第61話 英雄狩り
【保有DP:2,380】
【侵食率:5.6%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:3】
崩れた砦の中央。
黒槍のヴァルグは一人で立っていた。
こちらは総力戦。
スイ。
リリス。
ブラッドファング。
シャドウメイジ。
ゴブリン戦士部隊。
コボルト部隊。
それでも圧倒されていた。
黒槍が振るわれる。
轟音。
スイの身体が吹き飛ぶ。
地面を何度も跳ねながら転がった。
「いたたた……」
立ち上がる。
だが傷は深い。
エルダースライムへ進化してから受けた最大のダメージだった。
続けてブラッドファングが襲い掛かる。
背後。
死角。
完璧な奇襲。
だがヴァルグは振り返らない。
槍の石突きだけで迎撃した。
衝撃。
ブラッドファングの身体が浮く。
再び吹き飛ばされる。
それでも死なない。
以前とは違う。
確実に強くなっている。
だが相手が悪かった。
「これが英雄級……」
フィリアの顔色が青い。
無理もない。
今までの敵とは別格だった。
そしてリリスの蜘蛛糸。
数百本。
視界を埋め尽くす銀糸。
普通なら逃げ場はない。
だがヴァルグは僅かに身体を捻っただけだった。
糸が空を切る。
当たらない。
いや。
当てさせない。
技術が異常だった。
「凄いな」
思わず感心する。
強い。
本当に強い。
だが。
戦いながら俺は違和感も感じていた。
息遣い。
動き。
筋肉の使い方。
少しずつだが重くなっている。
当然だった。
人間だからだ。
魔物ではない。
無限に戦える存在ではない。
そして。
再生もしない。
そこへ気付いた瞬間、勝ち筋が見えた。
「スイ」
「うん!」
「毒を入れろ」
スイが笑う。
すぐ理解したらしい。
正面から突撃する。
また吹き飛ばされる。
だが今度は違った。
身体の一部を切り離していた。
小さなスライム片。
それがヴァルグの腕へ付着する。
ほんの一瞬。
本当に僅かだった。
だが十分だった。
毒が入る。
ヴァルグの眉が動く。
初めてだった。
明確な変化。
「なるほど」
ヴァルグが呟く。
「そう来るか」
そして再び動こうとする。
その瞬間。
シャドウメイジが魔法を放った。
黒い霧。
幻惑。
一秒。
いや半秒。
それだけだった。
だが十分だった。
「今!」
リリスが叫ぶ。
蜘蛛糸が飛ぶ。
今度は外れない。
腕。
脚。
胴体。
数十本の糸が絡み付く。
完全拘束ではない。
だが動きは鈍る。
そこへ。
ブラッドファングが飛んだ。
今までで最速。
進化後最高速度。
ヴァルグも反応する。
槍を構える。
だが一瞬遅い。
毒。
幻惑。
拘束。
積み重ねた結果だった。
牙が肩へ食い込む。
血が飛ぶ。
そして。
スイが追撃した。
巨大化した拳が叩き込まれる。
轟音。
地面が陥没する。
ヴァルグが膝をつく。
初めて。
戦闘開始から初めてだった。
静寂。
誰も動かない。
そしてヴァルグはゆっくりと笑った。
「なるほど」
血を吐きながら。
それでも笑う。
視線が俺へ向く。
「魔王か」
次の瞬間。
ブラッドファングが喉元へ牙を突き立てた。
決着だった。
英雄候補。
黒槍のヴァルグ。
王国最強クラス。
その身体がゆっくりと崩れ落ちる。
フィリアが言葉を失う。
リリスも無言だった。
スイだけが嬉しそうに飛び跳ねている。
「勝った!」
その声と同時に。
システムが反応した。
⸻
【英雄候補を撃破】
⸻
【高品質魂を確認】
⸻
【施設化適性:極大】
⸻
【魂を保存しますか?】
⸻
俺は迷わない。
「保存」
光が舞う。
ヴァルグの魂が魂炉へ吸い込まれていく。
英雄候補ですら施設になる。
なら。
王国も。
英雄も。
いずれ全て俺の糧になる。




