第70話 第一の王
【保有DP:40,420】
【侵食率:7.5%】
【ダンジョンランク:B】
【階層数:5】
深層主との会話を終えた俺たちは、再び第五階層へ戻っていた。
地下世界。
七王。
そして番人。
情報は増えた。
だがやることは変わらない。
強くなる。
喰う。
支配する。
そのために進む。
ただそれだけだった。
「七王全員が敵じゃない」
フィリアが歩きながら呟く。
「どういう意味なんだろうね」
「そのままの意味だろう」
俺は答える。
「少なくとも一人は敵対しない」
あるいは。
利用できる。
どちらでも良かった。
俺は最初から七王全員と仲良くする気はない。
だが全員と戦う必要もない。
使えるなら使う。
使えないなら喰う。
それだけだ。
◇◇◇
第五階層を進んで三日。
ようやく最初の王の領域へ到達した。
巨大な森林だった。
どこまでも続く樹海。
空を覆うような枝。
地面を埋め尽くす根。
そして。
異常な魔力。
ここ全体が一つの生命体のようだった。
「気持ち悪いですね」
リリスが警戒する。
俺も同意見だった。
森林なのに静かすぎる。
鳥もいない。
獣もいない。
音がない。
その時だった。
地面が動く。
木の根が蠢く。
次の瞬間。
無数の樹人が姿を現した。
百。
二百。
三百。
数が多い。
だが以前ほど驚かない。
オーク軍勢の方が多かった。
「ご主人様」
リリスが笑う。
「片付けますか?」
「ああ」
次の瞬間。
戦闘が始まった。
◇◇◇
結果だけ言えば一方的だった。
スイが突っ込む。
樹人が吹き飛ぶ。
リリスの蜘蛛糸が森全体へ広がる。
敵が拘束される。
ブラッドファングが駆け抜ける。
木々が切り裂かれる。
以前なら脅威だった軍勢。
今では足止めにすらならない。
そして。
その様子を見ていた存在がいた。
「なるほど」
森の奥から声が響く。
女性の声だった。
柔らかい。
だが底知れない。
次の瞬間。
森全体が震える。
巨大な木が動く。
いや。
違う。
木そのものが立ち上がった。
山のような巨体。
翡翠色の瞳。
長い銀髪。
人型の上半身。
木々で構成された下半身。
森そのものが意思を持ったような存在だった。
【七王を確認】
【樹界王ユグドラ】
全員が止まる。
七王。
初めて相対する存在。
オークキングとは比較にならない。
魔力だけなら英雄を超えている。
フィリアが息を呑む。
「これが七王……」
当然だった。
強い。
だが。
深層主ほどではない。
それも事実だった。
そして。
ユグドラは俺を見る。
しばらく見つめる。
それから。
意外な言葉を口にした。
「オークを殺したのはあなたね」
「ああ」
「王国も滅ぼした?」
「ああ」
数秒の沈黙。
そして。
ユグドラはため息を吐いた。
「面倒なのが来たわね」
敵意ではない。
呆れだった。
予想外だった。
「戦わないのか?」
俺が聞く。
すると。
ユグドラは笑う。
「なぜ?」
逆に聞き返された。
俺は少し考える。
確かにそうだ。
戦う理由はない。
俺は侵略者。
だが。
まだ攻撃していない。
「深層主に聞いたわ」
ユグドラが言う。
その瞬間。
全員が反応する。
深層主。
やはり七王と繋がっていた。
「番人は滅多に動かない」
ユグドラは続ける。
「そんな存在が興味を持ったなら、一応話くらいは聞いてあげる」
面白い。
本当に面白い。
俺は笑った。
どうやら。
最初の七王は敵ではないらしい。
少なくとも今は。
そして。
その会談が。
地下世界全体を揺るがす情報をもたらすことになる。




