第12話 キヨ・ウチエ
「10万エニー、一生のお願いだっチェ!」
海老名より少し若く見える女がサーカス小屋のようなテントの中で懇願している。
(レグボ村にもこんな小屋があったな。この世界共通の金貸し屋なのか?)
「金の懇願をする前に、さっき貸した20万エニーを返すんだね!利子はトイチだよ!」
小屋の主人である老婆が答える。
(ヒエー。この街も暴利だなー。)
「うう。このままだと弟が買われちゃうっチェ」
不穏なことが聞こえたため、海老名は思わず声をかけた。
「おいおい。弟が買われるって、どういうことだ?」
「弟がスロット場の景品にされてるっチェ。早く助けに行かないと。スロットのコツはわかったからあと10万エニー借りられれば勝てるっチェー」
(おいおい。コツって、、オカルトパチンカスなのか?)
「コツって具体的にどんなものなんだ?」
「台がキラキラしてる時に右手に力を込めてレバーを叩く。そしたら当たるっチェ!」
(こいつ、、、本物のオカルトパチンカスだ。この世界にもいるんだ)
「もう少し話を聞かせてくれ。もしかしたら力になれるかもしれないから」
どうしようもないと思っていたはずなのに、口からはその反対の言葉が出てきた。
「うう、ありがとうっチェ」
二人は近くの酒場に移動する。
中は若い男女で溢れていて活気がある。
(レグボ村の外だったら酒はあるんだな)
「私の名前はキヨ・ウチエ。この近くの村で羊飼いをしてるっチェ。両親と弟と幸せに暮らしてたのに、先週突然弟が誘拐されたっチェ」
「誘拐!?」
(そんな物騒な世界なのか)
「それで、誘拐された子はこの街で売られるって噂を前から聞いてたから、弟を探しに来たっチェ。街の人に聞きながら探したら、、弟はスロット場の景品にされてたっチェ」
「お金を払うから弟を返してほしいって、、スロット場の人に言っても、メダルじゃないと弟と交換してくれないって。1枚200エニーのメダルが5万枚必要だって。だからあそこでお金を借りてスロットをやって、、、ダメだったっチェ」
言葉が出てこない。先ほどまでオカルトパチンカスだとバカにしていた自分を殴りたくなる。
「俺さ、今100万エニー持ってるよ。俺の金で一緒に打ちに行かないか?勝ったら山分けしよう!」
自分の力を正しく使える場が見つかったような気がした。
「本当かっ?良いのかっ?ありがたいっチェ!」
ウチエの顔が明るくなる。
「そういえばお兄さんの名前はなんていうっチェ?」
「俺は海老名だ」




