第5話 勝たせてあげますよ
ナナの実家の宿で目覚める。
「海老名さん、起きてますか?朝食の用意ができていますよ。」
ドアの外でナナが呼んでいる。階段を降りて食卓に向かう。食卓にはじゃがいもが入ったスープが置いてあった。
海老名がスープを平らげると、シロナさんが顔色を窺うようにして話しかけてくる。
「今日も泊まっていかれますか?」
「まだ他に行くアテもないので、とりあえず今晩もお世話になって良いですか?」
「もちろんです!それで、あの、お代は1日ごとにいただいて良いですか?」
「問題ないです。いくらですか?」
「1万エニーです。」
勝ち額の50万の束から札を1枚取り出す。
「海老名さん、準備ができたら村を案内しますね」
ナナに頼んでいたことを思い出す。
ナナに案内されて村を歩き回る。村の大部分は農地で、小さな商店街や工場もある。ナナが「貧しい村」と言っていたのは本当のようだ。
前方に大きいレンガ作りの住居が見える。広い庭の木々はよく手入れされている。
「あの豪華な家は?」
「あそこはマキシマムエンターテイメントの社員の邸宅です。」
「企業の名前?儲かってる会社なんだね」
「昨日海老名さんがいらっしゃったスロット場の運営会社ですよ」
悪寒が走った。
(日本のパチンコ屋は令和の時代、経営が厳しくて倒産が相次いでいるのに、この世界運営元はどれだけ客からぶっこ抜いてるんだ。)
「そんな運営をしてて、客は離れないの?」
「わからないですけど、お父さん達はしょっちゅうスロット場に行っています。勝って帰ってくるのはホントにたまにしかないのに。」
(おいおい。バーゾロさんもパチンカスかよ)
「ナナ、今日はありがとう。この村に興味を持てたよ。そうそう。これ、約束の案内代ね!」
ナナに1万エニーを差し出す。
「こんなにいただいても良いんですか、、、?でも、ありがとうございます。」
宿に戻ると、シロナさんとバーゾロさんは宿の隣の小さな畑で作業をしていた。
「バーゾロさん、この村のスロット場について教えてください」
「あぁ。君は昨日大勝ちしたもんな。あんなの、ごく稀にしかないことだ。ここでやめにして、もう行かないほうが良いよ。」
「勝てないってことですか?」
「そうだよ。この村の全員、負けてばっかりさ。困ったもんだよ。」
「失礼ですが、そんな状況なのにみなさんスロットをやめないんですか?」
「厳しいことを言うなぁ。この村には娯楽がなくてさ、最初は楽しみを求めて打ちに行くのよ。そしたらさ、なぜかみんな一回でハマっちまうんだ。そのうち借金をして打つようになって。しまいには、一発当てて借金を返すことを夢見て打っちゃって、、みたいな?」
(バーゾロさんも俺と同じくらいカスだな。娘に物乞いされてる点で言うと、俺以上かもしれない。)
少し考えて、海老名は話を切り出す。
「バーゾロさん、今から俺と一緒に打ちに行きませんか?試したいことがあるんです。金は俺が出します。勝ったら勝ち分を山分けしましょう。」
「ん?よくわからないけど、そんなチャンスをくれるってんならもちろん打ちに行くよ!」
二人でガラス張りのスロット場に向かう。
今日も大盛況で、空いている台は少ししかない。かろうじて2台並びで空いている台を見つた。
台に札を入れると、また機械の声が聞こえる。
「設定はいくつにしますか?」
「もちろん6だ。」
海老名はささやく。
「バーゾロさん、この台を打ってください。」




