第67話 支配者たち
【保有DP:10,420】
【侵食率:6.8%】
【ダンジョンランク:B】
【階層数:4】
オークキングの言葉を聞いた瞬間、地下空間の空気が変わった。
「この地下世界には、お前みたいな奴が何人もいる」
その一言は俺の予想を大きく超えていた。
ダンジョンマスター。
俺。
そして目の前のオークキング。
少なくとも二人はいる。
だがそれだけではないらしい。
「何人いる?」
俺は尋ねた。
オークキングは笑う。
「さあな」
巨大な斧を肩へ担ぐ。
「知っているだけで六」
六。
思ったより多い。
地下世界は広いとは思っていた。
だがダンジョンマスターが複数存在するとは予想していなかった。
「面白い」
思わず笑う。
深層主。
第四階層。
ネクロパラサイト。
地下勢力。
全てが繋がり始めていた。
そして。
目の前のオークキングもその一部だ。
「余裕だな」
オークキングが言う。
「俺の軍勢を潰したからか?」
周囲には大量の死体が転がっている。
ゴブリン。
オーク。
スケルトン。
数千規模。
確かに戦力としては大きかった。
だが。
今の俺たちには足りなかった。
「弱かった」
正直な感想だった。
オークキングは数秒黙る。
そして大笑いした。
「ははははは!」
地下空間へ笑い声が響く。
「そうか」
斧を持ち上げる。
「なら俺も全力でやろう」
次の瞬間だった。
地面が揺れる。
砦全体が震える。
そして。
死体が動いた。
「は?」
フィリアが固まる。
俺も目を細める。
死体。
先ほど倒した魔物たちだ。
数千。
その全てが立ち上がる。
ネクロパラサイトではない。
寄生でもない。
もっと単純だった。
【特殊能力】
【軍勢支配】
なるほど。
死体を兵として再利用する能力。
軍団型ダンジョンらしい能力だった。
「面倒だな」
俺は呟く。
だが。
驚きはしない。
今の俺も似たようなことをしている。
施設。
英雄。
配下。
全てを利用する。
支配者とはそういうものだ。
「スイ」
「うん!」
「全部壊せ」
「了解!」
スイが飛び出す。
英雄因子を取り込んだ今のスイは別格だった。
拳が振るわれる。
衝撃波。
死体の群れが吹き飛ぶ。
数十体単位で。
リリスも動く。
蜘蛛糸が空を埋める。
死体軍団を拘束する。
ブラッドファングが突撃する。
牙が閃くたびに魔物が砕ける。
圧倒的だった。
軍勢の質が違う。
英雄施設。
戦場支配領域。
上位訓練施設。
王国攻略で得た全て。
その差が現れていた。
オークキングも気付いたらしい。
表情が変わる。
初めて焦りが見えた。
「馬鹿な……」
当然だろう。
軍勢戦なら負けない。
そう思っていたはずだ。
だが。
俺たちは既にその段階を越えていた。
その時だった。
魂炉が反応する。
【施設化可能】
【オークキング】
まだ生きている。
それなのに表示が出た。
俺は理解する。
勝った。
既に。
戦況そのものが。
オークキングも気付いたのだろう。
突然後退する。
逃げるつもりだった。
だが。
遅い。
背後にはリリス。
正面にはスイ。
横にはブラッドファング。
完全包囲だった。
「待て!」
オークキングが叫ぶ。
「俺を殺せば終わりじゃない!」
俺は少し興味を持った。
「続けろ」
するとオークキングは苦々しい顔で言う。
「地下世界には七王がいる」
空気が変わる。
フィリアも固まる。
リリスも反応する。
七王。
初めて聞く単語だった。
「俺はその末席だ」
なるほど。
つまり。
この程度で王。
というわけではないらしい。
そして。
上が六人いる。
面白い。
本当に面白い。
「最後に聞く」
オークキングが睨む。
「お前は何を目指している」
普通なら世界征服とか言うのだろう。
だが俺は少し考えてから答えた。
「全部だ」
沈黙。
「全部?」
「ダンジョンも」
「王国も」
「深層主も」
「地下世界も」
そして。
俺は笑う。
「神もだ」
オークキングは数秒黙った。
そして。
諦めたように笑った。
「狂ってるな」
次の瞬間。
スイの拳が振り下ろされた。
轟音。
決着だった。
【Bランクダンジョンを制圧しました】
【DP+12,000】
【ダンジョン吸収可能】
表示を見ながら俺は静かに笑う。
王国は終わった。
Bランクダンジョンも終わった。
そして。
七王という新しい目標が現れた。
なら次は決まっている。
喰う。
全部だ。




