第52話 次の獲物
【保有DP:820】
【侵食率:4.0%】
【ダンジョンランク:C】
【配下モンスター】
・スイ(ヒューマノイドスライム)×1
・リリス(原初のアラクネ)×1
・シャドウバット×1
・ブラッドウルフ×1
・ストーンゴーレム×1
・コボルトリーダー×1
・ゴブリン×11
・ポイズンスライム×3
・洞窟ネズミ×6
・フィリア×1
シャドウバットが発見した新たなダンジョン反応は、予想以上に近かった。
俺はさっそく視界共有を行う。
森の上空。
木々の隙間。
その先に見えたのは岩山だった。
ただの岩山ではない。
山肌には大きな洞穴が口を開けている。
周囲には魔物の姿も見える。
どう見ても普通ではない。
「ダンジョンだな」
俺が呟くと、フィリアが小さくうなずいた。
「たぶん中規模クラス」
「分かるのか?」
「魔力の流れでなんとなく……」
さすがに元ダンジョンマスターだ。
俺には見えないものが見えるらしい。
そしてフィリアは続けた。
「でも危険だと思う」
「理由は?」
「反応が強い」
短い説明だった。
だが十分だ。
つまり弱くない。
なら奪う価値がある。
俺はすぐに方針を決めた。
「攻める」
フィリアが頭を抱えた。
「やっぱりそうなるんだ……」
当然だ。
発見した。
価値がある。
なら奪う。
何もおかしくない。
俺は戦力を確認する。
前回とは違う。
今の俺にはブラッドウルフもいる。
ストーンゴーレムもいる。
リリスも以前より強くなった。
そして何よりスイがいる。
その時だった。
リリスが静かに口を開く。
「ご主人様」
「なんだ」
「その前に試しませんか?」
「試す?」
「訓練です」
俺は少し考える。
確かにその通りだった。
せっかく増えた戦力だ。
いきなり実戦投入するより能力を把握しておきたい。
特にブラッドウルフとストーンゴーレム。
どちらも初めての戦力だ。
「よし」
俺は訓練場へ意識を向ける。
第二階層。
女剣士エレナから生まれた剣術訓練場。
最近はゴブリンたちが利用している場所だ。
そこへ新戦力を集める。
まず動いたのはブラッドウルフだった。
赤黒い身体が地面を蹴る。
速い。
ゴブリンなど比較にならない。
一瞬で距離を詰め、訓練用人形の首を噛み砕いた。
木片が飛び散る。
フィリアが目を丸くした。
「強い……」
俺も同意見だった。
さらにストーンゴーレム。
こちらは逆だ。
遅い。
だが巨大だった。
拳を振るうだけで訓練用人形が粉砕される。
防御力も圧倒的だろう。
前衛としては申し分ない。
そしてコボルトリーダー。
こいつは少し違った。
自分では前に出ない。
代わりにゴブリンたちへ指示を出し始めた。
驚くほど自然に。
隊列。
連携。
包囲。
今まで好き勝手に動いていたゴブリンたちが、明らかに統率された動きを見せ始める。
「ほう」
思わず感心する。
これは当たりだった。
単純な戦闘力ではない。
軍を強くする能力だ。
そして数時間後。
訓練が終わる頃には結果が出ていた。
ブラッドウルフ。
前衛。
ストーンゴーレム。
盾役。
コボルトリーダー。
指揮官。
役割が綺麗に分かれている。
実に使いやすい。
俺は満足しながら新ダンジョンの映像を見る。
岩山の洞窟。
そこには相変わらず魔物が出入りしていた。
だが今の俺には分かる。
あれは獲物だ。
フィリアのダンジョンより強いだろう。
だからこそ価値がある。
だからこそ奪う意味がある。
「準備するぞ」
俺がそう言うと、スイが嬉しそうに立ち上がった。
「またたたかう?」
「ああ」
「かつ?」
「勝つ」
スイが笑う。
リリスも静かに微笑む。
フィリアだけが深いため息を吐いていた。
そして三日後。
軍勢を整えた俺たちは、二つ目のダンジョン侵略へ動き出した。




