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 翌朝。


 いつもと変わらぬ朝食を家族5人、テーブルを囲んでとっていた。

 ちなみに、妹は双子で二卵性の弟がいる。


 顔は妹とはあまり似ていないけど、美形な父母から生まれた子なので、もちろん愛らしい。

 髪の色は妹のユリアよりも少し茶色で、瞳の色は落ち着いた翡翠(ひすい)色をしている。


 正直、将来イケメンになることは間違いなさそうなくらい、造作(ぞうさ)の整っている顔立ちなんだけど、やはり妹が隣にいると、その美しさが少しかすんでしまうのは(いな)めない。


 そして私はと言えば、昨日鏡で確認したところによると、白銀(はくぎん)の髪に肉に埋もれた瞳は紫色をしていた。


 モトはいいような気がする。

 けれど、白銀の髪は油でギトギトしており、紫色の瞳は目やにで(にご)っていた。


 自分の顔を鏡で見て発狂したのは、前世今生(ぜんせこんじょう)合わせて、初めての貴重な体験だった。

 私は毎日こんなヤッベー顔を家族やメイドたちに見せていたのだろうか。

 申し訳ない気持ちでいっぱいである。



「昨日、急に体調を崩したそうだね、エルーナ。今は大丈夫か?」



「はい、お父様。少し休んだら落ち着いたのですが、でもまだ頭が少しクラクラしますの」



 昨日のお昼に前世というものを思い出し、私は自分が悪役令嬢であることを自覚した。

 順当に進めば、私はあと十年ぐらいで、この生を終えることになるだろう。

 もちろん、私は思った。



 そんなのいや! 死にたくない!!



「そうか。しばらく、休養したほうがいいだろう。来週は王家主催のパーティーがあるが、欠席するか?」


「えぇ。そうしてくださったほうがよろしいかと思います。

 なんせ、途中で具合が悪くなったりしたら、ご迷惑をおかけしてしまいますわ」



「……」



 父の言う王家主催のパーティーとやらっていうのが、アスタナ王国、第一王子であるジュリアス・クロイ・アスタナ殿下と『ジュリアス殿下に年の近い令嬢をお持ちの』各貴族との懇親会というのは小説の情報で知っている。


 いわゆる、お見合いパーティーみたいなもので、昨年第二王子であるベルンハルト・セイ・アスタナ殿下が生まれ、いよいよジュリアス殿下に公爵・侯爵・伯爵あたりから後ろ盾が欲しい時期にはいっているようなのである。


ジュリアス殿下は現国王クリストファー・ゼド・アスタナ様と第二王妃セレス様との間の子。


 そして、今回お生まれになったのが、なんと第一王妃シエラ様と陛下の子なのである。


 第一王妃、第二王妃、どちらも家柄としては申し分ない出自なのではあるが、生まれた子が男児であれば我が子を未来の王にしたいというのが親心。

 誰の目からも見ても次期国王の座を争い、両妃が一戦交えることは明らかであった。


 えっへん。


 なんて、偉そうに私が言えることじゃないんだけど、そのせいで公爵家であるシェルトネーゼ家が婚約者を輩出する最有力候補として名があがっているんだよね。


 で、本当にあり得ない話が、その婚約者候補っていうのが、ギトギト油にまみれた新種のクリーチャーであるこの私、エルーナ・ヴェル・シェルトネーゼなのである。


 キレるよね。


 王座のためにこんな化け物と結婚しなきゃいけないってなったらさ。

 第一王子であるジュリアス殿下は誠実な方で、人を見た目で判断せず、決して誰のことも悪く言う人ではないから、小説の中では苦渋にゆがんだ顔で私を睨んでらっしゃったけど。


 私は無理。


 嫌がっている相手にすり寄ることなんてできない。


 面倒なことにならないように、些細な接触も回避しなくっちゃ!



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