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第二章 第七話「歪みの先にあるもの」

灰が、空を覆っていた。


焼け落ちた城。


崩れた歴史。


その中心に、義経は立っている。


「……止める方法だと?」


あの声。


振り返る。


影は、いつも通りそこにいた。


「あるのか」


短く問う。


「ある」


あっさりとした答え。


義経の目がわずかに細くなる。


「当然だ」


「ただし」


影が指を立てる。


「簡単ではない」


「当然だろう」


迷いはない。


「どうすればいい」


影は空を見上げる。


「歪みは消えない」


「集まる」


「……集まる?」


「そうだ」


一歩、近づく。


「お前が救った命」


「その歪み」


「すべてを一つにする」


空気が張り詰める。


「……誰が受ける」


影は笑った。


「わかっているだろう」


沈黙。


風が吹く。


灰が舞う。


義経は目を閉じる。


そして開く。


「……俺か」


「他にいるか」


影の声は揺らがない。


「お前が始めた」


「なら終わらせろ」


胸の奥で、何かが落ちる。


恐怖ではない。


覚悟だ。


「……それで終わるのか」


影は一拍置く。


「終わるかもしれない」


「あるいは」


わずかに歪む。


「お前が消える」


風が強くなる。


義経は動かない。


「……構わない」


静かな声。


だが揺れはない。


「もう失うものはない」


弁慶の影がよぎる。


——最後まで行け


「俺がやる」


はっきりと、言う。


影が初めて沈黙する。


「いいだろう」


空気が変わる。


次の瞬間。


視界が割れる。


見える。


無数の歪み。


消えた命。


崩れた歴史。


それらはすべて、一点へ繋がっていた。


「……ここが……」


「核だ」


影の声。


「すべての歪みの集積点」


「そこへ行け」


「そして」


一拍。


「すべてを引き受けろ」


視界が戻る。


荒れ果てた世界。


だが、意味が変わって見える。


道はある。


終わらせる方法もある。


その代わりに――


すべてを失う可能性。


それでも。


義経は歩き出す。


迷いはない。


救いは、まだ終わっていない。


そして――


今度こそ、終わらせる。

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