第11話 出発
翌日、スロット場で宴会が開かれた。スロット台は全て電源が落とされ、村の住民で満席になっていた。場内放送ではホールコンが挨拶をした。
「村のお客様。明日からは我々と共に搾取する側に周りましょう!」
「おおおおー!」
歓声が上がる。
ここにいる人のほとんどは、ホールコンの真意をわかっていないはずだ。ただ、これから何か新しいことが起きるのではないか、仕事とスロットだけの単調な日々を変えてくれるのではないかという期待は、場内を盛り上がらせるのに十分だった。
今まで自分たちから搾取をしてきたホールコンを、表立って非難する者もいなかった。むしろ、雲の上の存在だった彼がこうして自分たちの前に立っていることを嬉しく思っているようだった。
この日、ほとんどの村人にとっては数年ぶりの酒が振る舞われた。
バックヤードに戻ってきたホールコンに海老名が話しかける。
「村の人たち、楽しそうだな」
「ああ。」
ホールコンは微笑む。
「あんたならスロットなしでも村をまとめられると思うよ」
宴会の後、海老名は宿に戻った。
「明日でこの宿を出ようと思います」
「この後はどこへ行かれるんですか?」
ナナが尋ねる。
「ベガスラシティを目指してみようと思うんだ。そこに俺と同郷の者がいるみたいだから」
ナナは不思議そうな顔をしていたが、それ以上は尋ねなかった。
翌朝、宿泊費の1万エニーを支払い、ナナ、バーゾロさん、シロナさんにあいさつをする。
「短い間だったけどありがとうな。あんたのおかげで、これからこの村が変わっていく気がするよ」
バーゾロさんが続ける。
「ベガスラシティまではけっこう距離があるが、歩くのか?割高だが、馬車で行くのが良いんじゃないか?」
村の外れに、この村と近隣の街を繋ぐ馬車があるようだ。しばらく歩くと、馬車の停留所が見つかった。
「ベガスラシティまで行きたいんだ。」
「それならケイ-イヒンタウンまでご案内します。そこからは都会なのでタクシーでも、バスでも使ってください」
わざとらしい笑顔で御者が答える。
(この世界にもタクシーやバスがあるのか。この村の文明は相当遅れてる?)
馬車に乗り込み、景色が過ぎてゆくのをぼんやりを眺めていた。自然ばかりだった風景は段々と人気を帯びてきた。いくつかの小さな街を通過した頃、馬車が止まった。
「着きました。ケイ-イヒンタウンです。お代は10万エニーです!」
「高!バーゾロさんが言ってた通りだ」
「あのレグボ村を出入りするのは金持ちの旅行客くらいですからね。しっかりと稼がせていただいています」
(あの村、レグボ村っていうのか)
街に入ると、見覚えのあるサーカス小屋のようなテントがあった。入り口から声が聞こえる。
「一生のお願いっチェ!あと10万エニーだけ貸して!」
(これがデジャブというやつか)




