第73話 骸王
【保有DP:40,920】
【侵食率:7.8%】
【ダンジョンランク:B】
【階層数:5】
【七王統率:2/7】
骸王モルドからの宣戦布告は、その日のうちに届いた。
内容は実に単純だった。
【来い】
それだけ。
場所は記されている。
時間も記されている。
罠を隠す気すらない。
堂々としていた。
「分かりやすいな」
俺は笑う。
「馬鹿なんじゃない?」
フィリアが言う。
だがリリスは首を横に振った。
「違います」
「強者です」
その言葉には重みがあった。
実際、俺もそう思う。
本当に強い奴は策を必要としない。
正面から潰せるからだ。
だから。
これは罠ではない。
挑戦状だ。
◇◇◇
三日後。
俺たちは骸王の領域へ到着していた。
荒野。
死体。
骨。
見渡す限り墓場だった。
そして中央。
巨大な死骸の山。
その頂上に座る男。
黒い鎧。
巨大な剣。
白髪。
骸王モルド。
七王の一角。
オークキングとは比較にならない魔力だった。
だが。
以前ほどの圧迫感はない。
スイも。
リリスも。
既に七王級へ近付き始めている。
王級因子。
世界樹。
英雄施設。
その全てが効いていた。
「来たか」
モルドが立ち上がる。
周囲の死体が動き始める。
何万。
何十万。
もはや数える意味もない。
普通なら絶望する。
だが。
俺は笑った。
「お前もそれか」
モルドも笑う。
「軍勢は嫌いか?」
「いや」
俺は答える。
「DPにしか見えない」
沈黙。
そして。
骸王が大笑いした。
◇◇◇
戦争が始まる。
死者の津波。
骨の海。
亡者の軍団。
だが。
今の俺たちは違った。
世界樹がある。
英雄施設がある。
王級因子がある。
そして。
スイがいる。
「行く!」
スイが飛び出す。
その瞬間。
空気が爆発した。
以前とは違う。
拳一発で数百の亡者が消し飛ぶ。
衝撃波だけで軍勢が崩壊する。
「一体何が」
フィリアが呟く。
俺も少し同意した。
強すぎる。
王級因子の効果が想像以上だった。
リリスも負けていない。
蜘蛛糸が戦場全体を覆う。
拘束。
切断。
吸収。
亡者の軍勢が次々と消えていく。
さらに。
英雄施設で鍛え続けていたコボルト部隊も投入する。
以前の雑魚ではない。
実戦。
英雄訓練。
王国戦。
全てを経験している。
軍勢同士の戦いなら十分戦力になる。
戦況は一方的だった。
◇◇◇
一時間後。
死者の軍勢は壊滅していた。
荒野に残るのは俺たちだけ。
そして。
骸王モルド。
ただ一人。
「なるほど」
モルドが剣を抜く。
ここからが本番だった。
軍勢は前座。
最初から分かっている。
こいつ自身が最強だ。
次の瞬間。
モルドが消えた。
「っ!」
リリスが反応する。
速い。
オークキングとは別次元。
だが。
スイが割り込む。
轟音。
衝撃。
二人が激突する。
荒野が割れる。
地面が吹き飛ぶ。
余波だけで山が崩れる。
フィリアが悲鳴を上げた。
人間なら即死。
英雄ですら危険。
そんな戦いだった。
そして。
数分後。
決着は訪れる。
モルドは強かった。
本当に強かった。
だが。
成長速度が違った。
今の俺たちは既に七王の壁を越え始めていた。
スイの拳が振り下ろされる。
モルドの剣が砕ける。
そして。
最後の一撃。
骸王の身体が崩れ落ちた。
◇◇◇
【七王撃破】
【骸王モルド】
【DP+28,000】
【王級魂獲得】
【七王統率:3/7】
静寂。
フィリアが力なく座り込む。
「もう七王が強く見えない……」
気持ちは分かる。
だが。
それは違う。
俺たちが強くなりすぎているだけだ。
そして。
魂炉が反応する。
【王級魂】
【骸王モルド】
【施設化可能】
また強くなる。
また進化する。
そして。
その直後。
シャドウバットが慌てて飛び込んできた。
『キィィィッ!!』
視界共有。
映像が流れ込む。
巨大な海。
その中心。
海そのものを支配するような怪物。
【七王を確認】
【海王リヴァイア】
さらに。
その隣。
もう一体。
【七王を確認】
【獣王フェンリル】
俺は目を細めた。
なるほど。
向こうも動き始めたらしい。




