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第二章 第六話 「ずれた歴史」

風景が、どこかおかしかった。


見慣れた道。


見慣れたはずの山並み。


だが――


「……違うな」


義経は足を止める。


山の位置がわずかにずれている。


川の流れも、記憶と一致しない。


「ようやく気づいたか」


あの声。


振り返らない。


そこにいるのは分かっている。


「何をした」


短く問う。


「俺は何もしていない」


影は淡々としている。


「結果が出ただけだ」


義経は目を細める。


「結果、だと?」


「そうだ」


一歩、近づく気配。


「お前は歴史を一度ねじ曲げた」


「歪みは、必ず戻ろうとする」


空気が変わる。


嫌な予感が濃くなる。


「何が起きている」


「見ればわかる」


遠くで、地が鳴った。


重い音。


空気を押し潰すような振動。


「……なんだ」


走る。


視界の先に煙。


規模が、異常だ。


辿り着いた瞬間。


義経の足が止まる。


「……城が……ない……?」


崩れている。


焼け落ちている。


人が倒れている。


戦の跡。


だが――


「ここで戦は起きていないはずだ……!」


記憶と現実が噛み合わない。


その時。


倒れていた男が動いた。


「……おい」


駆け寄る。


「しっかりしろ」


男はかすかに目を開く。


「……間に……合わなかった……」


「何があった」


「本来……来るはずのない軍が……」


「突然……」


言葉が途切れる。


そして、消える。


義経は立ち上がる。


拳を握る。


「……どういうことだ」


「簡単だ」


影が背後にいる。


「歴史が帳尻を合わせている」


「お前が救った分だけ」


「どこかで、まとめて失われる」


空気が凍る。


「……まとめて、だと」


「そうだ」


影は崩れた城を見下ろす。


「一つでは済まない」


義経の呼吸が乱れる。


これはもう、個人の問題ではない。


「俺が……やったのか」


「そうだ」


即答。


「選び続けた結果だ」


炎の音だけが響く。


義経は目を閉じる。


弁慶の声がよぎる。


——最後まで行け


目を開く。


「……なら」


一歩踏み出す。


「止める方法を探す」


影がわずかに笑う。


「ようやくそこに来たか」


「壊したのなら」


一拍。


「直す覚悟も持て」


風が吹く。


灰が舞い上がる。


歴史は、崩れた。


だが――


まだ、終わっていない。



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