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姉上(あねうえ)へーん。今日へんだよ! しゃべり方がへーん。かあさまみたい!」



 突然、話に割って入ってきたのは、弟のロベルト・エトヴァ・シェルトネーゼ。

 ポテトサラダを口の周りにつけた姿が可愛らしい。



「姉上なんかおかしなもの食べたでしょ! 落ちてるものは食べちゃダメってかあさまに言われたでしょ!」



 食べてないがな。


 ロベルトの言う通り、私のしゃべり方や雰囲気はたぶん昨日までとは全く違うと思われる。

 なんせ、今まではわがままで傲慢な令嬢だったのだ。


 昨日までのエルーナであったなら、一週間後の王家主催のパーティーをその5段腹と化した贅肉(ぜいにく)をぷるんぷるんと()しげもなく揺らし、発狂して喜んでいたことだろう。


 安心してほしいのは、エルーナとしての人格が消えたとかではない。

 今までのエルーナと前世の私としての過ごした年月がプラスされて、今の私がいる。


 わがままで傲慢だったエルーナの気持ちを、前世の私の記憶がプラスされたことによって、達観した視野で見れることになったというか、つまりかわいい妹に嫉妬していたのは私でもわかるってことだ。


 一瞬で30年分の時を過ごしたってやつだ。

 前世が30年で幕と閉じたっていうのがちょっと悲しいけれど。



「落ちたものを食べたのか? エルーナ」



「食べてないですわ。食べても人格は変わりませんわ、お父様」



 子どもにマジレスをさせないでくれ、お父様よ。


 さっきから食卓が微妙な雰囲気なのは薄々感じていた。

 でも、もうあんなわがままな態度はとれない。

 いくら演技であっても、30歳+7歳の精神年齢大人なやつが、ぎゃーすかぎゃーすか言うのはちょっと恥ずかしいのである。

 


「わたくしはできれば、領地へ療養をしに行きたいと思っております。

 王都は……とても誘惑が多いですわ。私はもうこれ以上ここに居てはいけないと思いますの」



 そう。今ここはアスタナ王国の王都に構えるシェルトネーゼの屋敷なのである。

 本来であれば領地で暮らしているはずなのではあるが、第一王子の婚約者候補として5歳の時より王都に家族ともども越してきているのである。


 王都で暮らして2年。

 2年前はこんなに太ってなかったような気がするんだよね。

 たぶん、ここでの暮らしが肥満をよんでいるんだと思う。


 そう結論付けて私は領地に戻ろうと思ったのである。

 でも、両親の許しがなければ行けない。

 どうにかして、首を縦に振らせねば!



「一人でかい? それは無理だよ、エルーナ」


「そうよ。まだあなたは7歳なのよ?」



 お母さまもここで口をはさんできた。

 今まで、私の言動がいつもと違うから、様子を見ていたのだと思うんだけど、さすがにこれは口を挟まずにはいられなかったようだ。



「でも、お父様もお母様も言ってたではありませんか! エマニエル伯父様が寂しがっていると。私エマニエル伯父様を少しでも励ましに行きたいのですわ!」


 エマニエル伯父様というのは、お父様のお兄様で、もともと体が弱く、公爵としての責務を果たすことができないということで、弟であるお父様に爵位を譲られたのだ。


 そして、今はシェルトネーゼが所有する領地の管理をお願いしているのである。

 結婚はせず、子どももいないため、寂しがっていると以前お父様とお母様が話をしていたのをきいたことがある。


 ならば、私がいくしかあるまい。

 そして、このカロリーの高い王都から早く脱出しなくては。



「そういえば、そうだな……」



 お父様はすっかりそのことを忘れていたようで、さっきまで私の領地行きを渋っていた顔から、今度は首をひねって考え込んでしまった。


 お母様のほうも、そういえばっ、という顔で口元をナプキンでふいている。


 しばしの沈黙。

 


「マリアンヌ、エルーナの領地行きも、まあ息抜きということで良い案であると思うが、どうかね?」



「そうね。まだまだ心配ですけど、エマニエル様も喜ぶのであれば」



 おっ!

 なんとか、いけそうな気がしてきたっ!



「えーーーっ! いやっ! エルーナお姉さまいなくなっちゃうの、イヤッ!」



 そう叫ぶのはこの物語のヒロイン、ユリア・ロメリヌ・シェルトネーゼ。

 肩にかかる白金の髪がふわりと揺れ、ももいろの唇から漏れるかわいらしい声音は果実のように甘い。


 だが、見くびるな。

 いくら見た目がやばくても、今の私は精神年齢だけなら両親をも凌ぐのだ。



「じゃあ、ユリアが領地へ行く?」



 重たい顔の肉を、なけなしの表情筋を使い、どうにか引き上げ、にんまりと笑みを浮かべながら私がきくと、



「行かないっ!」



 即答であった。

 ついでに、なんかおびえた顔をしていたのは、私の気のせいだろうか。


 まあ、そういうわけで、私の領地行きは一瞬家族から反対されたものの、なんとか説得することができた。


 ただし、領地へ行きしばらくパーティーなどには参加できないからという理由で、挨拶も兼ねて、今回の王家のパーティーには参加しなければいけない、ということになってしまったのであった。


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