第21話(田中厚太)「他部署のアウェー感」
本日は田中君です。
部署に慣れて来たのですが、他部署はまた別。
田中君、また緊張します。
田中は初めて他部署に資料を持っていき、
手続きを代行する用事を任された。
行き先は総務。
社内だが“よその縄張り”感がある。
総務フロアに入った瞬間、空気が違う。
謎の観葉植物が多い。
タイピング音が自部署より静かで響く。
全員が落ち着いて仕事をしている。
田中は、場違いな雰囲気に合わせる言葉が見つからない。
自分の心拍が跳ねる音が聞こえそうだ。
受付の女性が顔を上げた。
「はい、何でしょう」
田中は会社訪問のノリで言ってしまった。
「お忙しいところ恐れ入ります。
資材課の田中が伺わせて頂きました」
女性は一瞬、キーボードを打つ手が止まる。
「……はい。どなたに?」
田中の顔が熱くなる。
「えっと、山本さんに……伺いました」
二回目は少し短く。
後ろからゴロウ先輩が通りがかり、陽気な声で言った。
「ダ・ヴィンチくん、社内は“来ました”でいいよ」
相手の女性は、ダ・ヴィンチという想定外の言葉に反応して、
思わず顔を伏せ、口を手で覆った。
周囲の女性社員も、動かす手を止めて振り返る。
その注目の中で、
田中は言われた通り、深く頭を下げ、
「来ました!」
強張った声が元気よすぎて、さらに目立った。
受付女性は、顔を上げ、平静を装った声で、
「山本さん、お客さん」
と呼んでくれたが、
目線を逸らしたその声と肩は、
心なしか震えているように思えた。
社内の敬語は、外ほど立派でなくていい。
丁寧のカースト制度は、部署の境界線を越えるとバグを起こす。
そして、二つ名は、アウェーでは要らない。
(つづく)
他部署って、最初はとても「アウェー」ですね。
知った顔がいないだけで、とても緊張します。
この話は総務ですけど、私も経験あるのが、
営業1課と2課というライバルのアウェー感です。
すぐ隣だったのに、とても反目していて、
話しかける敷居が高かったです。
シャレにならない言葉も出てました。
良い意味で競えば良いのですが…。




