第10話 虚無
ホールコンの過去を知った海老名はしばらく黙る。
「なあ、今のあんたって、虚無を感じてるんじゃないか?」
「虚無だと?」
ホールコンは考え込む。
「俺さ、この世界に来てスロットで勝ちまくってさ、最初は嬉しかったんだけど、段々と満足しなくなってさ、あんたはどうなんだ?」
「、、、、」
ホールコンは黙っている。
「それでさ、自分でもその理由がわからなかったんだ。今までだったらスロットで勝てば喜びで舞い上がっていたのにさ。それで、さっきあんたに銃を突きつけられながら打った時あっただろ。あそこで買った時はすっげー嬉しかった。」
海老名は続ける。
「結局さ、ズルいことして勝ち確になってもつまらないんじゃないかな。ヒリつきとかさ、達成感とかが失われちゃうんじゃないかな。」
黙り込んでいたホールコンが突然口を開く。
「一緒に村を歩いてくれないか?」
スロット場の外で向かう二人の背中を、黒服たちは不安そうに見守る。
ホールコンは海老名を商店街に案内する。
「この村は元々資源に乏しく、繁栄が望めなかった。資源もなく僻地にあるので侵略を受ける心配はなかったが、そんな平和が息苦しかった。」
商店街には八百屋、惣菜屋、古びた服屋がある。
「お前よりも若かった頃だ。俺は村を飛び出て色々な街へ行った。仕事もしてみたが続かなかった。そこでハマったのがギャンブルだった。」
(なんだ、こいつもパチンカスなのか。)
海老名は親近感を覚えた。
「ギャンブルで一発当てて、村で何かビジネスを始めたかった。」
マキシマムエンターテイメントの社員の住宅が立ち並ぶ通りに出た。どれも村の景観の中で異彩を放つ、近代的で豪勢な建造物だ。
「最後に行き着いたのがギャンブルの聖地ベガスラシティで、さっき行ったリセという男に出会ったわけだ。」
目の前の住宅を眺めながら海老名は尋ねた。
「なあ、ギャンブルをしている時も、大勝ちしたらこの村に戻ってきたいって考えてたんだな。あんた、この村が大好きなんじゃないのか?大好きな村に自分のすごいところを見せたかったんじゃないのか?」
沈黙の後、ホールコンは小さく笑った。
「パチンカスのお前に気付かされるとはな。」
「あんたも十分パチンカスだよ!」
ホールコンは今度は大きく笑った後、話し始める。
「実は以前から考えていたことがあるんだ。マキシマムエンターテイメントで築いた財産を使って村の農業に投資をする。都市の近代機械を揃えて大規模な農業改革を行う。幸い、この村は土壌だけには恵まれているんだ。」
海老名は驚きながら話す。
「確かに、作物を街に卸せば村も発展するかもな。で、あんたのところのスロット場はどうするんだ?閉店するのか?」
「いいや、観光客から金を搾り取るのに使う。村の人間にはサクラとして働いてもらうんだ」
「あんたってやつは、、」




