第23話 交渉
「まず、全員でいくら勝ったのか計算しましょう」
海老名は落ち着いた口調で話す。
「見てくれ。俺の8500枚!」
短髪の男がテーブルに叩きつけたチケットには8500枚と印字されていた。
「俺は4000枚だった」
細身の男もチケットをテーブルに置く。
仲間たちは次々と持ちメダルの数が記されたチケットをテーブルに置いていく。ほとんど全員が4000枚以上出している。
「みなさん、本当にすごい」
海老名は思わず声を漏らした。
全員の枚数を足し合わせると約20万枚になった。
「うおおお!これを俺たちで山分けか。八重歯のネーチャンと赤髪のニーチャンも入れて30人で山分けすると、、一人6000枚以上!スゲーよ!」
一人がこう言うと、仲間たちも騒ぎ出した。
「すげえ。1枚200エニーだから、一人120万エニー!?」
「やべーな。キャバクラ行っちゃおうかな」
海老名は黙っている。ウチエの弟を救うために5万枚が必要なのだ。
「すみません、スロットを打つ前に、僕は、僕たちにもお金が必要な理由があると言いました。そして気持ちばかりのお礼が欲しいと」
仲間たちは黙って海老名の方を見ている。
「皆さん、景品コーナーのパネルを見ましたか?あの中の一人が、このウチエさんの弟なんです」
「マジかよ」
仲間から声が漏れた。
「彼女の弟と交換するために必要なメダルが5万枚です。僕たちはすでに1万6000枚持っています。僕たちの勝ち分から、3万4000枚くれませんか?」
仲間たちは黙っている。
海老名は唾を飲み込んだ。
これだけメダルを出した後だ。後日またスロット場に行こうものなら小太りに徹底的にマークされ、すぐに冷遇モードに入れられるだろう。
「まあ、そこのネエちゃんがたんまりメダルを出したんだもんな。3万4000枚、持っていってくれよ。みんな、良いよな?」
沈黙を破ったのは短髪の男だった。
「おう、、!元々アンタたちがいなければ俺たちは勝てなかったんだ」
「そうだな。好きにしてくれ!」
「弟を助けてやってくれよ!」
海老名とウチエの顔は涙で濡れていた。
「皆さん、本当にありがとうございます。1杯飲んで、メダルを交換しに行きましょう!」
ビールを飲み干した一行は再度スロット場に向かった。仲間たちはチケットをエニーに交換する中、海老名とウチエはメダル5万枚分のチケットを持ってカウンターに向かう。
「これで弟を返すっチェ」
チケットを受け取った店員は戸惑った様子だった。カウンターの奥へ行き、しばらく戻ってこない。
20分ほど待たされた後で、店員がウチエの弟を連れて戻ってきた。表情がほとんどなく、顔が痩せこけていた。ウチエの顔を見た瞬間、光が戻ったようだった。




