第68話 王を喰らう者
【保有DP:22,420】
【侵食率:7.2%】
【ダンジョンランク:B】
【階層数:4】
オークキングが倒れた後、地下空洞には静寂が訪れていた。
先ほどまで数千の軍勢が暴れていたとは思えない。
残っているのは大量の死体。
そして中央に存在する巨大なダンジョンコアだけだった。
俺はゆっくりとコアへ近付く。
以前なら緊張しただろう。
慎重になっただろう。
だが今は違う。
王国を潰した。
英雄を喰った。
Bランクダンジョンを制圧した。
ここで止まる理由がない。
【ダンジョン吸収を開始します】
コアへ触れる。
瞬間。
凄まじい魔力が流れ込んできた。
脳を焼くような情報量。
眷属。
施設。
罠。
地形。
記憶。
全てが一気に押し寄せる。
普通なら耐えられないだろう。
だが今の俺は違った。
王。
英雄。
複数のダンジョン。
数え切れない魂を吸収している。
むしろ心地よい。
力が増えていく感覚だった。
【Bランクダンジョン吸収成功】
【DP+18,000】
【階層獲得】
【施設獲得】
【眷属獲得】
表示が止まらない。
フィリアが顔を引きつらせる。
「また増えてる……」
当然だった。
俺自身も驚いていた。
【保有DP:40,420】
四万。
今までとは桁が違う。
だが。
その数字以上に価値があったのは別の報酬だった。
【オークキングの魂を確認】
【王級個体】
王級。
英雄より上。
その文字を見た瞬間、全員が反応した。
スイ。
リリス。
ブラッドファング。
全員が魂炉を見る。
そして。
俺も理解していた。
これは使うべきだ。
温存する理由がない。
◇◇◇
数時間後。
俺たちはダンジョンへ帰還していた。
魂炉が輝く。
オークキングの魂。
王級魂。
その価値は想像以上だった。
【王級因子】
【付与可能】
英雄因子の上位版。
単純で分かりやすい。
「ご主人様」
リリスが静かに言う。
「これを使えば」
「ああ」
進化する。
間違いなく。
そして。
俺は迷わなかった。
【王級因子】
【対象:スイ】
【対象:リリス】
【実行】
次の瞬間だった。
ダンジョン全体が震える。
第二階層。
第三階層。
第四階層。
全てが揺れる。
フィリアが思わず後退する。
「また!?」
当然だった。
今までで最大規模の進化が始まっている。
スイの身体が光る。
リリスの魔力が膨れ上がる。
止まらない。
そして。
【進化条件を達成しました】
【個体進化を開始します】
来た。
俺は笑う。
予想通りだった。
いや。
予想以上だ。
王級因子。
Bランクダンジョン。
英雄施設。
全てが噛み合った結果だった。
スイの身体が巨大な魔力へ変わる。
粘液が結晶化していく。
以前のスライムとは別物だった。
リリスも同じだ。
白銀の蜘蛛脚が黒銀へ変わる。
神秘的だった姿がさらに異質になる。
圧倒的な存在感。
もはや普通の魔物ではない。
そして。
システムが新たな名称を表示する。
【スイ】
【種族進化】
【王喰らいの魔粘王】
沈黙。
フィリアが固まる。
「名前が怖い」
俺も少し同意した。
だが強そうなので問題ない。
続いて。
【リリス】
【種族進化】
【深淵蜘蛛皇】
空気が変わる。
魔力が変わる。
存在そのものが変わる。
英雄を超えた。
そう直感できた。
◇◇◇
そして。
進化が終わった直後。
コアが再び反応する。
【条件達成】
【新階層解放】
【第五階層】
全員が画面を見る。
第五階層。
つまり。
深層主の先。
地下世界のさらに奥。
今まで閉ざされていた領域。
そして。
【七王の領域へ到達可能】
来た。
ついに来た。
地下世界の支配者たち。
オークキングが言っていた七王。
次の獲物だ。
王国は終わった。
Bランクダンジョンも終わった。
ここから先は。
本当の地下世界。
支配者同士の戦争が始まる。




