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 自分の部屋とジェーンの部屋の掃除が終わる頃には、日はすっかり傾き、オレンジ色の西日が木枠の窓から差し込んでいた。



「ジェーン、ありがとう。今夜はなんとかベッドの上で寝れそうね……」



 私は床にペタリと座り込み、頭から滝のように流れ出る汗を、ビチョビチョのハンカチで拭いていた。


 ひと仕事終えた後の夕陽は目に染みるぜ。

 あとで水浴びでもしようかしら。



「申し訳ございません。わたくしの部屋までお嬢様が掃除を……」


「いいのよ。ジェーンは浴室と玄関と広間をやってくれたし、どうにか二人でここまで片付けられたのは、奇跡だわ」



 いたるところに張り巡らされた蜘蛛の巣と、2年間つもりに積もったホコリに、最初は言葉も出なかったけれど、やればできるものね。


 前世を思い出す前の私だったら、絶対にやっていないであろう肉体労働。

 いや、そもそも前世を思い出していなければ、私はここにはいないだろう。

 これで少しは体脂肪も燃えてくれたかしら。


 しばらく、二人でまったりしていると、階下からエマニエル伯父様の声がきこえた。



「夕飯できたから降りておいでー」



 そうだ! 夕飯のことをすっかり忘れていた。

 食欲よりも寝床の確保で、すっかりご飯のことを忘れていた。

 空腹に気づいてようやく、お腹の虫が盛大に大合唱を始めた。




〇 〇 〇




「いただきますっ!」


「はい、召し上がれ」



 コンソメスープに具はキャベツだけ。

 主食は固めのパンに、おかずはホウレンソウのバター炒め。


 まあ、なんて、シンプルな食卓でしょう!

 これが公爵家の娘に出す夕食だなんてっ!!

 餓死させるつもりですのっ!?


 と以前の私なら喚き騒いでいたことでしょう。


 ですが、私は生まれ変わったのです。

 そう、エマニエル伯父様は頼んでもいないのに、私にヘルシーなダイエット食を用意してくれたのです。



「ジェーンも、一緒に食べましょう! お腹すいたでしょ?」



「いえ、それは出来ません、エルーナ様。わたくしは後ほど自室でいただきます」



 ジェーンだって、一日中掃除をして、疲れてお腹が空いているはず。

 たしかに侍女が主人と一緒の食卓につくのは、あまりよろしくないとは思うけど、げっそりしたジェーンの横でガツガツ食べるのも、なんだか気が引ける。



「エルーナもそう言っていることだし、僕も構わないよ。

 もし、気になるのであれば、今日だけ一緒に食べてくれないかな?

 誰かと食事をするのは久々だからね」



「そ、そういうことでしたら」



 ジェーンがおずおずと私の横の席に座る。


 この屋敷の主であるエマニエル伯父様は上座、いわゆるお誕生日席に、その横に私、ジェーンという並びで食卓を囲んだ。


 疲れていたせいもあって、話はぽつりぽつりと、でも途切れることなく続き、夕食が終わるころには、私は意識を手放してしまった。


 どうやら私は寝落ちをしてしまったらしい。


 気づいたら、翌朝であった。


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