第56話 黒狼の牙
【保有DP:2,663】
【侵食率:4.8%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:2】
山脈地帯へ到着した時には、戦いは既に始まっていた。
巨大な岩山の中腹。
黒狼の牙と呼ばれるダンジョンの入口付近で、騎士たちと狼型魔物が激突している。
地面には死体が転がり、血の臭いが漂っていた。
「思ったより大規模ですね」
リリスが周囲を見渡す。
俺も同意だった。
フィリアのダンジョン。
コボルトダンジョン。
どちらよりも規模が大きい。
狼型魔物だけで百体以上。
さらに奥から次々と増援が出てくる。
領主軍も三十人以上いるが、徐々に押し込まれていた。
「まずいな……」
フィリアが呟く。
「黒狼の牙は有名だったけど、こんなに強かったんだ……」
その時だった。
洞窟の奥から咆哮が響く。
空気が震えた。
狼たちが一斉に道を開ける。
そして姿を現した。
巨大な黒狼。
全長五メートルを超える巨体。
漆黒の毛並み。
赤い瞳。
全身から溢れる圧倒的な魔力。
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【解析成功】
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【ブラックウルフロード】
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強い。
間違いなく今までで最強クラスだ。
ブラックウルフロードが咆哮する。
その瞬間、狼たちの統率がさらに上がった。
騎士たちが押し返される。
前衛が崩れる。
魔術師が噛み殺される。
戦況は完全に黒狼側へ傾いた。
だが俺が注目したのは別だった。
隣にいたブラッドウルフだ。
身体が震えている。
恐怖ではない。
興奮だった。
同族の王。
格上の存在。
本能が反応している。
⸻
【進化条件を確認】
⸻
【上位個体との対峙】
【戦闘経験蓄積】
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俺は思わず目を細めた。
なるほど。
こいつも近い。
だが今はまだだ。
「行くぞ」
俺は命令を下した。
次の瞬間。
ストーンゴーレムが戦場へ突撃した。
轟音。
巨大な拳が狼たちをまとめて吹き飛ばす。
騎士たちが呆然とこちらを見る。
さらにブラッドウルフが飛び出した。
黒狼へ噛み付く。
狼同士の激突し、牙と牙がぶつかる。
その隙にスイが動いた。液状化した身体がブラックウルフロードへ絡み付く。
「邪魔だ!」
ロードが吠える。
その声だけで普通の狼たちが震えた。
だがスイは離れない。
毒を流し込む。
さらにリリスの蜘蛛糸が飛ぶ。
脚を拘束する。
動きを封じる。
そこへストーンゴーレムの拳。
轟音。
ブラックウルフロードが初めて膝をついた。
騎士たちが驚愕する。
当然だ。
さっきまで圧倒していた怪物が押され始めているのだから。
だが終わらない。
ブラックウルフロードは強かった。
ブラッドウルフを吹き飛ばす。
ストーンゴーレムを弾く。
スイを引き剥がす。
それでも、一対一ではない。俺たちは軍勢だった。
そして最後。
ブラッドウルフが再び飛んだ。
黒狼の王へ真正面から噛み付く。
喉元。
致命傷。
ロードが咆哮する。
だが、その瞬間。
スイの毒が全身へ回った。
動きが止まる。
そこへストーンゴーレムの拳が叩き込まれた。
岩が砕ける音。
頭部が地面へ沈む。
ブラックウルフロードは二度と立ち上がらなかった。
静寂が訪れる。
王が死んだ。
それだけで戦場は終わる。
残った狼たちは散り散りに逃げ出した。
そして騎士たちの視線がこちらへ向く。
恐怖。
警戒。
困惑。
その全てが混じっていた。
当然だろう。
自分たちが勝てなかった怪物を、俺たちは倒したのだから。
だが俺が見るのは彼らではない。
洞窟の奥だ。
そこにある。次の力が。次の獲物が。
ブラックウルフロードの死体を見ながら、俺は静かに笑った。
このダンジョンも俺のものになる。




