第18話 談合
海老名たち一行は酒場に向かう。噂を聞きつけた連中も加わり、酒場には30人くらいのスロット敗北者たちが集まった。
「まずは飲みましょう。話はそれからです。ここは僕に奢らせてください」
「すみません、全員にビールを」
彼らはまだ海老名に対して警戒しているようで、黙っている。
全員の元にビールが届くと、海老名は雄弁に話し出す。
「皆さん、散々負けていますよね?僕もたくさん負けたからわかります。悔しいですよね。どうにかして取り戻したいですよね。でも、取り戻そうとしてさらに負けて、もっと絶望していますよね。僕もわかります」
全員、黙って海老名を見ている。
「でも今回は安心してください。今まで、勝ち確定でスロットを打ったことなんてなかったと思います。でも今回は違います。僕が絶対勝たせられます。あのスロット場は僕たちから散々搾り取ってきたんです。人間を景品にするような、最低なスロット場です。僕たちの金を取り戻しましょう!もう一度言います。絶対に勝たせられるんです。あのスロット場に一泡吹かせてやりましょう。」
考える前に言葉が勝手に出てくる。脳を介さず、口が勝手に必要な言葉を発しているようだ。自分の能力を使って勝つことに対する恐れや後ろめたさは、ウチエを救いたいという目的を前にして、気付かないうちに消え去っていた。
海老名は唾を飲む。
「僕と一緒に戦ってくれる人は続いてください」
「乾杯!」
「うおおおおおっ!!!!!乾杯!!!!!」
彼らが仲間に加わった瞬間だった。
全員、力強くビールを飲み干す。
「ありがとうございます!では、僕の作戦を聞いてください。僕には秘密の力があります。僕が最初にお金を入れればその台では絶対に勝てます。もし負けたら、負け分は全て僕が負担します。絶対勝てる理由は説明できないんですけど、さっきの僕たちの勝ち、見ましたよね?また同じことを起こせます。でも邪魔者がいるんです。あのスロット場の小太りの店員です。あいつのことを足止めすることさえできれば、ここにいる全員で勝つことができます」
「それなら俺に任せてくれ!」
赤髪で細身の男が名乗り出る。
「私にも手伝わせてくれる?」
今まで見た中で一番綺麗な二重で、八重歯の女も名乗り出る。
(おいおい、美人すぎるだろ。って、こんなことを考えている場合じゃない、、)
「すみません、お願いしても良いですか?できるだけ、あいつを足止めしてください。皆さん、勝った額は全員で山分けしましょう。もちろん、赤髪のお兄さんも、八重歯のお姉さんも混ぜて山分けです」
「おいおい、なんだその呼び方は」
赤髪が笑う。
一行は力強い足取りでスロット場に向かう。
「全員で入ったら怪しまれるので小分けに入りましょう。入ったら僕がお金を入れるのを待っていてください」




