第19話 時間稼ぎ
数名の仲間が入場した後、海老名も何食わぬ顔で入場する。急ぎ足で彼らの台に札を入れると、台が尋ねてくる。
「設定はいくつにしますか?」
(6だって。いいから早くしてくれ)
怪しまれないように、台を選んでいるふりをしながら仲間の台に札を入れて設定を6にしていく。他の仲間たちもゾロゾロと入場する。
(日本のパチンコ屋でこんなことをやったら軍団行為で出禁になるよな)
小学生の時に、宿題を答え丸写しで提出した時に味わったような胃の痛みを覚える。
ギリギリ走っていない程度の早足で全員の台を周り、なんとか赤髪と八重歯以外の仲間の設定を6にした。小太り店員に警戒されないよう、全員少し離れて打っている。
安心したところで海老名も打ち始める。ウチエはスロット場の端の方で打っている。
10分ほど経つと、仲間のうちの一人の台が当たった。それに釣られるように、他の仲間の台もどんどん光り出す。
(よし、順調だ。あとはあいつがいつ登場するか、、)
開始から40分が経ち、仲間たちの後ろにはドル箱の山ができ始めていた。その時、あの小太りの店員が列に端に見えた。
(まずい、来てしまった)
「すみません、、パパとはぐれてしまって困ってるんです。助けてくれないですか?」
小太りの背後から八重歯が話しかける。
「チッ」
不機嫌そうに小太りが振り向く。
「お連れ様と離れてしまったんですね。まあ、そこらへんでスロットを打っているんでしょうよ。一列ずつ探してはどうですか?」
そう言いながら、小太りの視線は八重歯に釘付けになっていた。
「私、こういうところに来るの、初めてで。なんだか怖そうな人も多いですし、一人だとすごく不安なんです。一緒にパパを探してくれないですか?」
潤んだ上目遣いを小太りに向ける。
「まあ、、仕事中ですけど、少しならお手伝いしますよ」
「ありがとうございます。パパとはぐれてしまったのはあっちで」
八重歯は小太りを仲間たちと逆方向に案内する。
(すげーな。役者かよ)
八重歯と小太りはスロット場を歩き回る。広い場内を、人を避けながら歩いているため時間がかかる。途中、すれ違う男に肩がぶつかった小太りは大きな舌打ちをした。
「パパ、見当たらないです。私を置いてどこかに行ってしまったのでしょうか、、」
「きっと大丈夫ですよ」
15分ほど歩いた時、小太りに焦りが見え始める。
「悪いですけど、私はこのスロット場のマスターでしてね、何か問題が起きていないかの点検をしなくてはならないんですよ。あなたのことはすごく心配なんですけどね、これ以上はご一緒できません。でも、他の店員に伝えるので、安心してくださいね」
八重歯は冷たい目で小太りを見る。
(ここが潮時ね)
「あ!パパ見つかりました!」
遠くを指差す。
「マスターさん、ありがとうございました!」




