第76話 番人の資格
【保有DP:68,920】
【侵食率:9.1%】
【ダンジョンランク:A】
【階層数:5】
【七王統率:5/7】
神将級。
その文字が表示された瞬間、空気が変わった。
今までとは違う。
七王とも違う。
英雄とも違う。
存在そのものが異質だった。
神界。
その軍勢が、ついに動き始めたのだ。
「早すぎます……」
フィリアの顔色が悪い。
当然だった。
ユグドラは三年と言った。
だが現実は違った。
三年どころではない。
数週間。
いや、数日後にでも降りてきそうな勢いだった。
その時だった。
世界樹が大きく震える。
枝が揺れる。
葉がざわめく。
そして。
誰かの声が響いた。
「来い」
短い一言。
だが聞き覚えがある。
深層主だった。
◇◇◇
地下湖。
深層主は待っていた。
巨大な黒い身体。
黄金の瞳。
だが今回は違う。
以前よりも近い。
以前よりも自然だった。
まるで同格の存在を見るように、深層主はこちらを見ている。
「神将が現れたな」
「ああ」
俺は頷く。
すると深層主は笑った。
「思ったより早かった」
その言葉に引っ掛かる。
「予想していたのか?」
「当然だ」
深層主は即答した。
「お前が王国を潰した時点で決まっていた」
やはり。
神界は監視していた。
俺が思っていた以上に。
◇◇◇
深層主は立ち上がる。
地下湖が揺れる。
今まで見たことがないほど巨大だった。
そして。
黄金の瞳が俺を見る。
「お前はどこまで知っている」
「神界が収穫者だということくらいだ」
「半分だな」
半分。
つまりまだある。
深層主は空を見る。
正確には天井の向こう。
神界の方向だ。
「神は世界を作っていない」
全員が固まる。
フィリアの顔から血の気が消える。
俺も驚いた。
だが深層主は続ける。
「奪った」
沈黙。
重い。
あまりにも重い。
「昔」
深層主が言う。
「この世界には別の支配者がいた」
地下湖が揺れる。
空気が変わる。
そして。
「我らだ」
その一言で理解した。
深層主。
番人。
七王。
地下世界。
全部繋がった。
神界は侵略者だったのだ。
◇◇◇
「なら」
俺は聞く。
「何故抵抗しない」
すると深層主は苦笑した。
初めて見る表情だった。
「した」
短い返答。
「負けた」
さらに短い。
だが十分だった。
深層主ほどの存在ですら負けた。
神界はそれほど強い。
「番人は七人いた」
深層主が言う。
「今は俺だけだ」
静寂。
ユグドラが言っていた。
昔はたくさんいた。
今はいない。
その理由だった。
◇◇◇
その時だった。
システムが反応する。
【特殊条件達成】
【番人の試練】
俺は目を細める。
嫌な予感しかしない。
そして。
深層主が初めて戦闘態勢を取った。
地下湖全体が震える。
世界が揺れる。
圧力だけで空間が歪む。
フィリアが膝をついた。
リリスも驚いている。
スイだけが嬉しそうだった。
「戦うの?」
「ああ」
深層主が答える。
「資格を見せろ」
黄金の瞳が俺を見下ろす。
「七王を統べる資格」
「神を喰う資格」
「世界を奪う資格」
そして。
巨大な爪が持ち上がる。
今まで見たどの敵とも違う。
オークキング?
比較にならない。
神将?
まだ分からない。
だが。
確実に言える。
今までで最強。
それが深層主だった。
俺は笑う。
ようやく来た。
ずっと引っ張ってきた存在。
地下世界最強。
最後の番人。
「いいぞ」
俺は前へ出る。
「試してみろ」
その瞬間。
地下湖が爆発した。




