貴音視点
私、花円貴音はこのハナマルという苗字で小さな頃から男子にからかわれていた。
「やーいハナマル!ハナマルのくせにテストは花丸じゃないんだー!」
なーんて、バカみたいなからかわれ方をされていた私は馬鹿みたいに毎回泣いていた。
苗字がハナマルなのにテストが花丸じゃないとからかわれるのが嫌で、必死に100点を取り続けた。
100点を取り続けていると、からかうなんて低俗な真似をしない賢い男子たちからも反感を買うようになった。
最初は女の子たちが庇ってくれていたが、仲のいい幼なじみが美少年に成長するにつれて、女子たちも私から距離を置くようになった。
そしてある日、決定的なことが起こる。
「おれ、貴音のこと好きなんだ」
なんと、私の事をずっとハナマルとからかっていた学年のガキ大将に告白されたのだ!
恋愛はよく分からなかったのだが、とにかく嫌われていると思っていた相手がまさか私に好意的な感情を抱いていたとは。
「わたし、嫌われてると思ってた。よかった、嬉しい」
よかった、友達が1人増えるかもしれない。
そしたら最近幼なじみの親友に対して抱いていたこの寂しさも紛れるかも。
早速報告したい、どうせ今日も一緒に帰るだろうからその時に言おう!
「嫌ってなんかねえよ。じゃあ今日一緒に帰るぞ」
と、ガキ大将が手を握ろうとしてくる。
なんだか私は繋ぎたくなくて、思わず手を振り払って言ってしまった。
「帰り道は、友達と帰るって決めてるの!」
「はあ?おれら両思いなんだろ?なんで別なやつと帰るんだよ」
「両思い?よく分からないけど、友達といるのが一番楽しいもん!」
このガキ大将と友達になれそうと言っても、何年間も親友をやってきた幼なじみの方が優先度は高いのだ。
するとガキ大将がワナワナと怒り始めた。
「おまえ、さっき嬉しいって……俺をバカにしたのか!?ハナマルのくせに!バカ丸のくせに!」
「なっ、バカ丸!?さっき私のこと好きって言ってたのに!」
「は、はぁ!?好き、なんてそんなの嘘に決まってんだろ!まんまと騙されて、そんなのも分からないなんてやっぱり馬鹿じゃねえか!」
私は馬鹿にされた悔しさと嘘の好きを信じた恥ずかしさで大泣きして、すぐに先生が駆けつけてガキ大将は超怒られた。
その日から私の中で、男とは口が悪く嘘をつく低俗な存在として大嫌いになった。
そしてますます例の幼なじみ以外友達がいなくなり、そんな幼なじみすらも自分のくだらない嘘がきっかけで疎遠になってしまった。
そして高校1年生花円貴音、エリートぼっちの爆誕である。
元々の引っ込み思案に加えて多大な罪悪感のせいで、大人しいを超えて根暗と言えるほど静かな人間になってしまった。
根暗、ぼっち、班決めでは必ず余る、連絡先は家族だけ、それが私だ。
というかそもそも私の親はかなり厳しく、一応携帯電話は持っているが家に帰ると親が預かるルールなのであえて誰とも交換していないだけだ。
そう、わざとだ。
私は孤高のエリートぼっちなのだ。
友達なんて、恋人なんて、青春なんて馬鹿らしい。
100点を取り続けないといけないんだからそんなくだらない事に時間を割いていられないんだ。
私は窓の外を見ながら退屈な数学の授業を聞き流した。




