第五章魔王軍の刺客 1
カーレイと旅に出た俺、元漆黒の暗殺者ことシェーレンは今日も気ままに進んでいく。
「そういえば、この旅に目的はあるんですか?」
「………ないな。強いて言うなら、できれば人助けがしたい。」
俺らしくないことを言ってしまった。いつも殺し一本で生計を立ててきた俺が人助け、か。俺は、自分に少し怒りが募った。
「いいんじゃないですか。立派な目的ですよ。」
「ありがとう。」
彼女といると、なんだろう、フワフワする。気持ちが安らぐのだろうか。
「………!くるぞ。」
「え!?」
ドーンと地響きがすると同時に降ってきたのは全身に鎧を着て、剣に盾を持ったゴブリンナイトだ。こんな草原に出る魔物ではないな。
「イイエサヲミツケタゾ!」
「それはどうかな?」
こいつ、意思疎通ができる。魔族か!
「いきましょう!!」
「わかってるさ。」
分身を前に出し、俺は弓を構える。
「『チェイシングアロー・ファイアエンチャント』!」
矢は盾を避けながら急所を狙うが、惜しくも外れてしまう。
続けて、
「『ウインドカッター』!」
彼女も魔法を放つ。しかし、これは盾で防がれてしまった。これは改善の余地ありだな。
次にこの間飛び上がっていた分身は落下による斬撃で攻撃する。これは本来、人間が使ってしまうと、高所から落下する時点で死んでしまうことも多い捨て身の攻撃だが、分身なら安全に使える。
「『フォールデュアルソード』!」
攻撃は、入った、が、鎧が硬すぎるのか思ったよりダメージが通っていない。勝てはするが時間がかかるな、そう考えていたその時、
「やーっ!」
横から軽装備の少年が顔面にパンチを喰らわせる。なぜか、この攻撃は効いたようで、
「グギャァァァアアァァ……。」となり、あっさり倒した。
???一体何が起こったのか理解できなかった。16か17くらいの少年が、硬い鎧の上から殴ってゴブリンナイトを倒したなどと言ったら、誰にも信じてもらえないだろう。
「あっ、大丈夫だった?」
「問題ない、時間がかかりそうだったから助かった。」
「ごめんね、横取りしたいみたいになっちゃって。」
「いいんだ、それよりお前は何者なんだ?」
一番聞きたい質問を投げかける。
「僕?僕はセルファ。薬師をやってるんだ。」
薬師?何かの冗談だろうか。
「いくつか聞いてもいいか?」
「うん。いいよー。」
「まず、ここで何をしていた?」
「僕は商人の護衛依頼でここを通ってたんだー。そしたら君たちを見つけて手助けしようと割って入ったのさ。」
「じゃあ次。なんであんなに強いんだ?薬師じゃ戦えないだろ。」
「それはヒ・ミ・ツ!」
戦闘方法を明かさないタイプか、敵にきたら厄介だな。
「私、会話にも入れてもらえないのでしょうか…。」
なにやらカーレイが落ち込んでいる。どうしたのだろうか。
「俺たちはこれから近くのダベルという街まで行こうとしているのだが。」
「奇遇ですね!僕たちもなんです。一緒に行きますか?」
「そうさせてもらおう。」
ダベルまで、行動を共にすることになった。
一方、魔王城では……
「偵察に向かったゴブリンナイトがやられた。」
ローブを着た魔族が言うと、魔族の女がそれに応える。
「!?誰にだ!やつを育てたのは私だが、今回はかなりの出来だったのだぞ!!くそ、ふざけるんじゃn……」
「黙らんか!!!」
大剣を持った魔族が喝を入れると、一気に周りの空気が重くなる。
「まぁまぁ、いいじゃないですか、私たちの誰かが欠けたわけではありませんし。」
角の2本生えた魔族の男が周りを鎮める。
「……それより、勇者は?」
「もう廃王城まで来ていましたよ、私が一度鉢合わせています。」
「ああ、その時に……。」
女がなにか納得したようにローブの魔族を見る。
「なぜ、戦わなかった。」
「邪魔が入りましてね、まぁ、それもまた一興ですが。しかし、いずれは戦うのです。魔王軍、とりわけこの四天王が負けることはありません。」
ダベルまでは何事もなく到着した。彼の能力が知りたかったが、しょうがない。
「では、ここで。また会うことがありましたら、次は僕の薬、買っていくといいですよ!」
「ああ、そうするよ。じゃあな少年。」
「セルファさん、さようなら〜。」
「!僕はもう大人です!今年で18になるんですからっ!」
変なやつだったな。さて、この先どうするか。
ゴオオォォォォォォォォォォォォ……………。
……!なんだ?今の凄まじいほどの魔力は。こんな街中で出ていい魔力じゃない。
「ごめん、カーレイ。少しここで待っていてくれないか?」
「え?はい。わかりました。」
この街の西側からだな。あの大鐘あたりか。魔力の方へ迷いなく進んでいく。
「この通りだ!」
魔力が人通りの多い通りから反応がある。普通なら一人一人の魔力の違いを見分けるのは難しい。しかし俺には造作もないことだ。
「お前だな。明らかに魔力量がおかしい。魔族だろ。」
「………。」
俺はその男の肩に手を乗せる。
「………そうだよ。」
聞き覚えのある声だった。
「この前はよくも俺に恥をかかせてくれたなああああ!」
「お前、勇者パーティーの魔法使いかよ!!」
魔族の正体はデュードだった。人間の頃より魔力量が上がってる。
きっと魔族になった彼のことを勇者が知ったら絶望するのではないだろうか。
「ちょうどいい。新しい魔法の練習がしたかったんだ!」
まずいな、ここで戦っては街の人に被害が及ぶ。どうしたものか。
その頃、大陸の東に位置するエルフの森では
「貴様、何者だ。」
耳の長い色白な青年が、角の2本生えた魔族に問いかける。
「ああ、そちら側からしたら初めましてですものね。私、魔軍四天王のメラードと申します。」
「魔族か、一人で来るなど舐めた真似をしてくれたものだ。」
「それもまた一興、ですよ。数十秒後にはこのエルフの森もただの血の森と化しているでしょうね。」




