第六章衝撃 1
キョウによると、キョウの師匠が俺をドワーフの里、フィズドルムで待っているらしい。キョウの師匠曰く、俺とは面識があるようだ。なんの目的で呼んだのかはキョウも知らないそうである。
「……ということだそうだ。カーレイはついてくるか?」
「もちろん行きますよ!私たち、一緒に旅するって決めたじゃないですか。」
「わかった。じゃあ行こうか。」
俺たちはフィズドルムを目指すこととなった。この時点では、まだ俺はこの先衝撃の事実が待ち受けているなど、知る由もなかった。
「あなたがキョウさんですね。よろしくお願いします。」
「どうも〜、こちらこそこんな可愛い女性と旅できるなんて嬉しくてたまりません〜。」
「え!?かっ、かわっ……!」
なにやら、カーレイが動揺している。わかりやすいな。
「キョウ、からかうな。」
「おっとすみません〜。」
「からかったんですか!?」
こんな他愛のない話をしながらフィズドルムへ向かっている最中、狼の魔物の群れと戦っている少し小柄な少年を見つける。
「魔物側が優勢ってとこですかね〜。」
「助けるぞ。」
彼が魔物に体制を崩され、殺されそうになり目を瞑った瞬間、魔物の背後から斬りつけ、彼を救う。
「大丈夫か?」
「ええ、ありがとうございます。」
「あとは任せろ。」
そう言って、キョウ、カーレイ、俺で魔物の群れを掃討した。……ほぼ、俺とキョウでの戦いだったが。
「助けていただき、本当にありがとうございました。」
少年はこちらに深々と礼をする。彼が顔を上げると、見覚えのある顔を現した。数秒後、俺は思わず面食らってしまう。
「いやいや、ってケイ!?ケイじゃないか!」
「あっ、シェーレンさん!?お久しぶりです!」
助けた少年は、4年前のブラッドレインの依頼で唯一生き残ったノーネームのメンバー、ケイだった。
「ケイ、こんなところで何やってたんだ。」
「実はあの戦闘の後、暗殺者は諦めて冒険者ギルドに骨を埋めてたんです。」
そう言ってケイは冒険者カードを見せてきた。そこにはDランクと書かれていた。シェーレンは違和感を感じたが、今は気にしないことにした。
「あの、シェーレンさん!僕を旅のお供にしていただけませんか?僕、これから行く宛もなくて……。それに憧れの”あの”漆黒の暗殺者と一緒に冒険をしてみたいんです。」
「俺はいいけど、俺たちはこれからフィズドルムに向かっているんだ。キョウ、部外者は連れてくるなとかは言われてないか?」
「特に言われてないよ〜。いいんじゃない?」
「カーレイは?」
「大丈夫です!」
「……!ありがとうございます!」
ケイが仲間に加わった。
「着いたよ〜。ここがドワーフの住む里、フィズドルムだ!」
見たところ、どこの建物もレンガで出来ていて、鍛冶場が多く見られる。
「ごめんなさい、かなり疲れちゃって……。」
ケイが音を上げた。ここまで十数キロを休みなく歩いてきたので当然だ。
「そっかぁ、じゃあ今日泊めようと思ってた宿屋を先に案内するよ、シェーレンたちは先に師匠のところに行くといいよ。師匠はそこの突き当たりを右に行った少し大きめの鍛冶場にいるから。」
「わかった。色々ありがとうな。」
「いやいや。元々師匠の頼み事は、断るとろくなことがないからね。」
そう言ってキョウはへとへとのケイを連れて宿屋の方向へ去っていった。
「行きましょう。」
「そうだな。」
カーレイと共に言われた道の通り進んでいく。来てみると、そこにはワイバーンが2体入るほどのまあまあ大きな鍛冶場に着いた。人影は見えない。
「おーい、誰かいないか?」
呼んでみるも返事はない。ただ、静まった後奥の方から鉄と鉄のぶつかり合う音が聞こえた。なんだろう、なぜか吸い込まれるように音の聞こえる方へ歩いていった。
男が、いた。金髪の男だ。ハンマーで熱された棒を叩き、形を整えている。火花が花火のように綺麗に舞い散り、カンッ、カンッと良い音が鳴り響く。よく見ると、男には右腕がない。男は俺たちに気がついたのか、こちらを向いて顔が見えた。なんとなく、そんな気がしたが、そんなわけないと思い込んでいた。ありえない。でも俺が間違えるわけがない。
「ジェイス……父さん………?」
「よく来たな。」
抑えられない気持ちが込み上げてきた。父さんの胸に飛び込まずにはいられなかった。
「とう、さんっ………!」
父さんは何も言わずに頭を撫でてくれた。人前で泣いたのなんて、いつぶりだろうか。涙は一向に枯れる気配はなかった。
俺が泣き止んだ後、
「ごめんな。今まで会いに行けなくて。」
父さんは俺に謝る。
「あなたが、シェーレンさんの育て親のジェイスさんなんですか?」
「おぉ、よく知ってるな。もしかして、シェーレンからカッコいい俺の話でも聞いたのか?はっはっは。」
「父さん、一体どうして…?」
「聞きたいことはたくさんあるだろう。全て、俺の口から話そう。」
そして父さんは静かに語り始めた。
依頼当日、俺は久しぶりの戦闘に少し緊張していた。あの作戦の決行前のことだ。
奴らがいるであろう建物の近くで待機していた時だった。何者かが俺に精神操作魔法をかけてきたんだ。それが思ったより強く、最初は魔法にかかってしまった。
俺はシェーレンとの戦いで分身を刺したところで、なんとか精神操作魔法を振り切り、意識が戻った。意識が戻ってから、魔法にかかったフリをし続け、しばらく考えたんだ。
……ブラッドレインに、精神操作魔法が得意なやつは、一人もいなかった。恐らくサーヴァント内の裏切り者だろうと考えた俺は、作戦どころか、街自体すらも絶望的なこの状況から、せめて裏切り者の正体を知ろうという結論に至った。俺は魔法にかかったフリのままシェーレンと戦い抜くことを決めた。ちょうど良くシェーレンが死なないようにな。最後に、シェーレンにわざと斬られて、死んだフリをした。シェーレンが迷ってくれたお陰で、右腕だけで済んだな。ありがとう。
シェーレンが、俺を殺したと思い込んで、それでも作戦を遂行しようと、ブラッドレインの連中相手に暴れまわってる最中。これで油断した裏切り者が出てきてくれたら、と思っていた矢先、シェーレンの姿を見て嘲りながら奴は、まんまと姿を現してくれたよ。ブラッドレインと共に俺を見つけて会話していたやつがいた。
その後、俺は俺が奴らに生きているのがバレないようにこのドワーフの里で暮らしていたんだ。そして、お前の噂をここで聞いた。そこのお嬢ちゃんのパーティー会場の依頼にあたると聞いて、他の奴らにも顔を見られないように行ってみたが、姿を見て確信した。息子が生きてるとわかって、本当に、嬉しかったよ。それで、今ダベル辺りにいる聞いてな。面倒くさかっただろうが、来てもらったわけだ。
________________それで、裏切り者の正体がだな。
「そいつは………。」
「そいつは………?」
「なぁ、覚えてるか?その頃に新しく新人が入ったのを。」
「まさか、ケイ!?」
「そう。そのまさかだ。俺も驚いた。新人に化けていたとはな。」
「確かにケイなら、留守を任せていたし、俺に嘘を吹き込むこともできる。」
「なるほど、あの後、シェーレンはケイに助けられたということになっていたのか。」
「待ってください!それより、ケイさん、ここに来てますよ!!」
「なに!?!?」
「あっ!!!そうだ、道中でばったり会って……。」
「まさか、ブラッドレインの引き金か?」
「いや、ブラッドレインは俺が全員殺したはず……それより、早くケイのところへ行かないと!!」
そんな、ケイが裏切り者だったなんて………今は考えてもしょうがない。ケイの目的はわからないが、狙いは必ず俺と父さんのはず…!案内させているキョウも危ないかもしれない!!




