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第四章暗殺者の過去 1

「……………寒い。」


頬を貫くような凍える風。このままでは死んでしまう。なぜこんなことに______。


俺は物心ついたころから、独りだった。両親はいない。食べるものもない。住むところもない。毎日、パンを盗み、警吏に見つからないよう。暗い橋の下で飢えを凌ぐ生活をしていた。


ある冬の日、パンを盗んだのを見られ、露店の店主に痛めつけられてしまった。動く気力もない。毛布など持っているわけもなく、寒さと飢えによって意識が朦朧としてくる。今日はやけに寒い。ここのところ、冬とは思えないほどの気温だったが、今日になって天気は激変した。まるで、俺の心情を表していたかのようだった。大切な人も、もう戻ってこない。悴む手足は、それを痛感させるだけであった。


自分の死を受け入れようとした次の瞬間。


「それでいいのか。」


どこからか、声がした気がする。寒さと空腹で、頭はよく回らないが、俺はその声の何かに惹かれた。不思議とその声に着いて行きたくなった。最後の力を振り絞り、声のする街頭のない、暗い路地裏の方へと歩いていく。


視界がぼんやりとしているせいか、暗がりにいるせいか、顔はよく見えないが、誰か、金髪の男が立っている気がした。


「名前は?」


そう聞いてきた気もした。


疲れ切った俺は地べたに倒れ込む。もう自分に命の猶予はないのだと悟った。


「………名前は?」


彼は助けてくれるのか?美味しいものをたらふく食べさせてくれるのか?良い寝床で寝かせてくれるのか?何一つ確証はなかった。しかし、彼の雰囲気は俺の運命を変えてくれると思わせるほどの凄みがあった。

_________俺は最後の力を振り絞って顔を上げ、


「…………シェーレン」

そう言って意識を失った。


「ふっ、中々じゃないか。すべてを投げ捨てた顔に見えたが、まだ闘志が残って________。」

直前に言っていた言葉は聞き取れなかったが、おれがまぶたを閉じる寸前、立っていた男は笑っていたような気がした。


____________________________________________


「じゃあな、漆黒の暗殺者さん。」

「ああ。迅雷の赤龍。」

俺は仲間と別れ、いつものバーに入る。


「お帰り〜。」

「ただいま。」

「今日の仕事はどうだったか?」

「いつも通りだよ。」


最近はこんな会話ばかりだ。


俺を助けてくれた人物はジェイスと言って、裏の汚れ仕事を請け負っている裏組織『サーヴァント』の幹部だった。俺はジェイス、父さんに殺し屋として育てられ、サーヴァント内で暗殺者一、二を争うほど強くなった。

『漆黒の暗殺者』という二つ名まで付いてしまう程だ。


「それより、次の依頼がきたぞ。」

「またか、最近多いな。」

「今度は俺も同行する。」

「父さんも来るの!?」

「ああ、この依頼はブラッドレインとの全面戦争になるからな。」


『ブラッドレイン』それは、貴族や王家に恨みを持つ市民からなる、ならずもの集団だ。彼らは王家や貴族の依頼を受ける俺らのことを嫌っている。俺等サーヴァントは、王家や貴族側ではない。この街、ひいてはこの国での厄介事を、殺しで解決しようという目的の集団だ。だが、彼等はそこも気に食わないのであろう。これまでは直接争いはしなかったが、明日、かなり激しい計画を立てているとの情報が入り、依頼がやってきた。


「父さん、最後に父さんが依頼を受けたの、何年前だよ。」

「さぁ?よく覚えとらんが、2年くらい前かなぁ。」

「2年!?そんなんで出ちゃって大丈夫?」

「うるせぇ。今回は相手が相手だ。それにうちは元々人手が足りないんだから、しょうがないだろ。」


『ブラッドレイン』はメンバーがほぼ市民なのもあり、数が多く、強い。かなり手強い相手だ。


「明日の午後3時に全団員で王城を襲撃するそうだ。今回の依頼はそれを阻止するだけじゃなく、ブラッドレインの全滅も含まれている。」

「待ってくれ、全団員ってことは幹部もいるわけだろ。それじゃあブラッドレイン全滅どころか、こっちの被害も免れない。」

「いや、俺たちには襲撃時間以外のアドバンテージがある。」


父さんが言うには、情報提供により、『ブラッドレイン』のアジトがわかったらしい。これにより、明日の王城襲撃前にアジトに踏み込み、『ブラッドレイン』を袋叩きにするという作戦のようだ。


「それならいいけど、父さんは本当に大丈夫?」

「舐めるなよ、元ノーネーム内一位だぞ。」


父さんはそう言っているが、どうだか。明日にはわかるか。




そして当日。

作戦通り、襲撃予定時間より5時間早い午前10時にアジトの前についた。


『いいか、奴らに悟られないよう、魔力の揺れも出すなよ。幹部の魔法使いが探知に長けているからな。』

『了解。』

無線からの仲間の忠告を聞き、俺達は準備を整えた。


「いくぞ。」

「ああ、父さん。」


俺らはアジトに乗り込んだ。

だが、中は忽然と静まり返っている。何があったのか。


「いない!?作戦がバレたのか?」

そういえば、さっきから父さんの姿が見えない。どこに行っt


グサッッッ_______________________。


辺りを見渡そうと後ろを振り返った瞬間、何者かに背中から刺されてしまった。これは罠だったのか?メンバーのみんなはどうした?こいつは誰だ?色々な思考が頭を巡る中、振り返り、刺してきたやつの顔を見て、俺はつい言葉を失ってしまった。ありえない状況に、脳が困惑し、フリーズする。声を絞り出し、彼の名前を呼んだ。




「______とう……さ…ん………?」

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