第一章勇者との出会い 2(終)
今回の依頼は、前回の盗賊団狩りで取り逃がした親分がいて、暗殺組合諸共復讐しようとしているらしい。どうやら、その親分はここにいるようだ。感覚的に、すぐ終わりそうに思える。
「………!何者!?」
「やぁ、一昨日ぶり。お前を殺しにきた。」
残党の親分の剣と分身の双剣がぶつかる。親分というだけあって、意外にも強かった。そこでふと、勇者の顔がよぎる。彼はあの後、どうなったのだろう。本人に問い詰めたのだろうか?優しい彼なら疑わずに聞き、返り討ちにでも遭うのではないか?最悪の事態が頭を駆け巡る。くそ、だめだ。あのお人好し勇者さんの優しさが俺にも移ってきている。俺は暗殺者だ、そんな俺に得のないことを……………。
いや、俺は何をそんなに迷っているんだ?助けてもいいだろ。
俺は暗殺者である前に、俺じゃないか!
「すまん、用事ができた。ここからは手加減はできない。」
「なんだと!?舐めるなよ小僧!」
本体である俺は腰に巻いた青色のサーベルを取り出し、流れるように親分を切り刻んだ。
「行くか。」
建物の上を駆け回り、勇者を探す。そして、路地裏に謎の結界が張られているのが見えた。どうやらあれは内からは壊れにくい構造になっている。閉じ込めるためなのだろう。俺はその結界の外から内の様子を窺ってみた。そこには勇者と、恐らく勇者パーティーの魔法使い、デュードと思われる人物が戦っていた。この狭い路地裏では戦いづらいようで、勇者が押されている。そこでデュードが話し出す。
「そろそろ終わりにしてやる!」
デュードは空に浮き、杖を天にかざす。火の玉が出てきて、次第に大きくなり、超高密度の魔力が込められていることがわかった。
「デュード……。」
勇者はまだ裏切りに信じられないのか、そう呟く。
「終わりだッ!」「『エンドオブフレイムバースト』!!!」
勇者は遂に目を瞑ってしまった。しょうがない。行くか。
_________パキーン。結界の割れる音が路地裏でこだまする。デュードは即座にこちらへ向き返り、
「誰だ!!」
と言う。
「名乗るほどの名は持ち合わせてないな!」
後ろから差す月光が、俺の背中を押してくれたような気がした。俺は分身を出し、戦闘体制に入る。
「同じやつが二人……?さてはお前、例の暗殺者か!」
「ご明察。」
「なぜ勇者を殺さなかった?そしてなぜ俺に立ちはだかる?」
「理由は簡単。面白そうだったから。」
「『面白そう』だと?ふざけるな!」
そう言うとデュードは先程まで勇者に向けていた火球を俺に向かって放ってきた。
「舐めてもらっちゃ困るな。」
俺は親分戦でしまうのを忘れていた青のサーベルを手に屋上から自由落下し、壁を蹴って火球に一直線で飛び込む。
「『トラジェクトリーオブウォーター』!!」水を纏ったサーベルで火球に剣戟を入れる。そして、剣戟で描いた軌跡が水が弾けるように爆発を起こし、火球を相殺した。
俺が持っているこの青いサーベル、『ジェネラルマリン』は世界に10本しかない魔剣の一つだ。このサーベルは昔、世界を牛耳る程の大海賊の船長が持っていたものだ。その海賊は、財宝を求め、この星の果てまで行った。しかし、そこはあまりに寒く、海賊は全滅。このサーベルは何百年もかけて海の底で凍り、魔剣になったようだ。皮肉だよな、財宝を追い求めていた海賊のサーベルが財宝になるなんて。そして現在、凍っていた部分は溶け、水の魔剣となっている。
「まずい、ここは一旦ひk…」
「逃がさねぇよ。」
とんずらしようとしているデュードの背後には既に俺の分身が近付いていた!
「『影狼・牙突爪』!!」
「ぐああぁぁぁぁ!!!」
デュードは地面に倒れ込む。俺は呆然とする勇者の下に行き、
「こいつ、殺せるけどどうする?」
と尋ねると、
「いや、殺さなくていい。どうせ死刑になってしまうし。」
と返してきた。
パーティーメンバーとはいえ、裏切り者だぞ。
「やっぱりお人好しの勇者さんだな。」
「助けてくれて、ありがとう。」
「面白そうだったから来ただけだ。お前のためじゃない。」
俺はそう言い、建物の屋上まで飛んでいく。
「そういえば、君の名前は?」
勇者が大声で聞いてきた。
俺は微笑んで
「……シェーレン。漆黒の暗殺者シェーレンだ!」
そう言って、月光の差す方へ走る。
「アテリア!僕の名前はアテリアだ!!」さっきより大きな声で名前を言ってきた。覚えといてやるか。




