第77話 最後の番人
【保有DP:68,920】
【侵食率:9.4%】
【ダンジョンランク:A】
【階層数:5】
【七王統率:5/7】
地下湖が爆発した。
轟音。
衝撃波。
山崩れのような水流が全方向へ吹き荒れる。
普通の存在なら、それだけで消し飛んでいた。
だが。
俺たちは違う。
「行く!」
スイが飛び出した。
深淵魔王粘体。
今や七王すら圧倒する存在。
拳が振り抜かれる。
空気が裂ける。
だが。
深層主は動かなかった。
巨大な爪がゆっくり振られる。
それだけ。
それだけでスイが吹き飛んだ。
「っ!?」
リリスが目を見開く。
スイ自身も驚いていた。
今までなら王を消し飛ばせた一撃。
それが通じない。
いや。
触れた瞬間に力を逸らされた。
「なるほど」
俺は理解する。
強さが違う。
次元が違う。
今までの敵は力で押し潰せた。
だが深層主は違う。
戦い方そのものが完成している。
◇◇◇
リリスが動く。
蜘蛛糸が空を埋める。
数千。
数万。
巨大な拘束網。
七王ですら封じられる技だった。
だが。
深層主が息を吐く。
黒い霧。
次の瞬間。
蜘蛛糸が消滅した。
「なっ!?」
リリスが固まる。
魔力ごと消された。
吸収でも破壊でもない。
存在そのものを打ち消された。
フィリアが青ざめる。
「勝てるのこれ!?」
正直。
俺も少し同意した。
◇◇◇
深層主は攻撃を続けない。
ただ立っている。
こちらを見ている。
まるで教師だ。
試験官だ。
その姿を見た瞬間。
俺は気付く。
こいつは本気で殺そうとしていない。
試している。
それだけだ。
「番人」
俺は呼びかける。
黄金の瞳が向く。
「何故そんなに強い」
すると。
深層主は初めて笑った。
「積み重ねたからだ」
単純だった。
あまりにも。
「千年」
「二千年」
「一万年」
空気が止まる。
一万年。
フィリアが絶句した。
俺も驚く。
だが納得もした。
それだけ生きれば。
これほどの怪物になる。
◇◇◇
「お前は速すぎる」
深層主が言う。
「英雄を喰った」
「王を喰った」
「七王を喰った」
「異常なスピードでここまで来た」
事実だった。
俺は異常な速度で成長している。
「だが」
深層主が続ける。
「まだ足りん」
次の瞬間。
深層主の身体から凄まじい魔力が噴き上がった。
今までの比ではない。
地下湖が蒸発する。
空間が歪む。
世界そのものが悲鳴を上げる。
【個体情報更新】
【深層主】
【古竜王】
初めて名前が表示された。
古竜王。
七王ですらない。
別格。
番人。
神代の生き残り。
その正体だった。
◇◇◇
そして。
深層主はゆっくりと爪を下ろす。
攻撃ではない。
その爪の先に。
一つの結晶が現れた。
黄金色。
莫大な魔力。
王級因子とは比較にならない。
「受け取れ」
全員が固まる。
「何だそれ」
俺が聞く。
深層主は答えた。
「番人の核だ」
空気が変わる。
リリスが息を呑む。
スイも真顔になる。
「今のお前では俺には勝てん」
深層主は言う。
「だが神将には勝てる」
そして。
黄金の瞳が細くなる。
「まず神界を喰え」
静寂。
誰も喋れない。
「その後」
深層主は笑った。
「もう一度来い」
その意味は明白だった。
決着は先送り。
だが逃げたわけではない。
むしろ逆。
もっと強くなって来いと言っている。
【特殊アイテム獲得】
【番人の核】
その表示を見ながら俺は笑った。
深層主は敵ではなかった。
だが味方でもない。
超えるべき壁。
最後に喰うべき存在。
それだけは確信できた。
そして。
神界軍との戦争が始まる。




