第62話 英雄を喰らう者
【保有DP:2,380】
【侵食率:5.8%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:3】
黒槍のヴァルグが倒れた後、砦にはしばらく静寂が流れていた。
フィリアは未だに信じられないという顔をしている。
無理もない。
王国最強クラス。
次代の英雄。
そんな存在が、たった一夜で消えたのだから。
だが俺が見ていたのは死体ではなかった。
魂炉だ。
そこには今まで見たことがない表示が浮かんでいる。
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【特級魂を確認】
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【ヴァルグ】
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【施設化候補】
・英雄訓練場
・黒槍闘技場
・戦術研究施設
・英雄継承の間
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俺は思わず笑った。
やはり違う。
今までの施設とは格が違う。
女剣士エレナですら有用だった。
なら英雄級はどうなる。
考えるまでもない。
「ご主人様」
リリスも表示を見て目を細める。
「これは凄いですね」
「ああ」
そして俺は迷わなかった。
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【英雄継承の間】
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【施設化を開始します】
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光が砦全体を包み込む。
ヴァルグの魂が吸い上げられ、ダンジョンへ転送される。
その瞬間だった。
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【新機能解放】
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【英雄因子】
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「ん?」
初めて見る表示だった。
詳細を開く。
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【英雄級個体から抽出される特殊因子】
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【眷属へ付与可能】
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全員が固まった。
俺も。
スイも。
リリスも。
フィリアでさえ言葉を失う。
「つまり」
俺は確認する。
「英雄の力を移植できる?」
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【可能】
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短い。
だが十分だった。
面白い。
実に面白い。
英雄を殺す。
施設化する。
その力を配下へ与える。
これ以上ダンジョンらしい能力もない。
そして。
ここで俺は考えを変えた。
王国を攻略する。
そう思っていた。
だが違う。
攻略では遅い。
「ご主人様?」
リリスが首を傾げる。
「王国を潰す」
その言葉にフィリアが固まった。
「え?」
「攻略じゃない」
俺は地図を開く。
王都。
主要都市。
軍事拠点。
全て表示される。
そして中心。
王都。
「王を殺す」
沈黙。
フィリアの顔色が変わる。
「待って!」
「何だ」
「普通は順番に落とすんだよ!?」
「面倒だろ」
俺は本気だった。
辺境を潰す。
領地を奪う。
都市を落とす。
そんなことをしていたら何十話も使う。
深層主がいる。
地下勢力もいる。
王国ごときに時間を使う理由はない。
「王を殺せば終わる」
フィリアが頭を抱えた。
「終わらない!」
「終わる」
俺は真顔だった。
そして。
そこで気付く。
今の俺には以前なかった戦力がある。
英雄施設。
英雄因子。
そして。
5000DPを使った強化の成果。
さらに。
王国軍はヴァルグが生きていると思っている。
つまり。
情報差がある。
ここで正面から戦う必要すらない。
王都へ潜り込む。
王を殺す。
帰る。
それだけだ。
その瞬間だった。
魂炉が再び反応する。
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【英雄因子】
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【付与可能対象】
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・スイ
・リリス
・ブラッドファング
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スイが目を輝かせる。
「強くなる?」
「ああ」
「やる!」
即答だった。
リリスも反対しない。
ブラッドファングも低く唸る。
なら決まりだ。
俺は迷わず選択した。
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【英雄因子付与】
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【対象:スイ】
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【成功】
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次の瞬間。
スイの身体から莫大な魔力が吹き上がった。
第二階層全体が震える。
空気が揺れる。
フィリアが息を呑む。
まだ終わらない。
王国はこれからだ。
そして王国は知らない。
自分たちが送り出した英雄候補が。
今、俺たちの餌になったことを。




