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新入社員・田中君と新藤さん(短編連作)  作者: 遠藤 世羅須


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12/19

第11話(田中厚太)「母の既読が重い」

長い1週間がやっと終わり、家路につく田中君。

メールが来たようです。

挿絵(By みてみん)


一週間戦った後の帰り道、

田中厚太は駅のホームでスマホを見た。

通知は母からだった。


「会社どう? ご飯食べてる? 胃は大丈夫?」


通知を見て、田中はちょっと笑った。

それから返信に詰まった。

母への返信なのに、既に“社内文体”が染み付いている。


田中は打った。

「無事に配属先へ着任いたしました。各位にご指導いただき——」


母に“各位”はない。


田中は消した。「うん。大丈夫。元気」


短すぎる。誘拐されたみたいだ。


田中はまた打った。

「研修も終わって、部署の人も優しかった。 

 ご飯もしっかり食べてる。心配しないで」


送信。すぐに既読が付いた。そして返信が来た。

「よかった。厚太のことだから、

 歓迎会で緊張して飲みすぎたりしてない?」


(そうか、歓迎会あるってメールしたんだ)

田中はホームで、少し胃が痛み始める。

失敗したとは返せないし……


ホームに電車が滑り込んできた。

通勤帰りの社会人たちが、大量に電車に吸い込まれていく。

そして、ホームアナウンスの後、走り去る。

そんな日常風景を見ながら思う。


母は変わらない。

変わったのは自分だ。


田中は返した。

「飲みすぎてない。ちゃんと大人だった」


少し嘘をついてしまう。

そして、”大人だった”に自分で突っ込みを入れる。

いつ以来だろう、絵文字を入れないメールは。


送信後、ホームの冷たい風では、

頬の熱を冷ませなかった。


(つづく)

新社会人となり、日々の慌ただしさに忙殺される毎日が始まり、

色々な事に振り回されるようになっても、

両親は、しっかり見守っていてくれるものです。

唯一にして最後の精神的な拠り所。

両親を思い出し、感謝していたのを思い出します。


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