第55話 喰らうほど強く
【保有DP:2,663】
【侵食率:4.8%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:2】
コボルトダンジョンを吸収してから三日。
俺はダンジョンの変化を確認していた。
まず分かったのは、吸収によって強化されるのはDPだけではないということだ。
コアそのものが成長している。
魔力総量。
感知範囲。
配下との繋がり。
全てが強化されていた。
そして当然ながら、その恩恵は配下にも及ぶ。
さらに、この三日でダンジョンの防衛も見直した。
吸収したコボルトダンジョンから得た知識を利用し、侵入経路には新たな罠を増設。
通路の一部は迷路状に組み替え、シャドウバットによる監視網も拡張した。
万が一侵入者が現れても、まずは罠と監視で削り、奥へ進むほど配下が集中的に迎撃できる構造になっている。
俺が外へ出ている間でも簡単には落とされない。
ダンジョンそのものの守りは、以前より遥かに堅くなっていた。
最初に異変を見せたのはスイだった。
「あるじ」
訓練場でゴブリンたちを相手にしていたスイが首を傾げる。
「なんか、おなかいっぱい」
「意味が分からん」
「でもいっぱい」
そう言った瞬間だった。
スイの身体から魔力が溢れ出す。
訓練場の空気が震えた。
俺は即座に状態を確認する。
【原初の眷属:スイ】
【進化条件達成】
【コア成長】
【長期戦闘経験】
【累積捕食量】
なるほど。
今回の吸収が最後の条件だったらしい。
スイは最初から戦い続けてきた。
冒険者。
討伐隊。
人面蜘蛛。
コボルト軍。
誰よりも経験を積んでいる。
さらにダンジョン吸収によるコア強化。
限界が一段階外れたのだろう。
光がスイを包み込む。
数分後。
【進化完了】
【エルダースライム】
以前と見た目は大きく変わらない。
だが違う。
魔力の密度が別物だった。
スイ自身も驚いているらしい。
軽く腕を振っただけで石壁に亀裂が走った。
「つよい!」
本人は大喜びだった。
リリスも苦笑している。
「完全に化け物ですね」
「お前も十分化け物だろ」
「ありがとうございます」
褒めてない。
だがリリスは満足そうだった。
その時、新しい通知が表示される。
【Bランク進化条件】
【吸収ダンジョン数:5】
【現在:2】
あと三つ。
思ったより近い。
フィリアも画面を覗き込む。
「普通のダンジョンなら一生掛かっても無理だと思う」
「そうか」
「もう二つ吸収してる時点で異常だからね」
俺は少し笑った。
異常で結構。
強くなれるなら問題ない。
その時だった。
シャドウバットから映像が届く。
山脈地帯。
以前見つけた黒狼の牙。
その周辺だ。
だが今回は別のものが映っていた。
人間。
しかも冒険者ではない。
重装備の騎士たちだった。
数は三十以上。
中央には豪華な馬車。
旗印も見える。
「貴族か?」
フィリアの顔色が変わる。
「まずい」
「またか」
「本当にまずい」
珍しく真剣だった。
「地方領主の旗だよ」
俺は映像を見る。
騎士。
兵士。
護衛。
かなりの規模だ。
そして行き先も分かる。
黒狼の牙。
あのダンジョンだ。
どうやら向こうも同じ獲物を狙っているらしい。
俺は少し考えた。
都合が良い。
黒狼の牙。
領主軍。
両方まとめて利用できる。
先に戦うのはどちらか。
潰し合うのは誰か。
考えるだけで楽しくなってくる。
「出発する」
俺は即座に決断した。
リリスがうなずく。
スイは嬉しそうに飛び跳ねる。
フィリアだけが頭を抱えていた。
「どうして毎回一番危険な方へ行くの……」
「効率が良いからだ」
強い相手は価値がある。
価値があるなら奪う。
それだけだった。
そして俺たちは山脈地帯へ向かう。
次の獲物。
黒狼の牙。
そして、その先にいる領主軍を喰らうために。




