表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/29

第二十五話



「カ……ズチ?」


命辛々で俺が声を上げると、カズチが空中で微笑む。


「まぁ……歩美は以前もそうでしたが、頑丈……というよりは生命力が高いのですね。私よりもか弱そうな儚い体なのに」


「……んなこと……言ってる場合か……」


「ええ。貴方を安心させるための言葉です──それはそうと……」


突如。彼女の顔から笑顔が消え去り、背後で轟く雷鳴が一層力強さを増した。

まるでそれは、小さい頃に親から聞いた『カミナリ様の怒り』をそのまま映像化したような感じがした。


「プロトスさん……ですよね? 貴方に私は一度敗北していますので、あまり強く言っても、貴方には負け犬の遠吠えにしか聞こえないでしょうね。ですが──私には私なりの……意志があります」


穏やかそうに聞こえるが、はっきりとした怒りの宿った声音。


「私はナズマの姉であり……歩美は私の大切な友達です……目の前で傷つけられて……見捨てるとでも?」


白く光る雷を纏い、彼女はニコッと微笑んだ。

それを一部始終聞いていたプロトスが鼻で笑う。


「ハッ。おもしれぇ。相手になってやろうじゃねぇか」


すると、俺の肉体が突然重力を失った。

プロトスにまるで使い終わった紙屑のように投げ捨てられたのだ。

だが、空中に投げ出された浮遊感も束の間。

隣の建物からの轟音と共に、ナズマが俺の体を抱きとめた。

彼の体も傷だらけでボロボロだった。

だけど何故だか安心感があり、思わず笑う。


「……本日二度目か……サンキュウ」


「あぁ。歩美さん……俺が不甲斐ないばかりにすまない」


「安心しろい……俺の方が何倍も情けねぇよ」


ナズマが地面に着地すると、空いてる建物の中に避難する。

俺を地面にゆっくり降ろす。


「歩美さん……すまないが、俺は姉上に加勢しなくてはならない。少しの間耐えていてくれないか?」


「……ハッ。満身創痍な人間に何言ってんだか……まぁでも大丈夫だ。なんかどうせ体治る気もするし」


俺はナズマに苦し紛れに笑いかける。

それに対して彼は何とも言えない顔になってしまうが、すぐに俺に笑いかける。


「……歩美さんは強い人だ。すぐに戻る」


そう言って彼は俺に背を向けると、バチンという音と共に姿を消した。

俺は体の痛みを噛み締めながら、ゆっくりと目を閉じた。

先程の"諦め"では無く"生きる"と願いながら──。


正直に白状するなら、私の体は恐怖で子羊のように震えていた。

地面に足をつけていないから分からないだけで、本当なら今すぐに逃げ出したいくらいには怖くてたまらない。

相手が不気味で強敵だからな訳でも、かつて敗れたからでも無い。

もっと単純な理由だ。

──死ぬのが、怖い。

私は死の淵に立たされたことなんて何度もある。

だけど、死という概念はいつ何度味わっても慣れることがない。

慣れるなんてできる訳がない、人間は死ねば終わってしまうのだから。

それに私には……大切なあゆみと、ナズマがいる。

もっと……二人といたい。

私が挫けそうになった時──。

私の背後で雷鳴が轟いた。

振り返ったそこに居たのは──見慣れた男の姿。


「姉上……待たせました」


「…………いえ。お気になさらず」


「……姉上。ご無理はなさらぬように」


彼の優しい言葉に、私は思わず微笑む。

確かに私はまだプロトスに負わされた傷が癒えきってはいない。

だけど、彼と共に戦い、敗北した記憶は無い。

──私達の全力・・の前では。


「……ナズマ。"合わせますよ"」


「……はい! 姉上!」


ナズマが力強く返答する。

そして私達は、手を繋ぐ。

刹那──魔力を全力で解き放つ。

自分の中の最大出力の魔力を媒体とし、自身の肉体から白い雷を呼び出す。

それに呼応するかのように、ナズマも青い雷を宿す。

繋がれた手の平の痺れから、その威力が伺える。

だが、この痺れが……今は非常に暖かく頼もしい。


「……相変わらず頼もしいですね……ナズマ」


「……姉上のためですから」


二人で共鳴し魔力を高め合う中、プロトスがこちらを驚愕の表情で見つめる。


「ぷ、プロトスさん!」


「下がってろティア。死ぬぞ」


微かに恍惚とした顔で、プロトスはティアを遠ざけようとする。

ティアが躊躇いながらも静かに頷く。

私達はそれを気にせず、ナズマの魔力を受け止め続ける。

──刹那。高電圧の雷の砲弾が形成され、放たれる。


「「"双電砲デュアル・サンダー"!!」」


雷の音よりも速く、その閃光はプロトスに向けて放たれる。

閃光は過剰なまでの輝きを放ち、周囲にいる生き物の目を潰した。

プロトスへと砲弾が接触した直後、雷鳴が音を発し、辺りに地響きが鳴り響く。

放たれた建物の上層は砕け、周りの建物にも爪痕を残す。

やがて光と振動が収まり、辺りには砂煙が舞い上がっている。

私は力が抜けるのと同時に、傷跡に痛みを感じバランスを崩してしまう。

それをすぐさまナズマに受け止められた。

安心からか、思わず頬を綻ばせてしまう。


「大丈夫ですか!? 姉上!」


「……大丈夫ですよ……少々無理しすぎたのかもしれませんが」


「大丈夫じゃないじゃないですか! 」


ナズマの本気で焦った顔に申し訳なさもありつつ、安心させるために微笑む。


「このくらい……大丈夫です。それよりも速く歩美のとこ……ろ……へ」


そんな強がりの微笑も、目の前の光景を見て消え去った。

砂煙が収まりかけた時、奥に微かに人の影が見えた。

ティアのものかと思ったが、よく見ると"身体と思しきものが半壊している"。

二人の雷撃を正面から受けたのは彼女では無くプロトスだ。

そもそもあの攻撃を受けた人間が体の形を保てる訳が無い。

やがて砂煙が完全に消え去り、影の正体が姿を見せる。

ナズマが私を抱えながら信じられない様な口調で言う。


「……奴は……怪物か?」


砂煙から現れたのは、右半身に風穴が空き、肉体が血に染ったプロトスだ。

自分の目を疑った。

彼は通常の人間なら骨も残らぬであろう一撃で、肉体が半壊しながらも生存して何なら立っている。

息がきれながらも我々を狩ろうとするその男は、最早人間とは思えない。

プロトスは血反吐を吐きながら短く笑う。


「ハッ……! 流石にこればっかりは肝が冷えたぜ……雷に打たれて体が冷えるなんてなぁ……笑えるぜ」


息も絶え絶えなその軽口には、流石に余裕さは見られない。

だが、こちらを仕留められる力は残っていると見える。

もう無理かと思ったその時。

背後に何者かの気配を感じ、振り返る。

足に大雑把に魔力を込め、この上層部まで飛び上がってきた、刀を手に持った華奢な女性。

窮地に駆けつけた英雄のような登場をしたのは、先程まで満身創痍になっていた歩美の姿だった。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ