第11話 ホワイトデー当日
最終話は23時に投稿します!
ホワイトデー当日。この日は雲一つない、よく晴れた日であった。だが、もう日も沈もうとしている。そんな中、俺は全力疾走していた。
「こんなハズじゃ…なかったんだけどな……」
この日、彼女にホワイトデーのプレゼントとして渡す物を予約して置いたのだが、お店の発注ミスで商品が届いたのが夕方になってしまったのだ。
彼女が誘われた合コンは18時集合と聞いているが、彼女の家から歩いて行けない事も無い。時間にはキッチリしている彼女の事だから、早めに家を出る可能性が高い。
本当は魔術を使って空を飛んでいけばすぐ着くのだが、中級以上の魔術は前もって国へ申請しないと街で使う事は出来ない。飛行系の魔術はどれも中級以上である。
「日頃の運動不足が悔やまれるな…やばい、もう17時か!間に合ってくれ…!」
息切れを起こしながら、全力疾走していると彼女の家である治療院が見えてきた。すると、彼女が丁度治療院から出てくる所だった。
「あ、アンジュ先生…!!待って!!」
俺の声だと分かったのか、アンジュ先生は俺の方へ振り返り、
「リム先生ではありませんか!どうされました?ま、まさか怪我です?それとも病気?」
真っ青な顔をして駆け寄ってきた。今日の彼女は金のボタンがアクセントの紺のコートと黒いショートブーツといったコーディネートだ。シンプルだが、上品でよく似合っている。
そんな事を考えている間もアンジュ先生は身体をペタペタ触ってくる…えっ、そこは大丈夫ですよ?というより、何か興奮してません!?
「……怪我でも病気でもないですから!身体は大丈夫ですから!…はぁはぁ…。」
「そうですか?それならどうされました?申し訳ないのですが、私、今から出かける予定で…」
「すいません…急いで来たもんで、息が切れてしまって。バレンタインのお返しを渡したくて…。」
そう言って俺は肩に掛けていた斜め掛けの魔法鞄から大きな花束を取り出し、頭を下げつつ彼女へ差し出した。
「え、リム先生、その花の意味分かってます?…あら?これ…」
「分かってます。この1ヶ月、嫌でも思い知りました。俺も貴女が好きです。」
そう言って顔を上げると、彼女は1枚の紙を凝視していた。ちょっと目が血走ってて怖い。
彼女が見ている紙はよく見ると、俺が鞄に入れたままにしていた物だった。もちろん今はまだ渡すつもりは無い。どうやら花束を鞄から出した時に
「ちょ、アンジュ先生?何で貴女がそれを持ってるんです!?返して下さい!」
俺は慌てて奪い返そうとするが、それを察知した彼女は彼女自身の鞄の中に入れてしまった。鞄は小さくオシャレな物だったが、魔法鞄の様で、中は異次元空間に繋がっているから奪い返す事は出来ない。
「…リム先生、この花の本数って?」
「108本だよ?店員さんに今日プロポーズするって言ったらこの本数だって…何か間違ってた?」
俺は薔薇の本数によって意味があるって知らなくて、調べてみようとも思ったんだが、色々忙しく調べることがないまま今日になってしまった。何か間違っていたんだろうか…。不安になりながらそう言うと、
「ふふふっ…、先生?薔薇の108本の花束は『結婚して下さい』って意味ですよ?」
「え、…そうなの?」
告白することばかり考えていて、彼女と付き合えれば…とは思っていたが、そこをすっ飛ばして結婚のプロポーズをしてしまっていたとは思わなかった。
急に恥ずかしくなり、身体が熱くなった。顔は真っ赤に違いない。
「リム先生、私、今日合コン行く予定だったんです。」
「……知ってる。」
つい、暗い感情が湧き上がってきて返事がぶっきらぼうになってしまった。自分でも分かってる、これは『嫉妬』だ。
「そうなんですね…ちょっと家に戻って電話しても良いですか?エミリーに連絡してくるんで。良かったら先生も来てくださいな。」
そう言うと、俺の背を押し、治療院の中へ案内したかと思うと治療院の奥の部屋へと消えていった。俺は治療院の入口近くの待合室にあるソファに腰掛けて彼女を待った。
しばらくすると、彼女が奥から現れた。
「すみません、お待たせしました。合コン、お断りしてきました。」
「え…!ということは…」
俺はソファから立ち上がり、彼女の元へ歩み寄った。
「私も貴方のことが好きです。今日の合コンで諦められるかと思ったんですが…」
「待たせてごめん。でも嬉しい…!ありがとう!!そしてこの間は本当ごめん!!!」
そう言って彼女をぎゅっと抱き締めた。ほんのり暖かい彼女の温もりがとても心地よかった。




