第54話 王を喰らう
【保有DP:820】
【侵食率:4.0%】
【ダンジョンランク:C】
【配下モンスター】
・スイ(ヒューマノイドスライム)×1
・リリス(原初のアラクネ)×1
・シャドウバット×1
・ブラッドウルフ×1
・ストーンゴーレム×1
・コボルトリーダー×1
・ゴブリン×11
・ポイズンスライム×3
・洞窟ネズミ×6
・フィリア×1
侵攻は夜明け前に始まった。
シャドウバットの索敵によって敵配置は把握済みだ。
コボルト軍は百を超える。
だがこちらも以前とは違う。
ブラッドウルフ。
ストーンゴーレム。
リリス。
そしてスイ。
フィリアのダンジョンを吸収したことで得た戦力は確実に増えていた。
「全軍前進」
俺の命令と共に戦闘が始まる。
ブラッドウルフが先陣を切った。
赤黒い巨体が突撃し、入口を守っていたコボルトたちへ飛び掛かる。
一撃で喉笛を食い破る。
二体目を押し倒す。
三体目へ牙を突き立てる。
圧倒的だった。
だが敵も軍隊だ。
すぐに包囲網を形成する。
槍兵が前へ出る。
後方から弓が飛ぶ。
統率されている。
普通の魔物集団ではない。
しかし。
こちらにも指揮官がいた。
「左翼前進!」
「前列維持!」
「包囲を崩せ!」
コボルトリーダーが声を上げる。
ゴブリンたちが動く。
以前なら考えられないほど統率された動きだった。
訓練場で積み上げた経験。
毎日の指揮訓練。
実戦経験。
それらが少しずつ積み重なっていた。
ゴブリンたちは既に単なる雑兵ではない。
小規模ながら軍隊になり始めていた。
戦況は徐々にこちらへ傾く。
ストーンゴーレムの拳が前衛を粉砕する。
リリスの蜘蛛糸が敵後衛を拘束する。
スイの毒が戦線を崩壊させる。
コボルトたちは強い。
だがこちらはもっと強かった。
そして戦闘開始から一時間後。
ついに王が現れる。
巨大な体躯。
鋼の鎧。
巨大な大剣。
コボルトキング。
その姿を見た瞬間、敵軍の士気が一気に上昇した。
王がいる。
だから戦える。
そんな空気だった。
一方。
こちらのコボルトリーダーは王を見上げていた。
蒼い瞳が揺れる。
その姿は憧れにも見えた。
到達点。
理想形。
同族の頂点。
そしてその瞬間だった。
⸻
【進化条件を確認】
⸻
【軍団指揮】
【継続訓練】
【実戦経験】
【王への挑戦】
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【条件達成】
⸻
俺は思わず目を見開いた。
偶然ではない。
積み重ねの結果だ。
訓練場で学び。
ゴブリンたちを率い。
戦い続けた結果。
最後の一欠片だった王との対峙が条件を満たしたのだ。
光が溢れる。
コボルトリーダーの身体が膨れ上がる。
筋肉が強化される。
魔力が増大する。
そして数秒後。
⸻
【コボルトジェネラル】
⸻
新たな個体が誕生した。
「全軍突撃!!」
進化したジェネラルが咆哮する。
戦場が動く。
ゴブリンたちが動く。
ブラッドウルフが動く。
全てが一つの軍勢になった。
その勢いはコボルト軍を飲み込んだ。
王国が崩れる。
戦線が崩壊する。
そして最後。
コボルトキングが孤立した。
「スイ」
「うん!」
スイが飛ぶ。
リリスの蜘蛛糸が王の動きを封じる。
ストーンゴーレムの拳が叩き込まれる。
ブラッドウルフが牙を突き立てる。
そして毒が回る。
王が膝をついた。
なおも立ち上がろうとする。
だが遅い。
スイが首へ絡み付き、そのまま締め上げた。
鈍い音が響く。
コボルトキングの首が折れた。
王が死んだ。
それだけで全てが終わる。
残ったコボルトたちは武器を捨てた。
逃げ出す者もいる。
だがもう抵抗はない。
そして俺はそのまま最深部へ進んだ。
奥には青く輝くコアがあった。
その前には一人の男がいる。
獣人だった。
コボルトキングより弱い。
だが間違いない。
ダンジョンマスターだ。
「待て!」
男が叫ぶ。
「話し合いたい!」
「そうか」
俺は頷いた。
「だが必要ない」
スイが動く。
一瞬だった。
男の喉へ毒が流し込まれる。
悲鳴。
絶叫。
そして沈黙。
終わりだった。
俺はそのままコアへ手を伸ばす。
⸻
【ダンジョンコアを確認】
【吸収可能】
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迷わず実行する。
青い光が砕ける。
膨大な魔力が流れ込む。
ダンジョンそのものが俺へ吸収されていく。
そして通知が現れた。
⸻
【ダンジョン吸収完了】
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【DP獲得:1,843】
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【保有DP:2,663】
⸻
思わず笑う。
大きい。
フィリアのダンジョンとは比較にならない。
これだけあれば世界が変わる。
そして次の通知が表示された。
⸻
【ダンジョン吸収によりコア容量が増加しました】
⸻
【配下進化上限が上昇しました】
⸻
その瞬間。
スイとリリスから溢れる魔力が僅かに強くなる。
まだ進化ではない。
だが確実に近付いている。
俺自身も分かった。
強くなっている。
ダンジョンを喰らう度に。
俺も。
配下も。
成長していく。
そして俺は新たなDPを見つめながら笑う。
次はどこだ。
次は何を奪う。
その答えを考える時間が、たまらなく楽しかった。




