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新入社員・田中君と新藤さん(短編連作)  作者: 遠藤 世羅須


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23/30

第22話(新藤美咲)「コンビニ寄り道が“事件”になる」

今週も終わりました。

週末の帰り道、少し解放感があります。

金曜の退勤。

新藤美咲は、エレベーター前で田中厚太と鉢合わせた。

同期とはいえ、帰りが一緒になると少し気まずい。

“同期”という言葉は便利だが、

距離感の正解をくれない。


駅までの道。

周囲の人々が急ぎ足で過ぎていく。

沈黙が長くなる前に、美咲は言った。

「……今週、長かったですね」

田中が即答する。

「体感、三週間くらいありました」


少し笑って、少し楽になる。

その流れで、美咲はつい言ってしまった。

「コンビニ、寄ってもいいですか。甘いものが欲しくて」

田中はうなずいた。

「僕も寄ります」


二人で入店。

美咲は棚を見ながら、頭の中で考え始めた。

(これ、寄り道っていうより……一緒に買い物?

 いや、ただの補給。補給です。変な意味はない)


ところが、田中が真面目な顔で言った。

「新藤さん、どれがいいですか」

「え?」

「甘いもの。僕、こういうの詳しくなくて。おすすめあります?」

質問が急に友人レベルになる。


美咲は焦った。おすすめ。しかも同期の週末の補給を左右する。

あまり女子っぽい甘味好きを見せたくない。でも変に冷たくもしたくない。

思考が滑り、口が先に出た。


「……じゃあ、これ。定番です」

無難な定番を選ぼうとしたのに、

テンパりすぎて一番派手なものを掴んでしまった。


手に取ったのは、”季節限定”のいちご系スイーツだった。

派手なPOPまで付いたピンク色の目立つ包装。

(しまった。全然定番じゃない。

 一番浮いてたのを掴んでしまった!)


挿絵(By みてみん)


田中はじっとそれを見て、なぜか神妙に言った。

「それ、やっぱり“正解”ですかね」

「正解とかじゃなくて……」

美咲は頬が熱くなる。

たかがコンビニで、急に評価軸が生まれる。


会計で、

田中が美咲の分まで一緒に支払おうとして、

「……じゃあ、……情報提供のお礼ということで、僕が」

美咲は即座に止めた。

「ダメです! 同期ですから!」


レジの店員が一瞬動きを止める。

「同期だとダメなんですか」

「ダメというか……駄目です!」


周囲の客の注目を集めた気がして

美咲は目線を動かせなかった。

言い方が最悪だ。

美咲は慌てて補足した。

「割り勘というか、各自です。各自が、健全です」


田中は一拍置いて、静かに頷いた。

「健全……」

その一言が、妙に面白くて、二人とも笑ってしまった。


店を出ると、夜風が顔の熱を冷ましてくれた。


でも美咲は思った。

“同期と寄り道”は、想像以上に難易度が高い。


そして、少しだけ楽しい。

それが、また困る。


(つづく)

帰り道の寄り道って、それだけで何か楽しいです。

ましてや週末だと。

その先にある解放感が何とも心を豊かにしてくれるようで。

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