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第二章 第十一話「失われた輪郭」
夜の風は、冷たかった。
義経は歩いていた。
弁慶が後ろからついてくる。
「お前、まだ納得してない顔だな」
「……当たり前だろ」
義経は即答する。
「全部終わったはずなのに、まだ“見られてる”感じがする」
弁慶は笑う。
「気のせいじゃねぇのか?」
「違う」
義経は立ち止まる。
「確実に“誰かが見ている”」
その瞬間。
空が、一瞬だけ歪んだ。
ルルではない。
“複数の視線”。
世界そのものを上から眺めるような感覚。
義経は理解する。
「……まだ上があるのか」
声はない。
だが答えは、確かにあった。
ルルは“管理者の一部”に過ぎない。
歪みの観測は、もっと上位の層で行われている。
弁慶が小さく言う。
「お前、厄介なもんに触れたんじゃねぇのか」
義経は、空を見た。
「……まだ終わってないらしい」
だが、その言葉に絶望はなかった。
むしろ——
静かな覚悟があった。
「なら、いい」
「まだ選べるってことだ」
その時。
遠くで、ルルの声がした気がした。
「観測は続きます」
「選択もまた、続きます」




