表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最凶進化ダンジョンマスター ~冒険者を餌に最強を目指す』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/80

第7話 初めての強敵

【保有DP:30】


【配下モンスター】


・スイ(ポイズンスライム)×1

・ゴブリン×2


 侵入者反応が現れた瞬間、俺はこれまでとは違う緊張感を覚えた。赤い光点は四つ。だが問題は数ではない。動き方が違った。入口へ足を踏み入れた直後から周囲を警戒し、隊列を崩さず、常に互いを援護できる距離を維持している。


 ミリアたちのような新人ではない。


 おそらくギルドが派遣した調査隊だろう。三人もの冒険者が帰還していないのだから当然だ。むしろ五日も動かなかったことの方が意外だった。


 俺は侵入者たちを観察しながら、自分の戦力を改めて確認する。スイが一匹。ゴブリンが二匹。そして落とし穴が二つ。


 正直、心許ない。


 もしこの場で真正面から戦えば負ける可能性が高いだろう。だがダンジョンマスターは正面から戦う存在ではない。罠を張り、敵を誘導し、情報を集め、少しずつ有利を積み重ねる。それが本来の戦い方だ。


 ならばやることは一つしかない。


「止まれ」


 先頭を歩いていた剣士が低い声で仲間へ指示を出す。全員が即座に足を止めた。その動きには一切の迷いがなく、日頃から連携を訓練していることが見て取れた。


 剣士は足元を観察し、近くの小石を拾い上げる。そして何気ない動作で前方へ放り投げた。


 直後、床が崩れ落ちる。


 落とし穴だった。


「やっぱりか」


「新人が消えるだけの理由はありそうだな」


「警戒を続けろ」


 俺は内心で舌打ちした。


 新人ならまず引っ掛かっていた罠だ。だがこいつらは違う。危険を疑い、確認し、安全を確保してから進む。その慎重さこそが生存率の高さに繋がっているのだろう。


 同時に理解した。


 これが本来の冒険者だ。


 アルドたちが弱かっただけで、人間という種族そのものを侮ってはいけない。


 だが、だからこそ面白いとも思った。

 簡単に死ぬ相手ではない。


 だから殺す価値がある。


 そう考えている自分に気付き、少しだけ驚く。

 以前の俺ならこんな発想はしなかったはずだ。

 それでも否定する気にはなれなかった。


 生き残るためには強くなるしかない。そして強くなるためには侵入者を倒すしかないのだから。


 落とし穴を回避した冒険者たちがさらに奥へ進む。その先で待機していたゴブリン二匹が一斉に飛び出した。


 知識だけなら新人冒険者以上だ。


 アルドとロイドから得た剣術や戦闘経験を共有している。


 だが知識と実力は別物だった。


 剣士の斬撃はあまりにも速い。


 一体目の首が一瞬で宙を舞い、そのまま壁へ叩き付けられる。もう一体は盾役へ飛び掛かったが、体勢を崩されたところへ魔術師の火球を受けた。


 炎に包まれたゴブリンは短い悲鳴を上げ、そのまま動かなくなる。


【配下モンスターが死亡しました】


【配下モンスターが死亡しました】


 戦闘は十秒も続かなかった。

 俺はその結果を冷静に受け止める。

 悔しさはある。

 せっかく生み出した戦力だ。

 だがそれ以上に収穫が大きい。


 こいつらは強い。


 少なくとも今の俺が正面から勝てる相手ではない。

 だからこそ罠と奇襲が必要になる。

 そして、その役目を果たせる存在が一匹だけいた。


 スイだ。


 ポイズンスライムへ進化したスイは壁際を滑るように移動し、誰にも気付かれることなく天井近くまで到達していた。


 俺は命令を出していない。


 それでもスイは理解している。


 誰を狙うべきか。


 誰を最初に潰すべきか。


 まるで長年連れ添った相棒のように。


 次の瞬間、スイは魔術師の頭上へ落下した。


「なっ!?」


 肩へ張り付いたスイは、そのまま首筋へ絡み付く。魔術師は慌てて引き剥がそうとするが、すでに毒は体内へ流れ込んでいた。


 顔色がみるみる悪くなり、呼吸が荒くなる。杖を握る手にも力が入らなくなり、足取りも明らかに不安定だった。


「毒だ!気を付けろ!」


 剣士が叫ぶ。


 その声には初めて焦りが混じっていた。


 ようやく脅威を理解したのだろう。


 スイは正面から戦わない。弱い相手を狙わない。最も厄介な敵へ飛び付き、確実に戦力を削る。


 そして、その判断は正しかった。


 魔術師が機能しなくなっただけで、冒険者たちの余裕は目に見えて失われていく。


 俺はそんな様子を眺めながら、ふと考える。


 スイは本当にただのスライムなのだろうか。


 最初は運良く生き残っただけだと思っていた。だが今は違う。こいつは賢い。戦況を理解している。そして何より、俺が期待する以上の結果を出している。


 もしかすると将来、俺の最強の部下になるのはこいつかもしれない。


 そんな考えが頭をよぎった。


 その時、冒険者たちの意識がスイへ集中する。


 俺はその瞬間を待っていた。


 残された最後の落とし穴を発動する。


 床が崩壊し、盾役の身体が真っ直ぐ闇の中へ落下した。


 悲鳴が響く。


 続いて聞こえたのは肉と骨が砕ける嫌な音だった。


【侵入者を撃破】


 仲間の死を目の当たりにした冒険者たちの顔色が変わる。


 恐怖。

 焦燥。

 動揺。


 侵入時にあった余裕はもうどこにもない。

 そして俺は理解する。

 今、この場で追い詰められているのは俺ではない。


 こいつらだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ