第59話 大強化祭
【保有DP:5,080】
【侵食率:5.6%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:3】
黒狼の牙を吸収した翌日。
俺はダンジョンコアの前で考えていた。
正確には考え終わっていた。
使う。
徹底的にだ。
これまでは違った。
DPは貴重だった。
少しずつ貯めて。
慎重に使って。
何度も計算してきた。
だが今は違う。
三つのダンジョンを吸収した。
五千DPある。
そして何より。
次の敵は英雄候補だ。
中途半端な強化では意味がない。
「ご主人様?」
リリスが首を傾げる。
「今日は使うぞ」
「何をです?」
「全部だ」
フィリアが吹き出した。
「絶対そう言うと思った」
俺はコアを開く。
【保有DP:5,080】
そして最初の投資を実行した。
【上位訓練施設】
【DP-600】
【残DP:4,480】
第二階層全体が揺れる。
訓練場が拡張される。
重力訓練区画。
実戦模擬空間。
魔力強化室。
以前の施設とは比較にならなかった。
俺は即座にゴブリンたちを放り込む。
「訓練開始だ」
数時間後。
結果は予想以上だった。
【ゴブリン戦士へ成長】
×4
【ゴブリン斥候へ成長】
×2
コボルトジェネラルが驚いている。
「普通なら数年必要です」
「便利だな」
「便利で済ませる規模ではありません」
だが強くなるなら問題ない。
次だ。
【眷属召喚】
【必要DP:100】
俺は迷わず実行する。
光が集まる。
そして。
【粗悪魔石】
石だった。
フィリアが笑う。
スイも笑う。
俺は無言だった。
「もう一回」
【DP-100】
【残DP:4,380】
光が集まる。
【ゴブリン】
今回は運が悪いな。
さらに回す。
【粗悪魔石】
【洞窟ネズミ】
【ゴブリン】
【コボルト】
少しずつ戦力が増える。
派手ではない。
だが軍隊はこうやって作るものだ。
そして十回目。
魔法陣の輝きが変わった。
明らかに違う。
全員が息を呑む。
光が収束する。
現れたのは――
黒いローブを纏った小柄な魔物だった。
【レア個体】
【シャドウメイジ】
俺は笑った。
当たりだ。
魔法系。
今の軍に足りなかった戦力だった。
シャドウメイジは静かに頭を下げる。
「主」
知能も高いらしい。
良い。
非常に良い。
そして俺はさらにDPを使う。
【原初眷属強化】
【対象:スイ】
【DP-500】
【残DP:3,380】
スイの身体から魔力が噴き上がる。
「あるじ!?」
「黙って受け取れ」
強化は成功した。
エルダースライムになったばかりのスイが、さらに一段階強くなる。
魔力総量が増加する。
身体強度も上昇する。
本人は嬉しそうだった。
次。
【命名眷属強化】
【対象:リリス】
【DP-500】
【残DP:2,880】
リリスの蜘蛛糸が銀色に輝く。
魔力伝導率向上。
支配能力向上。
眷属統率能力向上。
完全に軍団長向けだ。
「これは……」
リリス自身も驚いていた。
さらに。
【上位魔獣強化】
【対象:ブラッドファング】
【DP-500】
【残DP:2,380】
赤黒い魔力が噴き出す。
ブラッドファングが低く唸る。
牙が伸びる。
筋肉が膨張する。
まだ進化ではない。
だが戦闘力は確実に上昇した。
ここまで来て、ようやく俺は満足する。
ダンジョン全体が強くなった。
軍が強くなった。
主力も強くなった。
そして。
まだ二千以上残っている。
以前の俺なら考えられない状況だった。
その時だった。
シャドウバットが戻ってくる。
慌てている。
「どうした」
映像が流れ込む。
街。
領主の城。
そして中央に立つ一人の男。
長い黒髪。
黒槍。
漆黒の鎧。
周囲の兵士たちが緊張している。
ただ立っているだけなのに。
フィリアが青ざめた。
「来た……」
俺も理解した。
英雄候補。
黒槍のヴァルグ。
王国最強クラス。
そして。
【高適性個体を確認】
【施設化適性:極大】
システムまで歓迎していた。
俺は静かに笑う。
準備は終わった。
戦力も整った。
なら次は決まっている。
英雄狩りだ。




