと地位目当てのレディたちも、さすがに会話の途中から目が虚ろになっちゃうの」
ん!?
「バルドー。ちょっと待てお前」
「あれ? 団長。来たんですね」
「騎士団長が騎士団の稽古場に来ちゃ悪いか?」
「いや別に」
レオンハルトに凄まれても、バルドーは微動だにしなかった。
「ごきげんよう、レオンハルト様。今、バルドー様からレオンハルト様のお話を伺っていたところでしたのよ」
にこやかなセレスティーヌとニヤついているバルドーを交互に見る。そしてレオンハルトは「そのようですね」と襟を正した。
「こんにちは、セレスティーヌさん。……バルドーから、どのような話を?」
「団長はモテるけどレディと雑談が苦手なんだよ〜って」
前半はともかく後半は事実である。レオンハルトは溜め息をついた。
「バルドー。騎士団内のゴシップの源はお前だという噂は本当だったようだな?」
「まっさかぁ〜」
絶対こいつだ。レオンハルトは確信した。レオンハルトは業務の一環として内部の情報収集を任せはしたが、バルドーは想像以上に王立騎士団内のゴシップを牛耳っているようだ。
「つーか団長、コレは社交界じゃそこそこ知れ渡ってますよ」
――そうだったのか。社交界の話題に疎いことくらい、さすがのレオンハルトも自覚はしていたが。
「わたくしは初耳でしたわ」
「セレッちゃんも同じ話題ふっかけてそうだもんね」
そういえば、セレスティーヌの口からプロポーズと戦闘にまつわる話題以外を聞いたことがない。レオンハルトがセレスティーヌを見ると、セレスティーヌは口元に手を当てて何やら考えているようだった。
「……皆さまのあの目、そういうことでしたのね!?」
「ありゃま、ホントに身に覚えがあるようで」
バルドーが笑った。
「今後は控えるようにいたしますわ。お友達を失いたくはありませんもの……」
そしてセレスティーヌはしゅんとするのだった。彼女がここまで気落ちするとは。レオンハルトは「いや」と慌ててフォローする。
「そういう話が通じる相手もいると思いますよ。女性の皆さんでも……」
「おい団長、いつもレディたちの目を虚ろにさせてるのは団長ですよ」
「……ごくわずかかもしれませんが、女性の方々にも、中にはいらっしゃるかと!」
「団長すごく下手くそだね、レディをフォローすんのも」
とうとうレオンハルトが遠慮することなくバルドーを睨んだ。しかし、いつもなら視線を逸らすバルドーは、ここでは自分が有利と判断したのか「事実でしょ」と赤茶色の目でレオンハルトを煽る。
言い返せないレオンハルトは、コホン、と一つ咳払いした。
「あの、セレスティーヌさん。僕は……その、武具や技に目がないので……」
レオンハルトはセレスティーヌを元気づけることにしたらしい。
「なので、お話の相手をつい置き去りにしてしまうのも……その、お気持ちはわかります。よくあることだと思います」
ねぇよ、とバルドーが言った気がしたが、レオンハルトはスルーした。
「わかりますわ」
セレスティーヌの表情がぱっと華やぐ。
「戦士であるからこそ、実戦だけではなく、その武具や技法書にも血が滾ってくるものでしてよ!」
「そうなんですよ、セレスティーヌさん!」
バルドーが一歩、後ずさりしたことには、二人は気付いていないようだ。レオンハルトが話を続ける。
「いえ、僕などまだまだ一介の騎士に過ぎませんが……それでも研ぎ澄まされた剣や隙がない鎧、そして日々の研鑽の賜物である技とそれを記した技法書、それらをどう活かすか練りに練った戦術――」
あっ。しまった。また悪い癖が出た。レオンハルトは我に返る。いつもならこのあたりで相手の目が曇っていく。やってしまった、とレオンハルトは口に手を添える。助けを求めてバルドーを探すが、自分の副官が「うわぁ」という顔で、自分から少し距離を置いて立っているのを見て、レオンハルトは事の重大さを痛感する。
「し、失礼しました。すみません」
そしてセレスティーヌに謝罪したのだった。だがレオンハルトの予想に反し、セレスティーヌの深い青色の瞳は輝きを失っていない。「とんでもございませんわ」と言う声色も、レオンハルトが知るいつも通りのセレスティーヌのものだ。
「それでこそ騎士を束ねる長にふさわしい心得だと思いますわよ」
ぴく、と両目あたりが弾んだ気がした。レオンハルトは思わず目元を手で押す。今日は暑いな。気温の変化を感じつつ、レオンハルトは顔から手を離した。
「……そう仰っていただけると、救われます」
本当に救われる気持ちだった。レオンハルトは素直に心中を吐露した。
「バルドーも言っていたように、だいたいの方は、途中から目が虚ろになられますから……」
「そうなんですの? これほど血が騒ぐお話もありませんのに」
「そうなんですよね」
自分の後ろでバルドーがニヤニヤしていることにも、もちろんレオンハルトは気付いていない。
「ですが他に、女性に喜んでいただける話題がわからなくて……」
「どんだけいつも話題に困ってんですか団長」
さすがのバルドーも指摘せずにはいられなかったらしい。ニヤけ面を吹き飛ばし、真顔で口を挟んだのだった。
「それならバルドー、お前はいつも女性と何を話しているんだ?」
「いや団長、その前に自分でもよく考えてくださいよ」
レオンハルトは腕を組んで思案する。
「……近頃、猪が畑を荒らしてるとか?」
「マジで言ってます?」
バルドーの顔が引き攣った。その様子を見て、どうやらこの話題は女性との会話では不適切らしい、とレオンハルトは判断する。
「狩ろうかしら」
セレスティーヌ以外の女性との会話では、不適切らしい。
「いえ。それは騎士の仕事です、セレスティーヌさん」
レオンハルトが言ったのは至極真っ当な正論である。害獣駆除は王立騎士団が担う業務だ。
そこへ、バルドーが気障たらしく前髪を掻き上げながら「セレッちゃんセレッちゃん」とセレスティーヌに近寄る。そのまま目を細め、顎に右手をやり、小首をかしげ、さらにいつもより声を低くしてこう言った。
「俺と行かない? ……猪・狩・り」
無駄にウインクまでするな。猪狩りはデートじゃないんだぞ。レオンハルトがそう言う前に、「ぜひ!」とセレスティーヌが乗っかった。
「セレスティーヌさん、ダメです」
「騎士の仕事ッスよ?」
「お前はな、バルドー」
ちぇ、とわざとらしくバルドーはすごすごと身を引いた。
「わたくしも母も武者修行で害獣退治したとか」
「相手は話が通じない獣ですよ、セレスティーヌさん」
「燃えますわ」
「燃えないでください。人間相手とは訳が違うんです」
「なおさら燃えますわ」
気持ちはわかるが諦めてほしい。レオンハルトはこの状況をどう切り抜けるべきか考えを巡らせる。
「セレッちゃんの祖先は獣かな〜?」
「バルドー。女性に向かって失礼なことを言うな」
ああもう、お前は。レオンハルトは副官の口の軽さを恨んだ。
「失礼ではございませんことよ、レオンハルト様。よく言われますもの」
言われるんだ。レオンハルトの心配は杞憂だったのか。
「ともかく、猪退治は騎士だけで済ませます。セレスティーヌさん、どうかご理解ください」
「セレッちゃんが心配ですって素直に言えばいいのにぃ」
「なっ……」
なんてことを言うんだバルドー、とレオンハルトがバルドーを睨むより先に、珍しくセレスティーヌがレオンハルトを睨みつけた。
「レオンハルト様」
「は、はい」
「わたくしが心配だなどと、聞き捨てなりませんことよ。獣相手でも油断はいたしませんわ」
「……そういうことではないんです……」
どう言えば伝わるのだろうか。騎士だけで害獣駆除をする、たったそれだけのことなのに。レオンハルトはまたしても会話の難しさを思い知らされる。
「あ〜、『埃相手とて一切油断するべからず』ってやつね」
バルドーは納得したようだった。「なんだそれは?」とレオンハルトが尋ねた。するとバルドーは意外そうな顔をする。
「あれ、団長は知らないんスか? セレッちゃんちの家訓の一つ」
「ええ、我が家の家訓ですの。ですからわたくしは、たとえ砂の一粒相手でも気を抜きませんわ」
「……僕は初めて聞きました」
いつバルドーに教えたのだろうか。レオンハルトはなぜかそこが気になった。
「レオンハルト様。わたくしはいつでもお待ちしておりますので、気兼ねなくお声がけくださいませね」
レオンハルトの心中などちっとも知らずに、セレスティーヌは真剣な眼差しを向けた。なんとなく予想はつくが、レオンハルトは一応、「何にでしょうか?」と確認する。
「猪狩りに。わたくし、援護もできますわよ」
「あなたは……騎士では、ありませんので」
レオンハルトがどうにか絞り出せた言葉がそれだった。
「セレッちゃんに怪我してほしくないって言え」
「バルドー。お前は口を慎め」
あーい、とバルドーは軽く返事をし、見学中の騎士たちの元へ向かった。
「レオンハルト様。わたくし、応急処置もできましてよ」
「そういう問題ではなくて。……それから、セレスティーヌさん」
「どうなさいまして?」
言うなら今か。せっかくバルドーが部下を端に寄せてくれているのだ。レオンハルトは腹を括った。
「……その」
「はい」
「ぼ、僕以外の……男性と」
「殿方と?」
セレスティーヌはきょとんとしている。言う。言うんだ。レオンハルトは唾を飲み込んだ。
「……セレスティーヌさんにお願いがあります。僕以外の男性と、二人きりになる場所には行かないでください。非常に危険な可能性があります」
言った。言えた。いや、言えたのだろうか。レオンハルトは恐る恐るセレスティーヌの表情を伺う。
「わたくし、父と……たまに屋敷の庭で稽古していますけれど……」
「お父上は大丈夫です。ご家族やお屋敷の方以外の男性です」
「な、なるほど」
セレスティーヌが少し動揺したように視線をそっと逸らす。
「……て、丁重に返り討ちできるとしても、ですわよね?」
「は、はい。それでもです。あ、やっぱり、僕からこのようなことを言われるのは嫌ですよね? ……でしたら、無視していただいても構いませんので……」
「いっ、いいえ」
セレスティーヌは両頬を押さえて首を横に振る。
「嫌ではございませんことよ。ちっとも。……わかりましたわ。二人きりの決闘もですのよね?」
「できれば、断っていただけると、安心できます。……もしくは……ご家族のどなたかを立会人としてお招きして決闘相手と二人きりになるのを避けるのであれば、危険性はうんと下がるかと」
「なるほど……」
そうだ。決闘場でも、セレスティーヌの家族が誰か立ち会っていれば、彼女に危険が及ぶこともないだろう。何せ武者修行として国内を一人旅した父親と母親、そして国外で獣を追い求めている兄だ。セレスティーヌの危険も察知してくれるに違いない。
「それと……騎士団本部では、できるだけバルドーと一緒にお過ごしください。あいつはそういう危険を見抜くのが得意です」
「密偵――の話ではなさそう、ですわね」
「はい、違います。本来であれば、頼んでいる僕がそばについていたいのですが、他の業務も疎かにはできず……バルドーが不在であれば、必ず女性の騎士をお連れください」
「ああ……わかりましたわ。そのようにいたします」
セレスティーヌが頷いた。レオンハルトの言葉の意図も、なんとなく伝わったように見える。よかった。レオンハルトは強ばっていた肩がほぐれるのを感じた。
「ありがとうございます……!」
「こ、こちらこそ、お気遣いいただき感謝いたしますわ。……なんだか、本日は暑いですわね」
「……やっぱり暑いですよね? 朝は涼しかったんですが……」
「急な気温の変化ですわ……体調や気候に用心しなければ」
「はい。お互い、気を付けましょう。次の決闘に差し障るといけません」
気温なんか変わってねーよ、とバルドーが呆れ返っていることには、やはり二人にはわからなかった。




