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第二章 第一話「壊れ始めた歴史」

「……夢では、ないな」


義経は静かに呟いた。


炎に包まれ崩れていく城。


血に倒れた“誰か”。


それはただの幻ではなかった。


「これから起きる」


確信があった。


戦場で積み上げた直感が、それを告げている。


あれは過去ではない。


まだ起きていない“現実”だ。


「なら、止めればいい」


義経は顔を上げた。


迷いはない。


救ったのなら、最後までやる。


それだけのことだ。


辿り着いたのは、小さな村だった。


挿絵(By みてみん)


見覚えがある。


“あるはず”の場所。


人がいて、火があり、生活があった土地。


だが――


「……違う」


足が止まる。


静かすぎる。


それは無音ではない。


“削られた静けさ”だった。


何かが、少しずつ消されている。


村に入る。


人はいる。


だが――どこかがおかしい。


「おい」


声をかける。


男が振り向く。


その瞬間、顔がわずかに“揺れた”。


水面の像のように、輪郭が乱れる。


「……今、何をした」


男は答えない。


いや、答えられない。


そこに“意思”がない。


ただ反射しているだけだ。


次の瞬間。


挿絵(By みてみん)


男の身体が崩れた。


音も、血もない。


ただ静かに――

挿絵(By みてみん)


“存在がほどける”ように消える。


「……なっ……」


挿絵(By みてみん)


息が詰まる。


刀を握る手が震える。


戦場で死は見慣れている。


だがこれは違う。


死ではない。


“最初から存在していなかったこと”にされている。


「……何だ、これは」


「近いな」


声が割り込む。


背後。


そこに“それ”は立っていた。


影のような存在。


挿絵(By みてみん)


人の形をしているが、輪郭が定まらない。


「何をした」


義経は睨む。


「俺じゃない」


影は淡々と答える。


「お前だよ、義経」


空気が凍る。


「救っただろう?」


「……それがどうした」


「一つ、命を救った」


影は指を立てる。


「なら、一つ、何かが消える」


義経の脳裏に炎の記憶がよぎる。


崩れる城。


倒れる誰か。


「……まさか」


「均衡だ」


影は静かに言う。


「この世界は、そういう構造でできている」


「お前は一本の線を曲げた」


「だから別の線が削られる」


義経は拳を握る。


「ふざけるな」


低い声。


「命を救うことが間違いだと言うのか」


影は、わずかに沈黙した。


そして――


「いいや」


「間違いじゃない」


一歩、近づく。


空気が重くなる。


「ただ、“責任”が発生するだけだ」


その瞬間。


遠くで悲鳴が上がった。


振り向く。


村の奥から煙が立つ。

挿絵(By みてみん)

火だ。


義経は走り出す。


迷いはない。


だが胸の奥で理解している。


これは偶然ではない。


救った結果として、世界が“修正”を始めている。


そしてその代償は――


すでに、動き出していた。

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