第53話 岩窟の主
【保有DP:820】
【侵食率:4.0%】
【ダンジョンランク:C】
【配下モンスター】
・スイ(ヒューマノイドスライム)×1
・リリス(原初のアラクネ)×1
・シャドウバット×1
・ブラッドウルフ×1
・ストーンゴーレム×1
・コボルトリーダー×1
・ゴブリン×11
・ポイズンスライム×3
・洞窟ネズミ×6
・フィリア×1
三日後。
俺たちは新たなダンジョンの入口へ到着していた。
岩山の中腹に開いた巨大な洞穴。
近くまで来ると、その異様さはさらによく分かった。
周囲には魔物の足跡が大量に残っている。
しかも種類が多い。
狼型。
蜥蜴型。
人型。
様々な魔物が出入りしているらしい。
「活発ですね」
リリスが周囲を観察しながら呟く。
「活発というより統率されてるな」
俺はそう判断した。
魔物同士の争った痕跡が少ない。
縄張り争いも見当たらない。
普通の魔物の巣とは違う。
何者かが管理しているように見えた。
その時、シャドウバットから映像が届く。
洞窟内部。
広い空間。
そして大量のコボルト。
「コボルトか」
俺は思わず笑う。
少し運がいい。
こちらにもコボルトリーダーがいる。
相手を知るには都合が良かった。
だが次の映像で笑みが消える。
コボルトの数が異常だった。
十体や二十体ではない。
軽く百体を超えている。
しかも武器を持っていた。
「多いな……」
フィリアが顔を引きつらせる。
「普通じゃないよ、これ。完全に軍隊じゃん……」
俺も同意だった。
前回のダンジョンとは規模が違う。
フィリアのダンジョンが村なら、こちらは小規模な軍隊だった。
しかし撤退する理由にはならない。
むしろ面白い。
「ご主人様」
リリスが口を開く。
「どうなさいますか?」
「まずは見る」
俺は慎重に進めることにした。
強くなったとはいえ油断は禁物だ。
特にダンジョン戦は情報が重要になる。
シャドウバットをさらに奥へ進ませる。
すると新たな空間が見えた。
訓練場。
武器庫。
食料庫。
そして――
玉座。
そこに座っていた存在を見て、俺は目を細めた。
巨大なコボルトだった。
普通のコボルトの倍以上。
全身を鋼の鎧で覆い、大剣を背負っている。
周囲のコボルトたちが明らかに敬意を向けていた。
【解析成功】
【コボルトキング】
思わず笑う。
分かりやすい。
そして都合が良い。
つまりこのダンジョンはコボルトの王国なのだ。
「おうさまだ!」
スイが目を輝かせて声を弾ませる。
「ああ」
「じゃあ、たおしたらおしまい?」
無邪気な期待に満ちた声だった。
「ああ。その可能性は高い」
スイは満面の笑みを浮かべた。
「やった!」
一方でフィリアは頭を抱えている。
「やったじゃないよ……」
深いため息を吐いてから、俺を見る。
「普通は避ける相手だからね!? 王だよ!? しかもあの数を従えてるんだよ!?」
「そうか?」
「そうだよ!」
フィリアは半ば悲鳴のように叫んだ。
「なんでそんな平然としてるの!? 私、見てるだけで胃が痛くなってきたんだけど!」
だが俺にはそう見えない。
むしろ価値の塊だった。
これだけの軍勢。
これだけの規模。
そして王までいる。
吸収できれば得られるDPも相当なはずだ。
その時、コボルトキングが立ち上がった。
まるで何かを察知したように。
深い蒼色の瞳が入口方向を見る。
こちらを見ているわけではない。
だが勘が鋭いらしい。
王たる所以か。
「面白い」
フィリアのダンジョンとは違う。
今回は真正面からぶつかることになる。
軍勢と軍勢。
ダンジョンとダンジョン。
そして王と王。
ようやく侵略らしくなってきた。
俺は配下たちへ命令を飛ばす。
「作戦を立てる」
百を超えるコボルト軍。
それをどう潰すか。
考えるだけで楽しかった。




