第10話 ホワイトデー前日
今日は仕事休みだから、最終話まで頑張る所存です。
バレンタインデーから約1ヶ月。街ではホワイトデーの商品が並び、商品を手に取りながら悩む男性客の姿がチラホラ見られるようになってきた。
最近はボーッとしている事が増えた。生徒に渡すプリントにミスが増えたり、授業の時間割を間違えたり。特にアンジュ先生が視界に入るとつい意識してしまい、物を落としてしまったり、挙動不審になってしまう為、何も事情を知らない人でも何かあったと察せられてしまうくらいだった。本当に散々だ。自分が悪いのに。
「あぁ、週末はホワイトデーですか。」
あらゆるお店のディスプレイにはホワイトデー関連の商品が並び、どうしても目に入ってしまう。
「アンジュ先生には何がいいかな?」
自分がホワイトデーにプレゼントを渡す姿を想像し、緊張するような、嬉しいような複雑な気持ちになった。そして日が暮れ、オレンジに染る街の中、少々寄り道をしてから家路についたのだった。
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その光景に出くわしたのはたまたまだった。丁度、次の授業のクラスへ向かう途中、魔術科の医務室前を通りがかった時、医務室内からアンジュ先生と魔術科医務室勤務のシェリー先生の声が聞こえてきた。
「ねぇ、アンジュちゃん。この通り!お願い!」
「えぇ…私苦手なんですよ。そういうの。慣れてなくて。」
「合コンの人数どうしても足りないのよ。」
「私、振られて傷心中ですよ?」
「知ってるわよ!でも新たな恋が癒してくれるかもしれないじゃない?あんな男より、いい男いるかもしれないわよ?」
「はぁ……分かりました。貸しですよ?」
「ありがとー!助かるわぁ。これで女性メンバー揃ったわ!日程は…」
アンジュ先生は若干呆れ、乗り気では無いながらも合コンに参加する事にしたらしい。日程はどうやら週末のホワイトデーの日。この日に集まる男性メンバーとか正直どうなんだろうか?とも思うが、自分には関係ない。そう、関係ないのだ。
俺は若干気落ちしながら、次の授業のクラスへ向かった……つもりが、全く違うクラスへ入ってしまった。今日はついてない。
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「さて、仕事も終えたし帰るかな。」
今日分の仕事を終わらせ、学校を出ようとした時だった。
「ねぇ、リム先生。」
「ちょっといいか?」
そう言って呼び止めたのは医療科学科長エミリー先生と魔術科学科長ロゼ先生だった。この2人は学園内の数少ない女性講師の中であり、大変仲が良い。というより、学園内の女性講師は常勤、非常勤に関わらず仲が良いようだ。
「な、何でしょうか?」
医療科学科長、魔術科学科長の言わば上の立場の人に声をかけられてつい萎縮してしまい、声がうわずってしまった。
「なぁ、わかってるよな?」
「明日は何の日か。」
若干凄むロゼ先生と口では微笑みを浮かべながら目が笑ってないエミリー先生がそう尋ねた。
「え、明日は休みですよね…?」
確か、仕事は無かったはずだ。明日だけはいきなり仕事と言われても困る。
「そういうことじゃないのよ〜?」
そうつっこむエミリー先生。その距離でその顔を拝むとなるとかなり怖いので、もう少し距離を取りたいんですが。
「明日はホワイトデーだろうが。分かってんだろーな。」
「あ…そういう事ですか。大丈夫ですよ。」
俺は微笑みながら真っ直ぐ2人を見てそう返した。2人は何かを察したのか、
「分かってるならいいのよ~?」
「今度くだらねぇことしたら承知しねぇからな。」
「肝に銘じます。」
流石に鈍い俺でもこの1ヶ月で自分の気持ちを自覚した。もう分かった、もう懲りた。こんな思いするのは二度とごめんだ。
「リム先生、明日アンジュちゃん含めた私達が行く合コンは隣駅前にある青い屋根のレストラン前に18時集合になってるの。何がするなら早めにね。こちらも都合があるんだから。」
「…お見通しなんですね。分かりました。」
「合コンの件知ってたのか?それにしても、腑抜けたお前を何回クビにしようと思ったか。…もう泣かすんじゃねぇぞ。」
「頑張りなさいね~。」
そう言うと、二人は俺に背を向け去っていった。
彼女は1ヶ月前勇気を振り絞って俺に告白してくれた。まだ彼女の気持ちが変わっていないか分からないが…今度は俺の番だ。
そう心の中で自分に喝を入れ、いつの間にか日が落ちて真っ暗になっている中、真っ直ぐ家へと向かった。空気がすんでいるおかげか、この日は綺麗な星が空一面に輝いていた。




