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新入社員・田中君と新藤さん(短編連作)  作者: 遠藤 世羅須


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第13話(田中厚太)「初めての週末、会社が抜けない」

今回は田中君ターンです。

最初の頃は、新しい世界に馴染もうとして、ギャップに苦しみますね。

休日も緊張が残ります。

配属から一週間。田中厚太の初めての週末は、

金曜夜、布団に入っても、

頭の中でチャットの鳴ってもいない通知音が、鳴る。


土曜の朝、田中は“社会人の週末”を完璧に過ごそうとした。

洗濯。掃除。買い出し。作り置き。資格勉強。

順番まで決めて、スマホメモに書いた。


そして、メモの最後にこう書いた。

「月曜の自分を助ける」


書いてから気づいた。

週末まで、会社の自分が主役になっている。

挿絵(By みてみん)

田中は気を取り直し、コンビニでコーヒーを買って公園へ行った。

ベンチに座り、空を見上げる。

春の穏やかな空気が清々しい。

“休む”とはこういうことだ。たぶん。


ところが、手元のスマホが震えた。

通知。社内チャット——ではない。


大学時代の友人からの

『今日ヒマ? ゲームしよ!』

というフランクなLINEに対して、


『ご連絡ありがとうございます。対応可否を——』


と途中まで打ってしまい気付く。

友人に対応可否はない。


代わりに田中は、妙に硬い文を送った。

「週末は休養に専念します」


送信して、田中は赤くなった。

友人に“専念”は、いらない。



公園のベンチで、田中は手元の「週末タスク一覧」を見つめた。


だがその時、ベンチの横を飛んだ鳩に驚き、

買ったばかりのコーヒーを少しこぼしてしまう。

思わず「あ、すみません…」と口走ってしまった。


謝る相手もいないのに、頭の中で「すみません」が回っていた。


こぼれたコーヒーが、ベンチの板の隙間に染みていく。

染みていくのを見ていたら、ふっと肩の力が抜けた。


なぜ休みの日に、スケジュールに追われているのか。

土日は、自由なはずなのに。


田中はスマホをしまい、コーヒーを一口飲んだ。

(……週末にも敬語を使ってる場合じゃない)


月曜の自分は、月曜に助ければいい。

今日の自分は、今日だけ助ける。


そう決めた瞬間、体が少し軽くなる。

春の公園の風が心地よかった。


(つづく)

公私の区別で切り分けられるようになるのは

いつの頃だったか……

今でも公私の区別が難しいような気がします。

そういうのを社畜って言うんでしょうねwww

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