第五章魔王軍の刺客 2(終)
「みなさん、逃げてください!街の中に魔族がいます!」
「ダベル北側で、魔王軍が暴れています!!」
俺は分身を使って、カーレイと共にすでに避難指示を出していた。
「させねぇよ!!!」
「その手は読めてる!!!」
逃げ遅れた市民に構えた魔法を魔剣で弾く。
「あ……あぁ………ありがとう…。」
「喋ってないでさっさと逃げろ。戦闘に巻き込まれたいか?」
周りにいた市民は、全て避難を終えた。
「これで思う存分戦えるな。」
「ふん、まぁいい。貴様は、貴様だけは!地獄へ引き摺り込んでやる!!」
魔力量がさらに上がる。魔力の質も高い。
「はっはっは!これが魔族になった俺の本気だ!!俺こそが!!!
『魔軍四天王序列四位、デュードだ!!!』
『魔王』直属配下
『魔軍四天王序列四位 雷のデュード』
魔軍四天王。それは、北の大陸、通称『魔王領』に住む魔族の王、魔王から実力を認められた、最強の魔族が四体。数年前、その内の一人が帝国との全面戦争にて敗れ、空席になったとは聞いていたが、まさか元人間を四天王に選ぶなんて…………。
「………なんだ。この程度か。魔族も意外と弱いもんだな。」
魔剣が凍りつく。本来の力の一部を取り戻した。
「『汝、余を求む。我の力を以て、真の姿取り戻せ。その真の名を、フローズンサーベル!』」
喉を貫くような冷気が立ち込める。それは魔剣の冷たさであり、俺からの侮辱に対するデュードの怒りと、俺の冷淡さを表しているようだった。こんな寒さは、昔から慣れっこだ。
「貴様はここで俺になす術なく、朽ち果てるのだ!!!」
デュードが杖を構え、天へ掲げる。
「『ジャッジメントサンダー』!」
杖が振り下ろされ、暗くなった空から無数の雷が降り注ぐ。咄嗟に魔剣を振るう。
「『アンメルティングアイス』!」
空に向かって振られた魔剣から出た硬い氷が雷を防ぐ。
「次はこっちの番だな。」
魔法の発動が終わった一瞬の隙に向かってデュードの方へ飛び込んだ。
「『トラジェクトリーオブウォーター・アイスバージョン』!!」
魔剣の描いた軌跡が全て凍っていく。デュードは身動きが取れなくなった。
「これでどうだ?」
指をパチッと鳴らすと氷が一つ一つ爆発していく。デュードも巻き込まれ、大きい煙が上がる。
「まっ、こんなんじゃ死なないよな。」
デュードは防御魔法を構えた状態で粉塵から姿を現す。
「この程度で俺を倒せると思うなよ!!」
「思ってねぇよ。」
「何!?」
煙で姿が隠れている間、すでに気配を隠して分身が背後から近づいていた。
「前は魔剣を使っている最中は分身を出せなかったんだが、最近できるようになってね。」
「『月光乱舞』!!」
デュードは防御魔法を展開するが、凄まじい早さで切り刻むこの攻撃に魔法を打ち破られてしまう。
「もらったあああ!」
「くっ、『エレクトロボルト』!」
分身をなんとか突き放すデュード。しかし、シェーレンはもう喉元まで迫っていた!
「終わりだ!」
「ぐああああぁぁぁ!!」
デュードの胸に深い傷を与える。堪らずデュードは後ろへ下がる。
「きさまぁ…貴様!!!!」
なんだ!?雰囲気が変わった。目は黒くなり、頭には2本の角、爪は鋭く、杖は禍々しさを増した。
「『エンドフレイムスパーク』!」
今回は先程の雷とは訳が違うようだ。雷はさらに激しさを増し、炎まで追加されている。
「雷と炎の複合属性だああああ!死ねえええええ!!!」
俺は建物の影に隠れる。しかし、雷と炎は建物を壊して俺に襲いかかる。狭い路地を抜け、建物の中に入っても貫通して魔法が飛んできた。どうする。このまま逃げ続けてはこちらが先に力尽きる。
ほぼ同時刻、ダベル東側にて。
「おい!西側で魔族が出たって!!早く逃げろ!!!」
「なんだって!?」
「そんな、家族はどうなるんだ!」
「ママ〜、怖いよ……。」
「よしよし、大丈夫よ。早く避難しましょう。」
混乱する中、一人革の手袋をつける男がいた。
「魔族か。いいね、楽しそう。」
彼は笑みを溢しながら、戦闘をしている西側へと歩いていった。
一方シェーレンは、瓦礫に身を隠し、デュードを倒せる機をうかがっていた。
「どこにいるんだ!さっさと出てこい!!」
状況は俄然悪いままだ。分身は出せるとは言ったが、長い時間居続けられるわけでもない。もう切れてしまった。有効打がない。
「どうしようか…。」
________________ドゴーン。
いきなりの強い地響きに少し驚いてしまった。今のはなんだ?デュードか?瓦礫の隙間から様子を見てみることにした。
「誰だお前は?」
「この街に魔族が出たって聞いたもんだから、見にきたんだよ。本当だったんだね〜。」
あれは、ドワーフか?
「笑わせるな!俺は魔軍四天王のデュードだぞ!!」
「能書きはいいから、さっさとやろうよ〜。」
「どいつもこいつも俺を舐めやがって!!『ジャッジメントサンダー』!!!」
高密度の雷をあたり一面に撒き散らすデュードに対して、彼は背負っていた長めの斧を手に取る。
「始めよう。」
彼は斧を持ち、雷を簡単に弾いていく。あんなに強い魔力で作られた雷をこうも容易くパリィするとは、彼は何者なのだろう。
「もう魔法終わっちゃったよ、もしかして疲れてる?」
「ハァハァ……黙れ………ハァ…。」
「じゃあ次はこっちの番だね〜。」
彼は空中に浮いたかと思えば、身体を横にし、回転しながらデュードの下へと落ちていく。
________________ドゴーン。
先刻と同じような地響きが鳴り響く。あれは彼の仕業だったのか。デュードはなんとかギリギリで躱わすも、地面に刺さった斧の尖った部分を引き抜くと同時に柄の部分でデュードのみぞおちに突きをいれる。デュードは俺の近くの建物にまで吹っ飛ばされた。
「くっ……くそ………。なぜこの俺が…………。………まだだ。まだ俺は終わっていない!!」
「俺を忘れちゃいないか?『パーマフロストブレイド』!!」
永久凍土の如く、鋭く硬くなった刃がデュードを3回切り裂く。
「うあああぁぁぁ!!」
デュードは俺が隠れていた瓦礫近くまで転がり、苦しんでいた。
「魔族になって強くなったと、自分を過信しすぎたな。」
とどめを刺そうとしたその時。
「おやおや、これはどういったことなのでしょうか。」
デュードの目の前に突如現れた魔族はそう話した。なんだこいつは、威圧感がデュードの比じゃない。
「!?メラード!なぜここに!」
「早めに片付いたからですよ、エルフの森の方が。そして来てみたらこの有り様、これは魔王様に報告しないといけないですねぇ。」
「待ってくれ!俺はこいつらに!」
「言い訳は見苦しいですよ?」
このメラードというやつ、もしや魔軍四天王か?こいつが部下など、魔王は一体どれほど強いのか、考えただけで身震いする。
「お前、俺とはやらないのか?」
「おっと、すみません。失念していました。先客がいらっしゃったようで。初めまして、私、魔軍四天王のメラードと申します。今回は私共の部下がご迷惑をおかけしました。お詫びにこの街は残しておきましょう。今あなたと戦うのも勿体無い気がしてならなくてですね。これもまた一興。その強さ、これからも磨いていってほしいです。」
「よく喋るな。」
「すみません。おしゃべりなもので。では私たちはこれで。」
そう言うとデュードを連れどこかへ瞬間移動していった。転移系の魔法まで持っているのか。恐ろしいものだ。
「今の魔族はさっきより楽しめそうだったんだけどなあ〜。」
デュードと戦っていた彼が口を開く。
「ところで、お前は誰なんだ?」
彼に聞くと、
「あぁ、どうも〜。キョウと言います。魔族と戦った後に自己紹介するのもなんだけど、よろしく〜。」
と素直に答えた。
「俺はシェーレン。今は仲間と旅してるんだが、この街で魔族の気配を感じてここに来た。」
「へぇ〜、シェーレンかぁ。シェーレン……シェー………ん?あっ、君がシェーレン!?」
「え?だからそう言ってるだろ。」
「お〜ラッキー!もう見つけちゃった。」
「どういうことだ?」
「いやぁ、実は師匠にシェーレンっていう人を連れて来いって言われてたんだ。」
「連れて行くってどこへ?」
「ドワーフの里、フィズドルムさ!」




