第16話(新藤美咲)「電話の関所 “失礼します”」
新藤さん、電話がまだ恐怖です。
掛ける方はまで良い方ですけどね。
先方へ電話。美咲にとって、社外電話はまだ“恐怖”に近い。
深呼吸して、番号を押す。
「お世話になっております。○○社の新藤と申します」
言えた。奇跡的に噛まなかった。
用件も伝えられた。相手も理解してくれた。
最後は締めるだけ。
「それでは、よろしくお願いいたします。失礼いたします」
――のはずだった。
相手が言った。
「はい、よろしくお願いします」
その瞬間、美咲の脳が“会話終了”と判定してしまう。
「はい! ありがとうございます!」
言ってしまった。
しかも切らない。切るタイミングが分からない。
(『敬語とメールの基本』には『相手が切るまで待つ』とあった。
でも相手も、こっちが切るのを待っている……!?)
相手も切らない。
受話器の向こうから、かすかな息遣いだけが聞こえる
二人の沈黙が電話を温める。
耳たぶが暖かくなってくる。
美咲は焦って、最後の一撃を放った。
「……失礼します! 今度こそ!」
そして勢いで切った。
受話器を置いた瞬間、顔が熱くなる。
隣の先輩が笑いながら新藤に言った。
「私も、最初の頃、予定通りにはいかなかったよ」
そして、笑顔で、
「“今度こそ”は言わなくても大丈夫だよ」
美咲は小さく頷いた。
言わなくていい言葉ほど、口から出てしまう。
(つづく)
電話は最初の関門ですね。
言葉遣いとかの言葉選び、間の取り方、
音声だけなので、難易度高いです。
一つ々々覚えていくしかないですね。
ベテランになれば当たり前も、
新人にはハードル高いです。




